特別企画
日本社会の急速な高齢化により、身体的・認知的な脆弱性を抱える高齢者への手術機会が増加している。高齢患者に対する安全な手術の遂行には、術前評価、周術期管理、手術手技、術後ケアに至るまで多職種による包括的な対応が不可欠である。本セッションでは、手術対象となる高齢者の選択や、手術に伴うリスクを最小限に抑えるための取り組みや工夫などを共有することを目的とし、幅広い分野からの演題を募集する。現場での患者選択の実践、チーム医療の工夫、エビデンスに基づく対策など、多様な視点からの活発なディスカッションを期待する。
外科専門医制度は、質の高い外科医療を支える重要な基盤である。しかし、その制度の在り方については、各サブスペシャリティの特性や実臨床からさまざまな課題を内包している。本セッションでは、各サブスペシャリティの立場から、現行制度への評価や課題を提起していただき、今後のあるべき姿について活発な議論を期待する。専門医の育成、更新制度、診療との両立、地域偏在の是正など、現状からみた今後の具体的な提案を含んだ演題を歓迎する。本セッションを通じて外科専門医制度の発展的改良に資する場としたい。
外科診療は高度な技術と洗練されたチーム医療を要する一方で、その対価としての診療報酬が現場の実態に見合っているのか、議論の的である。本セッションでは、外科診療に対する現在の診療報酬制度の妥当性について、実臨床、経済的視点、制度設計の観点からの多様な意見・提言を広く募集する。診療報酬の現状と課題、外科医の働き方への影響、新たな診療報酬体系の提案など、臨床データなどに基づいた具体的な演題を歓迎する。外科医療の持続可能性を見据えた建設的なディスカッションを期待する。
「働き方改革」や医療現場における人材不足を背景に、医師からメディカルスタッフへのタスクシフトが進められている。外科領域においても、診療補助、術後管理、書類作成業務などの分担が進行中であるが、実際の導入状況やその効果、安全性、課題は施設ごとに大きく異なる。本セッションでは、タスクシフトの現状を多角的に把握し、今後の方向性を探ることを目的に、各施設での取り組みや工夫、成功例やシフトに伴う課題などを共有する演題を広く募集する。実臨床での経験やデータに基づいた実践的な演題を歓迎する。
外科技術の継承と若手育成は、外科医療の質と将来を左右する重要な課題である。限られた時間や症例の中で、いかに効果的かつ安全に手術指導を行うかは、指導医にとって大きな挑戦でもある。本セッションでは、経験年数や施設規模を問わず、各領域の手術指導における工夫や課題、教育効果を高める具体的な取り組みなどを共有し、「理想の手術指導法」とは何かを探る機会とすることを期待する。教育的観点からの工夫、評価方法など、多様な演題を歓迎する。
男女共に働くことが当たり前となった現代において、外科という多忙かつ高負荷な分野における「equity(公平性)」の実現は大きな課題である。男女を問わずライフステージに応じた柔軟な働き方の確保、キャリア形成の支援、無意識なバイアスの是正など、多方面からの取り組みが求められている。本セッションでは、性別にかかわらず誰もが能力を発揮できる外科診療の在り方について、現状の課題や実践例、制度的提言などをテーマに広く演題を募集する。個人・組織それぞれの視点からの率直な演題を歓迎する。
126回企画
定期学術集会は、知識の共有や人材育成、学術の発展に寄与する重要な場であるが、その目的や運営方法は時代の変遷とともに見直しが求められている。特に各サブスペシャリティにおいては、専門性や対象、参加者のニーズが多様化し、それぞれに適した学術集会のあり方が模索されている。本セッションでは、各専門領域の立場から見た定期学術集会の役割、課題、今後の方向性についての意見や提言、実際の取り組みを広く募集する。従来の形式にとらわれない新たな視点からの演題を歓迎する。
少子高齢化や医師偏在、医療資源の制約などにより、地域における外科医療は大きな変革期を迎えている。また、地域の外科医療の今後のあり方は地域医療そのものにも大きな影響を与える可能性が高い。現状において、各地域では独自の工夫や連携体制により、持続可能な外科診療の実現に向けた取り組みが進められている。本セッションでは、地域の外科医療が直面する現状を共有するとともに、今後の方向性について多様な視点からディスカッションすることを目的とする。地域医療の担い手による践例や課題、政策提言、新たなモデル構築への挑戦など、幅広い演題の応募を期待する。
ロボット支援下手術は、技術の進歩とともに多くの外科領域で導入が進み、術者の操作性向上や低侵襲性の面で高い評価を得ている。一方で、導入コストや人材育成、施設間格差といった課題も依然として存在する。本セッションでは、ロボット支援手術の現状と課題を整理し、今後どこまで普及しうるのか、その可能性と限界、これまでの内視鏡外科との棲み分けの可能性などについて多角的に検討したい。各施設での導入経験、診療成績、教育体制、コスト面の工夫など、実践的な知見を基にした幅広い演題の応募を期待する。
近年、手術支援技術としてのナビゲーションシステム、AI(人工知能)、およびXR(Extended Reality/Cross Reality)の活用が急速に進んでいる。これらの技術は術前計画から術中支援、術後評価に至るまで、学習効果や外科診療の質と安全性を飛躍的に高める可能性を秘めたデバイスである。本セッションでは、これら先端技術の臨床応用例や今後の展望などについて広く演題を募集する。現場での実践や研究成果、教育・トレーニングへの活用例など、多様な視点からの演題を歓迎する。
情報リテラシーが叫ばれる時代ではあるが、医学生には外科医について、ましてや外科の各領域について十分な情報が伝わっていない可能性がある。一方で価値観やライフスタイルの多様化に伴い、学生が想い描く「理想の未来」は従来と大きく異なるものとなっている。本セッションでは、全サブスペ領域から次世代を担う若手外科医に登壇いただき、自らが考えるキャリア像、働き方、教育、専門性、ライフワークバランスなどについて率直に語り、学生との対話を通じて外科全体の未来像を共に模索する機会としたい。学生に向け、外科各領域の魅力を熱量をもって発信していただける若手外科医の応募を歓迎する。
上部消化管
