演題募集(公募)
120回企画
命と向き合う外科医(1)(2):手術でしか救えない命~外科手術の限界への挑戦~【Video】
いつの時代も、外科医は患者の命と向き合い、手術という手段を駆使して生死を分かつ状況で力を発揮してきた。近年、薬物療法、放射線治療、内視鏡治療、血管内治療など様々な外科手術以外の治療法が目覚ましい発展を遂げ、疾患、病態によっては外科手術を回避することも可能となってきている。しかし、そのような状況でも外科手術以外では制御し得ないは極めて困難な疾患、病態が存在し、外科手術は命と向き合う最後の砦となっている。外科手術の限界に挑戦するためには、豊富な経験に基づく厳格な適応判断と高度な技術に裏打ちされた手術手技が求められる。これまでにその手で幾多の命を救ってきた熟練の外科医に、その技をビデオにて供覧いただきたい。
命と向き合う新技術(1):次世代手術支援ロボットシステムのこれから
ロボット支援下内視鏡外科手術は従来型低侵襲手術の術後合併症を軽減し、安全性・低侵襲性を向上する可能性が期待されている。2018年度診療報酬改定により新たに12のロボット術式が保険収載され、我が国ではロボット支援下内視鏡手術が急速に普及しつつある。今後、複数の企業から新しい手術支援ロボットシステムが上市され、更なる機能と経済性の向上が期待されている。本セッションでは、近い将来登場する新たな手術支援ロボットシステムの紹介も含めて、ロボット支援下内視鏡手術の将来展望について討議する。
命と向き合う新技術(2):8K 3D システムがもたらす外科解剖学の新知見【400インチ8Kモニター上映】
内視鏡手術における術野画像の高精度化は手術の精度向上に大きく貢献した。そして近年はさらに解像度が向上し8K3D画像による外科手術が現実のものになりつつある。こうした最先端の画像技術はこれまで認識し得なかった膜構造の存在など、外科解剖学における新知見をもたらす可能性を秘めている。各領域の8K手術映像により外科解剖学、手術学の新たな展開、今後の可能性を共有したい。
ポスターPDF
命と向き合う新技術(3):AIがもたらす外科医の未来像
人工知能(AI)の医療への応用により、放射線、病理、内視鏡などの画像診断において、専門医を上回る正診率が報告され、近未来の医療においてAIが大きな役割を果たすことが予想されている。本セッションでは関連分野におけるAIの現状と将来展望を俯瞰しつつ、AIによる手術支援や技術評価など外科分野における最先端の研究成果と国内外の実例をご報告いただき、AI技術を駆使してSociety 5.0に生きる外科医の未来像がどのようなるのか、またどうあるべきなのかについで議論していただきたい。
外科医として生きる(1):外科医が憧れの存在となるために
外科を志す若手医師を増やすためには、我々外科医自身が医学生・若手医師・社会から信頼され、「憧れの存在」となることが必要である。本セッションでは、様々な観点から外科医が憧れの存在となるための方策を論じていただきたい。それぞれの立場の演者が考える「憧れの外科医」像をご提示いただき、これを実現するために社会として、日本外科学会として取りうる方策の方向性を模索したい。
外科医として生きる(2):自らを磨き、重圧に立ち向かう苦悩と喜び
外科手術は患者に大きな侵襲を加えるものであるが、様々な臓器機能を回復させ、そして生命そのものを救う特別な医療行為である。外科医の中でも高難度手術を行う外科医は、肉体的にも精神的にも大きなストレスに晒され、これに打ち勝って目標を達成しようとする。しかし外科手術の成功、患者の回復が、外科医に大きな達成感をもたらす一方で、結果次第では、患者にもその家族にも外科医自身にも大きな苦悩をもたらす場合がある。外科医はこうした重圧にどのように立ち向かい、どのような思いで厳しい修練を積み、自らを磨くのだろうか。実際に多くの試練を乗り越えて来たベテラン外科医、あるいはこれからこうした道を歩もうとする若手外科医にその根底にある思い、外科医として生きる「苦悩と喜び」を語っていただきたい。
外科医として生きる(3):世界を舞台に活躍する外科医たち
我が国の外科学、手術手技は世界に冠たる高水準を誇っている。一方、言語や医療制度の違いのため、我が国の医学部を卒業し卒後研修を修了したのちに海外で活躍する日本人外科医の数は未だ限られている。日本人外科医の海外での活躍は、日本の外科学の国際的発展において重要な役割を担っている。本セッションでは、日本で外科学を学んだ経験を生かして海外で活躍する日本人外科医に、海外で外科医として生きていくことの意義、克服すべき課題、将来の夢を自らの経験をもとに語っていただき、これから世界を目指す若手外科医に伝えていただきたい。
