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会頭挨拶

第126回日本外科学会定期学術集会 会頭
北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室II
平 野  聡

共に創りあげる新しい外科

 この度、第126回日本外科学会定期学術集会を2026年4月23日(木)~25日(土)に、札幌市で開催させていただくこととなりました。実に北海道では23年ぶりとなる本会の開催は、北海道の全会員にとりまして大変光栄なことであり、オール北海道で全国の皆様を当地で歓待させていただきたく存じます。このような機会をお与えいただきました本学会役員の方々をはじめ、すべての会員、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。また、私どもの教室にとりましても、第49回(柳 壮一 教授)、第79回(杉江三郎 教授)、第90回(田邊達三 教授)、103回(加藤紘之 教授)に続き、本会の主催は5回目となり、教室員・同門一同、歴史と伝統の重みを感じつつ、多くの会員の皆様が春麗らかな北海道を堪能していただけるよう、趣向を凝らして準備にあたって参ります。
 さて、日本外科学会における定期学術集会は、基盤学会としての特殊性から、外科全体に関わる諸問題に対して多くの英知を結集し、適切な方向性を未来志向で導き出す、重要なmission を有すると認識しております。昨今、外科を取り巻く環境は厳しさを増し、解決すべき問題が山積する中、これまでの学術集会でも様々な問題提起がなされてきました。とりわけ、第124回(名古屋大学 小寺会頭)では、困難な環境にある外科の現状を踏まえ、外科のsustainableなあり方について議論され、また、第125回(東北大学 海野会頭)では、新たな外科医の確保に焦点を当てた魅力的な取り組みが行われ、学会の土台作りをしていただきました。さて、続いての第126回学術集会では、これまで蓄積されてきた成果をもとに、満を持してスタートラインに立ち、これからの外科学や外科診療など外科にかかわる医療全般を新たに創り上げる作業に着手すべき時期であるとの判断から、テーマは「新たなる外科医療の共創」とさせていただきました。
 そこで重要と考えますのは、本会を構成する6領域の全てがこの議論に参加し、意識を統一することであります。実際、最近の本学術集会への参加状況をみますと、領域ごとにかなりの温度差が生じており、基盤学会として今後の本学会の役割や、学術集会のあり方などを同じテーブルについて共に考え、共通の理念や目標をもつことが、新しい外科医療を語るための必須の条件と考え、「共創」の二文字をテーマに含めることといたしました。
 もちろん、定期学術集会には最新の学術や臨床の成果を持ち寄り、共有・評価し、さらなる発展を模索するという重要な機能がありますが、各専門領域でも学術集会が盛んに行われており、それらとの差別化も重要な課題であります。そのための方策として、第126回では、セッションの形態として演題数をある程度制限してdiscussion重視とすることで、普段の専門学会では語り尽くせていない点を徹底的に議論していただきたいと思います。さらに、教室で重点的に取り組んで参りました「外科教育」など、領域横断的なテーマについて情報共有するセッションを多く設け、様々な領域からの参加者が自領域に持ち帰り、新たな議論を展開していただくことを念願いたします。このように、他の専門学会では味わえない、真の実りある学術集会となるよう、プログラムを工夫させていただく所存であります。
 北海道には、その歴史に北海道大学の前身である札幌農学校の校長として開拓者精神やパイオニア精神を説いたウイリアム・S・クラーク博士が教鞭をとり、さらに、その精神を受け継ぎ体現した新渡戸稲造 先生、その精神性を社会に発信した内村鑑三 先生が卒業生として名を連ねます。この歴史の系譜から、北海道は「困難な中で新しいものを創り出す」ことに最適な土地の一つであると感じております。是非、できる限り多くの先生方が札幌に結集し、新たな外科の歴史の「共創」の立役者となっていただきますことを御願い申し上げます。

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