ロボット支援食道切除が保険収載されて5年以上が経過し、本邦全体の導入時期は終わり、次の段階に入りつつある。本術式の課題として、従来の胸腔鏡手術に対して手術支援ロボットを使用することによる保険点数加算の獲得が挙げられる。そのためには、反回神経麻痺をはじめとする周術期合併症の軽減や予後の改善といった短期・長期成績の向上を科学的に示す必要がある。一方で、本手術の普及と並行して、標準術前化学療法レジメンの変更や免疫チェックポイント阻害剤の導入が進み、周術期治療全体が進歩している。そのため、従来の胸腔鏡手術成績との単純な予後比較は難しくなってきている。本シンポジウムでは、これらの状況を踏まえ、各施設のデータに基づくロボット支援食道切除術の現状と課題について発表していただきたい。
厳しい術者基準や施設基準を課すことで、ロボット胃癌手術が安全に全国に普及してきた。導入に先行して行われた臨床試験では短期合併症率の軽減が報告され、近年ではConversion手術等の難度の高い術式における同手術の有用性も報告されている。また、長期成績おいて従来の腹腔鏡手術に比較したロボット手術の有意性に関する報告も認められる。しかしながら、術後合併症の軽減については、大規模リアルワールドデータでは未だ確認されていないのが現状である。本シンポジウムでは、各施設でのロボット胃癌手術の長期成績について発表していただき、今後のロボット胃癌手術の有用性を見据えたエビデンスを明らかにしていただきたい。
近年の化学療法の進歩により、ステージ IV もしくは切除不能と診断された胃癌でも、化学療法後に根治切除を目指して行われる Conversion 手術によって長期生存が可能となる症例が見られるようになった。しかし、依然として予後は不良である。本パネルディスカッションでは、各施設における胃癌に対するConversion 手術の成績について発表していただき、その課題について議論していただきたい。
食道亜全摘術後の再建術は縫合不全の発生率が比較的高く、これまでに多くの工夫や改良がなされてきた。また、再建臓器には胃管が用いられることが多いが、胃が使用できない場合には小腸や大腸が用いられており、施設ごとに工夫がなされているのが現状である。再建臓器、再建経路、吻合法など様々な観点から、未だゴールデンスタンダードな再建法は確立されておらず、多くの課題が残されている。再建方法による合併症率の違いのみならず、術後の逆流症状、食事摂取量、栄養状態、体重変化などのQOLに関する治療成績を提示いただき、最適な消化管再建法について議論していただきたい。
現在、食道胃接合部癌におけるリンパ節郭清範囲の標準化は確立されたものの、下部食道切除後の縦隔内吻合では、依然として高い縫合不全率が課題となっている。縦隔内における再建術は、限られた術野での吻合操作が技術的に困難であり、より確実で安全な手術手技の確立が急務である。本パネルディスカッションでは、各施設における縦隔内再建手技の実際とその治療成績を共有いただき、最適な再建法の確立に向けて議論していただきたい。
胃癌や食道癌といった上部消化管手術において、高齢患者や重篤な併存疾患を有する患者の手術機会は増加している。そのようなHigh risk症例に対して、実臨床では手術適応の制限や切除範囲・リンパ節郭清の手控え、センチネルリンパ節郭清や緩和的な腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)など、慎重なアプローチが求められる場合が少なくない。今後さらに増加が予想されるHigh risk症例に対する上部消化管手術の手術適応、術式、周術期管理、治療成績などについて、各施設の現状を報告いただき、High risk症例に対する治療戦略の最適解を導くための議論を行っていただきたい。
リンパ節転移の無い上皮性十二指腸腫瘍(腺腫・粘膜内癌)は局所切除の適応となるが、未だ確立された治療法はない。従来の内視鏡的粘膜切除と比べ、高い治癒切除率を利点とする内視鏡的粘膜下層剥離術は技術的に難易度が高く、術中・遅発性穿孔や後出血のリスクが懸念される。一方で、最近の腹腔鏡手術の進歩を鑑みると、早期病変に対する開腹手術での局所切除はいささか過大侵襲である感が否めない。そこで、胃粘膜下腫瘍に対する標準治療として確立されつつある腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を十二指腸腫瘍に応用させたDLECSが新たな治療法として開発され、保険収載された。DLECSの開発初期は合併症が少なくなかったが、近年、様々な工夫によりDLECSの安全性は高まっている。本セッションでは、DLECSにおける工夫について議論していただきたい。
本邦では食道胃接合部腺癌の割合が増加しているものの、集学的治療に関するエビデンスは乏しい。現在、JCOGにおいてDOSまたはFLOTを用いた術前化学療法の上乗せ効果を検証するランダム化比較試験が進行中であるが、現時点では各施設がそれぞれの方法で術前・術後補助療法を行っているのが現状である。本セッションでは、各施設における接合部腺癌に対する集学的治療の適応、その方法、手術のタイミングや治療成績を報告していただき、より効果的で安全な集学的治療戦略について議論していただきたい。
4型胃癌は根治切除可能な病期で診断されても、腹膜播種の形で再発することが多く、未だ予後不良な難治性疾患である。本邦ではJCOG0501試験の結果、S-1+CDDP療法による術前化学療法の有効性が示されず、4型胃癌に対する標準治療は依然として手術+術後補助化学療法とされているが、さらなる集学的治療による治療成績の向上が強く求められる。本セッションでは、このようなアンメットニーズの高い4型胃癌に対する治療戦略について、各施設における取り組みをもとに議論していただきたい。
切除可能境界であるcT3brやcT4といった他臓器浸潤を伴う、または否定できない局所進行食道癌に対する治療戦略は、いまだコンセンサスが得られていない。他臓器浸潤食道癌に対しては従来、標準治療として化学放射線療法が行われてきたが、最近では導入化学療法奏功後のConversion 手術の有効性も報告されている。さらには、免疫チェックポイント阻害薬を含めた新たな集学的治療の開発も期待される。本セッションでは、cT3br、cT4食道癌症例に対する前治療や手術手技、治療成績について各施設の現況を報告いただき、至適な治療戦略について議論していただきたい。