外科医として生きる(4):命を見つめて、それぞれの道を生きる外科医たち
人は自ら病や生命の危機を体験することで、それまでとは違った価値観で命と向きあって生きてゆく。本セッションでは、様々な体験を経て、外科医としてあるいはまた別の人生を歩んでいる医師たちにその思いを語っていただく。彼らの貴重な体験に基づく葛藤、夢、心の機微の中から、これから外科医として成長し、命と向き合っていく若手外科医たちにも何かを感じ取っていただきたい。
外科医として生きる(5):未来の外科医に求められる研究
近年ゲノム医療、人工知能を用いたビッグデータサイエンス、低侵襲・ロボット支援手術、再生医療、新規のがん治療、遺伝子編集技術など、次々と新しい分野が開拓され、外科医が取り組む基礎、臨床研究の方向性は刻々と変化している。臨床研究法の施行などにより臨床研究のあり方も急速に変化している。本セッションでは、将来が期待される萌芽的な研究から、臨床応用に近づきつつある研究まで、外科医ならではの幅広い分野の研究成果や構想をご発表いただき、これからの未来を担う若い外科医が目指すべき研究の道筋を示していただきたい。
外科医として生きる(6):若手外科医の苦悩、渇望―今、何を解決すべきか―
命と向き合い自らを磨き、夢を追う外科医の志は次の世代へと引き継がれてゆく。しかし、その陰で若手外科医達は思い描いている自らのキャリア形成と日々の現実とのギャップに苦悩し、そして同時に成長していくための渇望を抱いているのではないだろうか。本セッションでは、さまざまな環境で研鑽を積む若手外科医に、外科医として成長する上で直面する問題について述べていただき、また指導医からも若手外科医の苦悩と渇望をどのように解決できるかを論じていただく。セッションを通じて、明日の外科を担う若手医師たちが、その志のままに、外科医として成長できる、そのようなシステムをつくるために何が必要なのか、聴衆とともに考えたい。
ご献体を用いた手術手技研修のあり方 ―本学会初のライブデモンストレーション―【全指定演者セッション】
平成24年に日本外科学会と日本解剖学会の合同で「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」が公表され、それまで学生実習や解剖学研究に限定されていた献体使用が、医師及び歯科医師の手術手技研修等にも可能となった。今回、日本外科学会定期学術集会初の試みとして、慶應義塾大学および藤田医科大学のカダバーサージカルトレーニング施設と会場を中継で結び、「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」(日本外科学会、日本解剖学会)を遵守して貴重なご献体を用いた胸腔鏡下食道亜全摘術およびロボット支援下直腸切除術の手術手技研修を行う。今後の手術手技研修における本手法の可能性、課題についての議論を深めたい。
特別企画
夢を実現するためのキャリアパス・教育システム
若手外科医が思い描いた将来像を実現するためには、教育システムが重要であることは言うまでもない。ベテラン外科医には自ら経験した優れた教育システム、あるいは望みながら実現が叶わなかった「経験しておきたかった修練」について語っていただきたい。また、現役指導者には、自施設で実践している「自慢の育成システム」とそのゴール、若手外科医には「これから歩みたい」外科医としての修練のあり方について語っていただき、様々な世代、立場から「夢を実現するための」に必要な方策を論じていただきたい。
夢を実現し、輝く女性外科医たち―求められるサポート体制と働き方改革―
近年女性医師は年々増加しており、各分野における女性医師の活躍も目覚ましいものがある。過去においては非常に少なかった女性外科医も、周囲のサポート体制の充実や先輩女性外科医の活躍を機に増加してきている。本セッションにおいては、様々な困難を克服してキャリアを築きあげ、外科医としての夢を実現しながら「輝いている」女性外科医に登壇いただきたい。今後さらに求められるサポート体制や働き方改革のあり方など女性外科医が活躍するために必要な方策について語っていただくと同時に、若手女性外科医に夢と勇気を与える「前向きな」セッションとしたい。
外科系新専門医制度のあるべきグランドデザイン