下部消化管
「Watch & Wait」は、低侵襲かつQOLを重視した治療法として期待されており、適応基準、治療戦略、経過観察の方法、患者選定、社会的受容性など多面的な検討が求められている。一方、TNTは局所進行直腸がんに対して根治性や肛門温存の可能性を高める一方で、術後管理や晩期合併症といった課題も含まれている。本シンポジウムでは、最新のエビデンスに基づき両戦略の有効性や課題を議論し、今後の治療方針の確立に向けて国内外の知見を共有する。基礎・臨床研究や実臨床での経験に基づく演題を広く募集する。
直腸がん術後の縫合不全は、依然として克服すべき重要な臨床課題である。これは短期的な合併症に留まらず、局所再発、予後、肛門機能といった長期的アウトカムに深く関与することが明らかとなっている。これまでに手技の改良や新規医療機器の開発、臨床試験による検証が進められてきた。ICG蛍光法による血流評価、Pull-through法、Transanal Transection and Single-Stapled anastomosis (TTSS)法、縫合不全に対する経肛門的修復、さらにはWatch & Wait方針も含め、多様な戦略が模索されている。本セッションでは、縫合不全の予防と治療に関する最新の研究成果と治療戦略について、各方面からの知見をもとに活発な議論を期待する。
周囲浸潤骨盤悪性腫瘍・局所再発直腸癌の治療の一つとして骨盤内臓全摘術がある。高難度かつ侵襲の大きな手術でもあり、エビデンス構築のためには症例の集約が必要である。しかし、症例のバックグランドが異なり手術法も多岐にわたるため、統括してデータ解析することは非常に困難である。今後の骨盤拡大手術のデータ蓄積には、詳細な症例バックグラウンドと手術情報、切除標本の検討が必要である。本パネルディスカッションでは、各施設でのこれまでの骨盤拡大手術の検討から拡大手術の今後の方向性をディスカッションしていただきたい。
本パネルディスカッションでは、circumferential resection margin(cCRM)陽性が疑われる症例やT4b直腸癌に対する外科的治療戦略を主題とする。MRIによる正確な局所進展度の評価、術前化学放射線療法やtotal neoadjuvant therapy(TNT)の適応判断、ならびにそれらが手術に及ぼす影響についての考察を含め、ロボット支援下手術やTa/Tpアプローチを活用した高難度手技、他臓器浸潤に対する切除・再建の工夫を、手術動画を中心にご提示していただきたい。
本セッションでは、「医療コストの観点から考える大腸癌治療」をテーマに、最新の治療法とその経済的側面について議論する。ロボット支援手術や新規薬剤を用いた薬物療法、放射線治療など、最新の治療法がもたらす医療費への影響を考察するとともに、コスト削減を実現するための工夫や取り組みについても具体的な提案を歓迎する。治療効果とコストのバランス、保険適用の課題、医療資源の効率的な活用など、多角的な視点からの発表を募集する。
直腸癌に対するtransanal(Ta)およびtransperineal(Tp)アプローチは導入から十余年が経過し、一定の臨床的成果が報告されてきた。しかし近年、ロボット支援下手術の急速な普及に伴い、これらのアプローチの適応は再考を迫られている。一方で、狭骨盤や巨大腫瘍、T4進行例など、高難度症例に対しては依然として有用性が高く、その利点を活かす余地も多く残されている。本セッションでは、直腸癌に対するTa/Tpアプローチが現代の直腸癌治療においていかに位置づけられるべきか、必要とされる具体的な病態や状況、ならびにその手技的優位性について、動画を用いてご提示いただきたい。
本セッションでは、「結腸癌に対するロボット手術は腹腔鏡手術を上回るか」をテーマに、ロボット手術の技術的利点やアプローチ、再建法の工夫など、Videoの提示に加え、短期・長期手術成績、教育効果、コストなどの客観的指標を腹腔鏡手術との比較を含めて提示していただき、結腸癌に対するロボット手術の可能性を議論したい。ロボット手術と腹腔鏡手術の比較において、各施設の治療成績を考察し今後の標準術式のあり方について多角的な視点で検討する演題を広く募集する。
炎症性腸疾患(IBD)に対する治療は、薬物療法の著しい進展により手術適応や治療戦略が大きく変容しつつある。近年、鏡視下手術に加えてロボット支援手術の導入が進み、低侵襲手術の新たな展開が期待されている。これに伴い、外科治療の役割についても再検討が求められており、手術適応、周術期管理、術後合併症の予防および再燃対策等に関する検討が重要である。さらに、増加傾向にあるIBD関連癌、とくにクローン病に合併する悪性腫瘍に対しては、術前診断の困難さや予後不良が指摘されており、サーベイランス、手術、術後補助療法ならびに免疫抑制治療との関連性についても議論を深める必要がある。本セッションでは、これらを含むIBD治療の最前線に関する演題を広く募集する。
大腸癌領域では、網羅的プロファイリング解析をはじめとする技術革新により、個別化治療を目指したトランスレーショナルリサーチが急速に進展している。KRAS、BRAF、MSIなどの従来のバイオマーカーに加え、がんゲノム医療の普及により、Precision medicineに基づく治療戦略が現実味を帯びつつある。さらに、circulating tumor DNAを用いたMRD評価やLiquid biopsyの応用も注目されている。本セッションでは、各施設における基礎・臨床研究の最前線に加え、外科医ならではの臨床的知見を出発点とする創造的かつ実践的な研究も広く募りたい。大腸癌治療の未来を切り拓く研究成果を発表いただきたい。
本セッションでは、大腸癌治療における最新の知見と未来展望を探ることを目的とする。大規模データベースの解析や大規模臨床試験の成果を基に、個別化医療や新規治療法の可能性を議論したい。AIやビッグデータの活用、分子標的治療、免疫療法など、革新的アプローチに焦点を当て、臨床現場への応用を考察する。研究者、臨床医、データサイエンティストなど、多分野の専門家による発表を広く募集する。
本ワークショップでは、高度肥満、狭骨盤、TNT後といった骨盤操作が困難な直腸癌症例に対するロボット支援手術の実際と工夫を取り上げる。これらの症例は術野の確保や操作性に課題が多く、手術の難易度が非常に高い一方、日常診療で遭遇する頻度も高いため、的確な対応法の共有が求められる。しかしながら、これら難渋症例の詳細な術式や工夫について議論される機会は限られている。本ワークショップでは、ロボット手術ならではの利点を生かした具体的な技術や工夫、トラブルシューティングの実際などを広く共有し、外科医同士の実践的な議論を通じて、知識と技術の向上を目指したい。
本ワークショップでは、直腸癌局所再発に対する診断および治療の現状について、最新の知見や臨床的課題を多角的に検討する。特に、画像診断技術の進歩を活用した早期診断、再発病変に対する外科的治療の適応と手術戦略、放射線療法や化学療法の有用性、さらには関連科連携による集学的治療の取り組みなど、幅広い観点からの演題を募集する。臨床経験に基づく実践的報告や、新たな治療アプローチに関する研究成果を歓迎し、今後の治療戦略構築に資する活発な議論の場としたいと考えている。
肝胆膵
肝門部領域胆管癌は、最も高度な外科技術と深い解剖学的理解が要求される難治がんであり、術前の検査から術後の管理に至るまで、施設全体の総力が問われる領域である。わが国は、精緻な外科手術技術において世界をリードしてきた。近年、全身化学療法の進展により、周術期薬物治療が劇的に変化しつつある。さらに、海外を中心に移植やロボット手術による優れた成績も報告されている。本セッションでは、これまでの経験を基に10年後の未来を見据え、肝門部胆管癌の治療における革新と、今後解決すべき課題について、エキスパートに議論していただく。
2022年にロボット支援肝切除が保健収載されて以来、徐々に症例数は増加し低侵襲肝切除はさらなる発展を遂げている。これら低侵襲肝切除においても適切な症例選択や手術計画が重要であることは論を待たない。肝切除において、ロボット支援手術と腹腔鏡下手術という2つの手技について、それぞれの利点・欠点なども明らかになりつつある。本セッションでは、ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術それぞれの手技を提示いただき、トラブルシューティングを含め、肝切除を安全に遂行するための工夫を提示いただきたい。またロボット支援手術・腹腔鏡下手術それぞれの利点・欠点についてもご提示いただきたい。
近年、局所進行膵癌に対するConversion Surgery(CS)の有用性が報告され、新たな治療戦略として注目を集め、データが集積されてきた。しかし、適応基準の標準化、最適な術前治療レジメンの選択、手術手技の確立、早期再発例の判別、長期成績の評価、など、解決すべき課題が山積している。本セッションでは、CSの現状分析と克服すべき課題について、幅広く演題を募集する。CSの真の有効性の確立に向けて、多くの施設からの積極的な応募を期待している。
大腸癌肝転移は大腸癌の約30%に見られ、大腸癌における死亡原因の50%以上を占めている。大腸癌肝転移に対する根治療法は肝切除であるが、残肝容量と残肝機能から切除不能とされる症例も多い。術前補助化学療法後のコンバージョン肝切除あるいは2期的切除などこれまでに様々な工夫が報告される一方、最近、大腸癌肝転移でも症例を選べば肝移植により良好な成績を得られることが報告された。本セッションでは、各施設における大腸癌肝転移の根治を目指した最新の治療戦略をご教授いただきたい。
2023年のコンセンサスミーティングで肝細胞癌の切除可能性分類が提唱された。一方で肝細胞癌に対する分子標的薬や免疫チェックポイント薬などの薬物療法の進歩は目覚ましく、これらにTACEなどを加えた治療も良好な治療成績が報告されるようになった。BR1やBR2に対してこれらの治療を組み合わせた集学的治療の報告例が増える中、各施設での治療方針、治療成績について示していただき、進行肝細胞癌治療の展望について議論していただきたい。
超高齢社会を迎え、高齢者膵癌症例は増加の一途を辿っている。しかし、併存疾患や臓器予備能の低下、社会的背景など、高齢者特有の問題により、標準治療の適応に慎重な判断を要することも少なくない。本セッションでは、手術適応の判断基準、化学療法等の非手術療法との予後比較、周術期管理の工夫、術後補助療法の選択、緩和手術の意義、緩和治療の導入時期など、80歳以上の高齢者膵癌診療における諸問題について、各施設での取り組みや治療成績を広く募集する。
膵癌診療において、画像上の切除可能性評価に加え、腫瘍の生物学的悪性度を考慮した治療戦略の重要性が認識されつつある。CA19-9高値などの臨床的因子、さらには遺伝子変異や腫瘍微小環境など分子生物学的因子を加味した新たな切除可能性の概念として、Biological BRの確立が期待されている。本セッションでは、その定義と臨床的意義の確立に向けた研究成果を募集する。
進行胆嚢癌では、画像では診断できない潜在的なリンパ節転移・微小肝転移を有することがあるため、たとえ根治切除を行っても早期再発を来す症例をしばしば経験する。そのため、進行胆嚢癌に対しては、潜在的な腫瘍進展範囲を切除する術式(S4a/5切除、肝外胆管切除、広範囲リンパ節郭清など)が画一的に行われてきた。また、T3/4胆嚢癌に対しても、広範囲切除が施行され、一部の施設からは良好な成績が報告されている。しかし近年、術後補助化学療法、多剤併用による化学療法レジメ・免疫療法の導入により、切除範囲を含めた外科切除の在り方を再考する時期を迎えている。本セッションでは、周術期の抗腫瘍療法実施も考慮した現時点における胆嚢癌に対する進展度に応じた至適な切除範囲について議論したい。
本邦で考案され、広く普及した術前門脈塞栓術は大量肝切除後の肝不全を減少させ手術成績の向上に寄与してきた。これに加え、本邦では術前肝機能および切除率の評価に基づいた、緻密な肝切除適応が用いられ、良好な成績が得られてきた。近年欧米からは肝静脈塞栓や門脈結紮+2期的肝切除(ALPS手術)の有用性も報告されている。しかしながら、これらの肝切除適応基準および術前処置を用いても、肝切除後肝不全は一定の割合で発症し、発症後の死亡率は高率である。本セッションでは、基礎研究および臨床の視点からの術後肝不全の予防および発症後の治療戦略について議論いただきたい。胆管再建を伴う肝切除後の肝不全発生率・肝再生率は、単純肝切除に比較して大きな差があるため、これらを分けて検討いただきたい。