2018年から新専門医制度における外科専門医研修が開始され、2021年度には新制度における外科専門医が誕生する。一方、国民から見てわかりやすい簡素な制度の構築や専門医の重複、乱立の解消など当初の目的は未だ達成されていないのが現状である。外科医の専門教育の質を向上させ、若手外科医が安心して修練を行うことができる専門医制度のあるべきグランドデザインを求めて、その課題と今後の展望につき議論していただきたい。
希望と安心をもたらす医療安全管理―無過失補償制度の可能性も含めて―
医療安全管理は患者の安心、安全はもとより、これを担う医療者の安心、安全が伴って初めて医学、医療の発展に繋がって行く。情報が氾濫する社会環境は、時として医療に対する謂れ無い不信を招き、それに対する過剰な自己防衛による委縮医療をも招きかねない。本セッションでは外科領域の医療安全に関する課題を浮き彫りにし、多方面からの取り組みについて発表いただきたい。従来からその必要性が提唱されながら、実現に向けた困難性も指摘されている無過失補償制度の外科領域への導入の可能性についても論じていただく。
地域を守り、地域で生きる外科医たちの思い
医療における「働き方改革」が進む中で、絶対的な業務量の多い外科医不足が深刻化している。特に地域医療を担う外科医不足は地域医療の質にも影響しかねない。一方、地域を支える中で守備範囲の広い真の外科医を育成することも可能となる。本セッションでは、これまで地域を守りながら後進を育ててきた外科医、あるいはこれから新たに地域を支えようとする若手外科医にその根底にある「思い」や「未来」を語っていただきたい。
時代が求める外科医の働き方
業務量に比して外科医が相対的に不足する状態は今後さらに顕在化する見通しが示されている。そうした中、他職種へのタスクシフトの推進、AIの活用を含めた業務の効率化、男女共同参画の推進、外科医のインセンテイブのあり方、施設の集約化など、様々な課題が論じられている。これらの取り組みの現状と課題、これから到来する時代に即した外科医の働き方のあるべき将来像について様々な観点から討論していただきたい。
NCD (National Clinical Database)の10年を振り返る―課題と展望―
National Clinical Database (NCD)が設立されて10年が経過した。これまでに1000万件を超える手術情報が5000以上の施設より登録され、世界に類を見ない巨大なデータベースとなった。NCDは、専門医の診療実績を証明する手段として運用されるだけではなく、手術リスク評価システム、自施設の医療の質を検証する手段としても利活用されている。さらにがん登録データとしての機能も付加され、複数の領域で全国データが集積されつつある。本セッションではNCDの意義と今後に残された課題、そして今後のさらなる展開について論じていただきたい。
ディベート
呼吸器悪性腫瘍に対する術後補助療法―必要 vs 不要―
1990年代後半に行われた臨床試験の結果に基づき、我が国では病変全体径2cmを超える病理病期I期肺腺癌完全切除例にはテガフール・ウラシル配合剤療法が、II-IIIA期完全切除例には、シスプラチンベースの補助化学療法が推奨されている。しかしながら、その生存上乗せ効果は5-10%程度であり、大半の患者はそもそも不要であるか(手術のみで根治)補助療法を行っても再発を来す。シスプラチンベースの補助化学療法では約1%の治療関連死や術後5年以降には生存上乗せ効果が縮まることも報告されている。一方、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など新規薬剤の登場等により、再発後も従来より良好な生存期間が得られるようになっている。新規薬剤を用いた術後補助療法の研究も進行中であるが、術後補助療法を取り巻く現状を踏まえ、その必要性と意義、今後のあるべき方向性についてディベート形式で議論していただきたい。
若年者腹部大動脈瘤に対する治療戦略―開腹 vs EVAR―
ステントグラフト治療(EVAR)が保険適用になって10年以上経過し、中長期成績での功罪も明らかとなりつつある。本セッションでは、生命予後が10年以上期待できるlow risk症例で、かつ腹部大動脈瘤の解剖がEVARに適している患者に対して、QOLの観点も含め、EVAR、開腹のいずれを選択すべきか、ディベート形式で議論し、最善の治療を探っていただきたい。
小児嚢胞性肺疾患に対する手術 ―開胸 vs 胸腔鏡下―