胆膵外科領域において、臨床的課題の解決には基礎研究からの知見が不可欠である。オルガノイド培養や単一細胞解析などの新技術を用いた病態解明、バイオマーカーの同定、薬剤耐性メカニズムの解析、さらには新規治療標的の探索など、基礎研究は着実な進歩を遂げている。本セッションでは、臨床応用を見据えた基礎研究の成果、特に具体的な研究データがなくても、外科医が臨床上必要と考え、期待される研究成果のアイデア等を含めて、幅広く募集する。
膵臓外科領域におけるロボット支援手術は、保険収載を機に急速な普及が予想されている。精緻な手術操作や良好な視野展開など、その利点が期待される一方で、安全な導入・普及に向けた課題も指摘されている。本ビデオセッションでは、手術手技の定型化、ピットフォール克服の工夫、術中トラブルへの対応など、実臨床における具体的な経験を共有していただき、膵ロボット手術の現状と課題について検討したいと考えている。
心臓
心不全パンデミックの到来が予測される中、近年の薬物療法やカテーテル治療の進歩により、心不全治療における外科の役割は相対的に縮小しつつある。心臓移植やDT-VADなど自己心を置換・代替する治療は近年実施数が増加傾向にあるが、依然として多くの制約がある。一方、左室形成術や僧帽弁下・三尖弁下への外科的介入といった自己心を温存し機能回復を目指す治療は、特に移植アクセスが限られる本邦において独自の進化を遂げ一定の役割が期待されるものの、エビデンスは十分ではない。本セッションでは、自己心温存外科治療の現状と展望について、移植やデバイス治療そして内科治療の立場も含め多角的な立場から議論していただく。
弓部大動脈全置換術(TAR)は大動脈外科のマイルストーンであり、多くの外科医が手掛ける重要な術式である。特に本邦から報告されたfrozen elephant trunk(FET)の普及により、TARはより安全かつ標準化された術式となったが、一体型FETの登場や左鎖骨下動脈のfenestrationなど、方法論は今なお進化を続けている。一方、TEVARも低侵襲治療として重要な選択肢であり、新規デバイスの登場によりさらなる発展が期待される。本セッションでは、open surgeryとTEVARのそれぞれの立場から、弓部大動脈瘤治療の最適解を探る。
Carpentierによる僧帽弁形成術の確立から50余年が経過し、術式は理論的体系の整備とともに高い再現性を有する手術として成熟してきた。近年は小切開やロボット支援手術の普及が手技の洗練や理解の深化に寄与している。一方、Barlow病や感染性心内膜炎、先天性疾患など形成困難な複雑病変は依然として大きな課題である。本セッションでは、複雑病変に対する形成技術と成功の鍵を、手術ビデオを通じて精緻に議論いただく。
先天性心疾患は個々の症例でバリエーションが大きく、従来の心臓カテーテル検査や心エコーなどの診断モダリティだけでは、事前に完全な手術デザインを予測することは困難であった。近年では、3D心臓模型、3DCG、血流動態の可視化など多様なモダリティが利用可能となり、これらを用いたシミュレーションにより、より精緻な術前計画が可能となってきた。本セッションでは、こうした新規モダリティを用いた手術プランニングが、術式の選択や成績、外科医教育に与える影響について、各施設の経験と工夫を共有し、議論を深めたい。
血管
本セッションでは、「Juxstarenal/short neck AAA(腹部大動脈瘤)」に対する治療戦略について、多様な術式の選択肢とその適応を議論する。通常のEVARから最新のComplex EVAR(Fenestrated/branchedやChimney)、Open repair、Hybrid手術まで、各術式の利点・課題・工夫を、具体的症例を交えてVideo形式で紹介していただく。術式選択の決め手や合併症対策、施設・術者ごとの工夫など、実臨床に直結する知見を共有する場とする。ご自身の経験に基づくVideo発表を期待している。
本邦では企業性Frozen Elephant Trunk (FET)デバイスが使用可能となって約10年経過し、FETを用いた全弓部置換術を行う頻度は年々増加している。現在では既存のFETグラフトに加え先端を非ステントカバーとしたFETグラフトや4分枝グラフトとの一体型FETグラフトも発売され、さらにグラフト選択が広がっている。本パネルディスカッションでは各施設におけるFETデバイスの使い分けやそのそれぞれのデバイス固有の利点や欠点などについて議論していただきたい。
包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する診療指針として、Global Vascular Guidelinesや2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドラインでは、PLANアプローチが提唱され治療選択の一助となっている。一方で、GLASS分類の妥当性や多様な患者背景への適応、実臨床での運用には課題が多く、2025年のフォーカスアップデートも本邦の十分なデータも少ないことから限定的内容にとどまっており、さらなるエビデンスの構築と実用的な改訂が求められる。本セッションでは、今後必要とされる知見やエビデンスと診療指針のあり方について議論を深めたい。
呼吸器
肺癌周術期治療に免疫チェックポイント阻害薬(IO)投与が保険適用となり、術前かサンドイッチか術後か、どのような治療アルゴリズムを用いているか、そのリアルワールドの有用性を議論していただく。また、IO治療後の切除マージンの考え方について、術後管理の違いについても気管支・肺動脈形成例と単純肺葉切除の違いを中心にご報告いただく。さらに、これまで手術適応とされてこなかったmultiple N2やstageⅢB症例のサルベージ手術が報告されてきているが、施設によっては放射線化学療法+IO(Pacificレジメン)により治療されている施設もいまだ多いと推察される。積極的にICIを導入している施設から、手術のリスクとベネフィット、切除マージンの考え方、術後の合併症管理について、さらには外科医が考える周術期ICI併用療法の適応拡大の可能性と今後の方向性について議論いただきたい。
日本の臓器移植は脳死ドナー数の増加を中心に状況が大きく変化しつつある。ドナー数の増加は長く望まれていたことであり、日本の臓器移植の成長過程の一部だが、これに伴い従来のやり方では対応できなくなりつつある。現在の日本の肺移植の課題(実施体制、肺移植をとりまくルールなど)と今後の見通しについて多角的に検討し、日本の肺移植が目指すべき将来像、青写真について議論する。
肺癌胸壁浸潤、転移性胸壁腫瘍、原発性胸壁悪性腫瘍等、胸壁悪性病変に対する治療は、手術を前提としたCRTの適応、切除範囲の決定と切除方法に加え、胸骨、横隔膜を含めた胸壁再建術の検討が治療戦略上重要となる。なかでも、再建術では、切除範囲に基づく再建の適応、補填材料の性質(自家組織か人工材料か)、固定方法や術後管理、更には補填材の遠隔期変化・変性あるいは耐久性が問題になる。ここでは、単なるビデオセッションでなく、代表的な症例提示も含めて、各施設が行っている再建方法を中心に総合討論を行い、今後の診療に取り入れるべきものの方向性を示していただきたい。
周術期治療の劇的な変化と手術関連技術の進歩に伴い、一般的には切除不能とされるような隣接臓器浸潤を伴う局所進行肺癌に対しても手術を行う機会が増加している。必然的に手術の難易度や侵襲度は高くなるため、手術の安全性も重要視される。一方、手術侵襲を軽減するため、従来の開胸アプローチの他に胸腔鏡やロボットを用いることも試みられている。本セッションでは、隣接臓器合併切除を伴う局所進行肺癌に対する手術ビデオを提示していただき、手術遂行のための戦略や手技上の工夫、再建法、手術の注意点やトラブル対策について議論していただきたい。同時に、手術可能とした判断やアプローチ選択の根拠についても示していただきたい。
呼吸器外科手術に新機種ロボットが参入し、ロボット手術のさらなる発展が期待される。呼吸器外科手術における新機種ロボットの特性やダビンチとの相違を検討し、新機種ロボット参入による今後の呼吸器外科ロボット手術の展望と課題について議論していただく。また、最新のロボット技術の導入事例や臨床結果を共有し、各種ロボットの特性とその適用範囲などについて報告いただく。特に、手術支援ロボットの操作性、精度、安全性、コスト効果などの観点から、それぞれのロボットの特質を比較検討する。また、実際の臨床現場での使用経験や課題についても議論し、今後の技術開発や導入に向けた展望と課題を探る。
乳腺
2018年BRACA1/2遺伝学的検査、2019年がんゲノムプロファイリング検査が保険収載され、乳癌治療を取り巻くゲノム医療は大きく変化した。ゲノム情報は、初発から転移・再発までコンパニオン診断として必須となる一方、予防切除やサーベイランスに繋がることもあり、その役割は今後さらに拡充することが予想される。また、大規模データの収集が進み、様々な臨床研究や治療法の開発のために利活用が推進され期待されている。一方で、遺伝医療の整備の遅れ、検査のタイミング、治療到達率の低さ、医療経済性など課題は多い。本セッションではゲノム医療について最新の知見を募集し、乳癌治療におけるゲノム医療の成果や問題点とともに、今後の展開について議論を進めたい。
乳癌薬物療法の進歩に伴い、局所療法における治療選択も変化がみられる。術前治療により乳房温存療法の選択肢が広がり、最近ではcN1症例においても、術前治療が奏効した場合には、従来の一律郭清に代わり、センチネルリンパ節生検やTargeted Axillary Dissection(TAD)などが選択肢に加わるようになってきた。さらに、乳房または腋窩手術省略への試みも臨床試験が進行中である。また、限局的かつ少数個の遠隔転移いわゆるオリゴメタスタシス対して、局所療法を併用した集学的治療の有効性も報告されてきている。本セッションでは、乳癌のサブタイプを考慮した集学的治療の選択、そのバランスを考慮した乳癌局所療法の今後の方向性と課題について議論していただきたい。
近年、乳癌外科治療が劇的に変化している。特に2023年12月に保険収載されたRFA(ラジオ波焼灼療法)は乳癌手術治療に大きな変革をもたらし急速に普及している。また、ロボット支援下手術の導入も検討さており、それに合わせて内視鏡手術の見直しも始まっている。また、乳腺外科医による整容性を追求したオンコプラスチィクサージェリーも多くの施設で行われ始めた。センチネルリンパ節生検においても術前化学療法が奏功し腋窩リンパ節転移が消失した症例における適応についても議論されている。本セッションではそれらの先進的乳癌外科治療の利点と欠点、その将来展望について、ビデオセッションとして手術手技の実際を見ながら議論していただきたい。
内分泌外科
本邦でも進行甲状腺癌に対し、遺伝子変異に基づき複数の選択的キナーゼ阻害薬が使用可能になり、各組織型の進行癌に対し、様々なラインでの使用が各施設で経験されている。本シンポジウムでは、選択的キナーゼ阻害薬を含む進行甲状腺癌の集学的治療に関し、各施設の臨床経験や研究成果を広く募集する。遺伝子検査の活用法や選択的キナーゼ阻害薬の治療成績、実臨床での課題、マルチキナーゼ阻害薬と選択的キナーゼ阻害薬の位置付け、今後の甲状腺癌の治療の展望など、多角的な報告を歓迎する。また、海外からの招待講演では、遺伝子情報の甲状腺腫瘍の診断と治療戦略への応用を提示していただき、今後の遺伝子情報を用いた甲状腺腫瘍の診療について議論したい。
本ワークショップでは、内視鏡手術、ロボット支援下手術、小切開手術、focused parathyroidectomyなどの外科的治療や、ラジオ波焼灼療法(RFA)などの非手術的治療を含む甲状腺・副甲状腺腫瘍に対する低侵襲治療に関して、それぞれの治療法の適応、治療手技の工夫、合併症対策、治療成績などに関し、幅広く演題を募集する。患者の満足度なども含め、多様な臨床的視点から発表していただき、ディスカッションを行いたい。
小児
小児がんの外科的治療においては、腫瘍の切除による根治を目指すだけでなく、患児の成長や将来の生活を見据えた機能温存や生活の質(QOL)の向上が重要な課題となる。特に妊孕性の保全や整容面への配慮、発達段階に応じた術式の選択など、成人とは異なる複雑な判断が求められる領域である。本テーマでは、各種小児がんに対する外科的アプローチの実際、新たな治療技術の導入例、術後長期フォローアップの工夫、多職種連携による支援体制など、多様な視点からの発表を期待する。小児がん外科治療の現状と今後の課題、さらには展望に関して論じていただきたい。
小児肝腫瘍は稀少疾患であり、外科治療と化学療法による集約的治療が治療成績向上に不可欠である。小児肝腫瘍に対する国際共同臨床試験(PHITT)の解析が現在行われており、次の臨床試験に向けての課題が徐々に浮き彫りになることが期待されるところである。本セッションでは、それぞれの施設で行っている肝切除や移植の適応、手術アプローチ、治療成績などを提示いただき、小児肝腫瘍に対する外科的視点からの展望および次の臨床試験において明らかにしたい臨床課題について議論していただきたい。
先天性食道閉鎖症は新生児期の根治術後も、吻合部狭窄や嚥下障害、気管への影響など、成長に伴う多様な問題が長期的に顕在化することがある。術式の違いや術後管理の工夫が予後やQOLに及ぼす影響については、依然として明確なコンセンサスが得られていない。本セッションでは、各施設における術式選択、術後のフォローアップ体制、狭窄や気管病変への対応策などをご発表いただき、長期予後改善に向けた課題と展望について広く討論したい。
胎児診断技術の進歩により、出生前に小児外科疾患を把握し、出生直後の治療方針を立てることが可能となってきている。これに伴い、産科・新生児科・放射線科・麻酔科など他科との密な連携が一層重要となっている。本テーマでは、胎児診断を契機とした多職種協働による治療戦略、術前準備の工夫、出生タイミングの調整、周術期管理の実際などについてご発表いただき、今後の小児外科における胎児診断活用の在り方について討論したい。
救急・外傷・災害・地域
近年、大規模自然災害のみならず、爆弾や銃器テロによる爆傷、銃創傷病者への対応準備が求められている。自然災害における急性期医療以上に、緊急手術を中心とした迅速かつ的確な外科的対応が負傷者救命の重要な鍵となる。本セッションでは外傷チームの手術技能向上の取り組みのみでなく、受け入れ施設の体制構築、大規模イベント時の派遣や受け入れ準備の経験、加えて緊張が高まる近隣国の取り組み等を共有することで、我が国の災害医療の質向上に資する議論をしたい。
本邦では、Surgical Rescueの本来の定義である「診療領域の異なる診療科による処置・手術に伴う合併症に対する外科的対応」からやや逸れ、外科術後の合併症に対する再手術までもSurgical Rescueに含め、これをAcute Care Surgery(ACS)分野が一括して担うべきとする議論が、特に医師の働き方改革への対応策として盛り上がりを見せている。本セッションでは、一次手術を担当した診療科(呼吸器外科、消化管外科、肝胆膵外科、心臓血管外科など)と、それらの再手術を担うACSの両者の立場から、再手術の引き受けに関する現場の実情、希望、可否、そして是非について議論いただき、学会としての方向性を示す場としていただきたい。
近年、がんに対しては分子標的薬や免疫療法などの新たな治療法が確立されてきた。それに伴い、がん患者の緊急症(oncologic emergency)に関して、患者数の増加や新たな診療体制構築の必要性が示されている。本セッションでは、Oncologic Emergencyにおいて、外科医が果たすべき役割(緊急手術、緩和的外科介入、治療方針の判断など)に焦点をあて、手術の適応・限界、QOL向上への貢献などを多角的に議論したい。
外傷初期診療ガイドラインJATECでは、大量出血を来し輸液・輸血に反応しないnon-responder症例へのCT検査は予後を悪化させるとして禁忌とされてきた。早期止血による心停止回避が重要である一方、CTで解剖学的損傷部位を確定し手術に臨みたい外科医の要望も依然として強い。本セッションでは、循環動態が不安定で生命危機のある重症体幹部外傷の大量出血症例に対してCT検査は本当に必要ないのか、それとも必要なのかという視点について科学的根拠に基づくデータを提示いただき議論をしていただきたい。実例を示しながらCT検査の是非について議論いただける発表を募集する。明日からの外傷外科診療に役立つ議論を行い、一定の方向性を探究し共有したい。
総論・基礎・教育分野
リキッドバイオプシー技術は、がん診断や治療モニタリング、早期発見の分野で急速に進化している。循環腫瘍DNA(ctDNA)、循環腫瘍細胞(CTC)、エクソソームなどのバイオマーカー解析は、非侵襲的でリアルタイムな腫瘍の動態把握を可能にし、個別化医療の実現に貢献する新たなツールとして注目されている。この技術革新により、外科医もリキッドバイオプシーを活用し、術前・術後のがん管理に積極的に取り組むことが求められている。新規技術の開発から臨床応用に至るまで、多角的な視点からの研究を歓迎する。革新的な発見やこれからの課題について議論を深め、リキッドバイオプシー研究の最前線を共有する場としたい。
外科学に関する再生医療の基礎研究は目覚ましく進んでいるが、依然臨床応用化された技術は少ないのが現状である。本セッションでは、再生医療の最新の基礎研究を紹介するとともに、再生医療の各臓器不全治療における役割、そしてトランスレーショナルリサーチをご紹介いただき、再生医療が今後の外科治療に与える影響に関して議論したい。
従来、外科教育は「見て学べ」に依存してきたが、近年、欧米を中心にシミュレーター研修や客観的評価・フィードバックなど新たな手法が導入され、その効果に関するエビデンスが着実に蓄積されつつある。一方で、研究手法や評価体系にはなお課題が残されている。本セッションでは、各分野で進められている外科教育研究の成果と課題を共有し、改善策および今後の展望について多角的に議論することを目的とする。外科教育の未来を切り拓くための建設的な議論を期待する。
海外の外科教育は国によって多様であり、国内では得難い貴重な情報も多い。本セッションでは、海外において臨床留学や研修を経験した外科医を対象に、各国の外科教育システムの特徴、利点・課題、そして日本との違いについて議論を深める。各国における現状報告と実践経験をもとに、多角的な意見交換を行い、国際的な視点から日本の外科教育の強みと改善点を検討することを目的とする。海外での教育経験を有する外科医には、各国の研修環境や教育制度に関する具体的事例や課題、成功要因について発表をいただくとともに、今後の外科専門医教育の質的向上に資する議論を期待する。
外科教育の未来を担うのは、時代を担う若手医師である。本セッションでは、外科専門医またはサブスペシャルティ領域専門医を目指し修練中の卒後8年目までの若手医師を対象に、研修過程で感じた「良い点」と「変えるべき点」を、具体例とともに率直に発信していただく。現場からの声を持ち寄り、課題を浮き彫りにするとともに、将来の外科教育をよりよいものへ導くための建設的な議論を展開する。若手医師の実体験から生まれる提言が、次代の外科教育を形づくる新たな一歩となると考える。
臓器移植においてドナー不足解消のために、心停止ドナー等の「傷み易い臓器」を利用するニーズがある。単純冷保存では安全に利用できないこれらの臓器を体外で灌流し、虚血再灌流障害を軽減することが臨床的、基礎的な研究で証明されている。しかし、温度、時間、灌流液、エンドポイントの評価等は定まっていない。本セッションでは、各臓器における灌流条件や評価法の現況を紹介いただき、今後外科医がすべき、基礎研究、臨床研究、保健収載・改訂等の道筋を明らかにしたい。
癌研究領域において、外科医は手術検体という最も優れた材料に近い距離にある。最新のゲノム解析技術は、シングルセル解析、空間トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、プロテオミクス、多重免疫染色といった分野で目覚ましい進歩を遂げている。これらの技術革新は、癌研究の中心を従来のモデルからHumanの手術検体へと移行させつつある。この変革により、外科医がこれらの解析に積極的に関与し、臨床情報と統合することが癌研究の発展に不可欠となる。本セッションでは、癌種横断的に、手術検体を用いた最新の研究成果を広く募集する。多様なゲノム解析技術(DNA,RNA,蛋白解析)を駆使した研究を通じて、革新的な発見や新たな知見を共有する場とし、最前線の研究成果を交えて研究者間での活発な議論を期待している。
良質な外科ハンズオンセミナーとはどんなものか。外科医、研修医、学生向けに、シミュレーター、アニマル、献体等を用いたハンズオンセミナーが各施設や学会において実施されている。本セッションでは、各施設・学会におけるハンズオンセミナーの工夫や成果を報告し、その効果および課題について討議する。成功例と改善点を共有し、より質の高い研修機会を創るための議論を深めたい。
領域横断
Global Surgeryとは、世界中の誰もが安全で適切な外科治療を受けられることを目指す、国際的な外科医療支援の概念である。紛争、災害、貧困、医療資源の不足などにより外科的治療が届かない地域では、外科医の専門性が強く求められている。本セッションでは、「外科医こそができる国際貢献」の意義を見つめ直し、支援の在り方や、現地における人材育成を含む持続可能な取り組みについて議論する。SOTA(外科・産科・外傷・麻酔)ケアへのアクセス向上を目指すG4 Allianceの理念を意識した取り組みに関する演題も歓迎する。
臓器移植において臓器保存許容時間や急性拒絶の起こりやすさは臓器によって異なるが、虚血再灌流障害が急性拒絶を助長することは臓器によらず共通している。しかし、虚血再灌流障害が拒絶反応の進展に与える影響は未解明な点が多く残っている。本セッションでは、各臓器における実質・非実質細胞、浸潤細胞の細胞間相互作用と細胞内情報伝達やその治療法を提示していただきたい。虚血再灌流障害と免疫反応のクロストークについて、各臓器領域での研究の進展を共有し、今後の治療法開発の向かうべき方向を決める一助となることを目指す。
基礎研究が実際の臨床に応用されるまでの道のりは、しばしば険しく、途中で埋もれてしまう研究も少なくない。華々しい研究成果の陰には、数え切れないほどの地道な努力や試行錯誤が隠れている。その過程には、外科医が持つ体力、根気、そしてあきらめない精神が大きな役割を果たしてきたと言える。本セッションでは、創薬、新規治療、医療機器開発など、基礎研究を臨床へとつなげた取り組みを募集する。ここで求めるのは、最終的な成果だけでなく、成功に至るまでの挑戦と経験だ。道半ばの外科医研究者が勇気づけられるような実例を共有し、トランスレーショナルリサーチの魅力と可能性を共に探求する場としたい。
各サブスペシャリティ学会においては、若手外科医の教育・リクルート活動に対し多様な取り組みが行われている。本セッションでは、各学会の教育委員会およびU40委員会等の若手委員会の代表者が活動内容を報告し、相互に学び合うとともに、今後の協力体制構築に向けた議論を行うことを目的とする。各学会の活動成果に基づき、効果的なリクルート活動や教育手法について意見を交換し、外科医育成のさらなる発展に寄与する場としたい。
近年、肥満は多くの外科手術において重要な合併症リスクとして注目されており、術前評価から術式選択、術後管理に至るまで多角的な配慮が求められる。本セッションでは、肥満を合併する患者に対する最新の外科的対応について、bridge surgeryとしての減量・代謝改善手術や、周術期管理、麻酔、合併症対策、手術の工夫など、多様な視点からの演題を広く募集し、領域横断的な知見の共有とディスカッションを行う。
術中の血管損傷は全ての手術のあらゆる場面で遭遇しうる。防止・回避のための方策が考慮されていても根絶されておらず、血管外科医の関与を求められることも少なくない。鏡視下手術の場合対処はより困難であり、開胸・開腹の追加から止血、修復に長時間を要すると生命予後に直結する。一施設で頻発することは稀で、発生時の画像などの記録も難しく、医療事故として捉えられることもあって、まとまった議論をすることは難しい。一方、たった一つの経験でも教訓は大きく、共有することが再発防止の一歩となる。多くの事例を共有して再発防止に繋げることは極めて有意義であり、むしろ、シェーマだけであっても良いので貴重な症例の報告を募集する。