出生前診断の普及により、今日では小児先天性嚢胞性肺疾患は感染症状を反復する前の早い月齢に手術される機会が多くなっている。一方で小児における胸腔鏡下の肺葉切除や肺区域切除の報告も増えている。しかしながら本疾患のair-trappingな特異性や手術時月齢が低いことから、成人肺癌の手術時のような片肺換気による患側肺の虚脱は困難な場合があり、内視鏡手術の安全性を疑問視する意見もある。さらに術後の肺成長が期待できる小児肺手術で区域切除を行うことの意義に関しても議論が残る。また罹患肺葉や肺区域の術前評価の限界から、直視下における切除肺葉の判断を重要視する意見もある。先天性嚢胞性肺疾患の特異性に鑑み、開胸手術、内視鏡手術それぞれの有用性と安全性につきディベート形式で議論していただきたい。
切除可能膵癌の治療戦略―術前治療 vs 切除先行―
遠隔転移のない局所性膵癌の治療成績向上のため、化学療法、放射線療法、手術を組み合わせた集学的治療が行われている。Borderline Resectable(BR)膵癌に対する術前化学・放射線療法は標準的治療として広く認知されているが、切除可能膵癌に対する術前治療の有効性については未だ明らにされていない。本セッションでは、切除可能膵癌の治療戦略として手術先行(Surgery First)の立場、術前治療の立場からエビデンスに基づいたディベート形式の討論を行っていただきたい。
直腸癌に対するtaTMEの意義 ―あり vs なし―
直腸癌に対する手術として従来から経腹的アプローチが用いられてきたが、骨や周辺臓器に囲まれているという解剖学的制限により、肥満や狭骨盤患者に対する直腸癌手術は困難となることが多かった。欧米から報告された新しいアプローチ法であるtaTMEは、経肛門的操作を中心とする新しい内視鏡外科手術手技であり、肥満や狭骨盤の影響を受けにくいという特徴を有している一方で、尿道損傷など従来の内視鏡外科手術では見られなかった合併症の報告も見受けられる。手術手技の簡便性と安全性、術後合併症発生頻度の観点からtaTMEの意義についてディベートを行っていただきたい。
縫合不全をゼロにする最適な胃管―亜全胃管 vs 細径胃管―
食道癌切除後の胃管再建において、再建経路、吻合部位や方法などその成否を左右する様々な要素が存在する。本セッションでは胃管作成の手法に焦点をあて、縫合不全をゼロにする最適な方法を模索する。胃切除範囲を最小とし、胃壁内の血流の温存が可能である亜全胃管か、胃管の長さを優先した細径胃管か、短期合併症と長期的なQOLの観点から最適な胃管とはどのような胃管であるかをディベート形式で議論していただきたい。
噴門側胃切除術後再建法―食道残胃吻合 vs 食道空腸吻合―
胃癌に対する定型手術は胃全摘もしくは幽門側胃切除であるが、近年早期胃癌に対する機能温存胃切除として噴門側胃切除が多く施行されるようになってきた。噴門側胃切除後再建法は観音開き法をはじめとする食道残胃吻合とdouble tract法や空腸interposition法の食道空腸吻合があり、それぞれの施設で工夫して施行している。逆流性食道炎、胃内容排出遅延、他の術後合併症合併症、長期的な栄養状態、残胃癌の発生とスクリーニングなどの観点から、どの再建法がベストかをディベート形式で議論していただきたい。
Stage I 乳癌に対するセンチネルリンパ節生検―必要 vs 不要―
ACOSOG Z011試験の結果以来、腋窩リンパ節郭清の臨床的意義について様々な議論がなされ、現状のエビデンスをもとにした施設ごとの方針が定まりつつある。センチネルリンパ節生検自体の必要性についても、DCIS症例に対しては臨床医の判断により行うべきではないとガイドラインに明記されるようになった。本セッションではさらに一歩進めて、Stage I乳癌に対してセンチネルリンパ節生検が必要か否かについて、現状あるエビデンスを踏まえディベート形式で議論していただきたい。議論を通じて、必要性を決めるバイオマーカーや臨床病理学的因子についてなど、今後どのような治療・診断の戦略をとり、臨床試験を行えばよいかなどについても明らかにしていただきたい。
大腸癌多発肝転移に対する治療戦略―術前治療 vs 切除先行―
近年、転移性大腸癌に対する分子標的治療薬を含めた薬物療法の発展により奏効率の上昇と生存期間の延長が得られている。一方、大腸癌肝転移に対する唯一の根治的治療は未だ肝切除であり、肝切除前治療としての化学療法の有効性については明らかではない。特に多発肝転移は切除後に早期再発する症例も少なくない為、多発肝転移に対する治療戦略として術前治療を行うか、切除先行を選択するかは各施設の判断によるのが現状である。本セッションでは"外科的切除可能"な大腸癌多発肝転移に対して、"術前治療先行"と"切除先行"に分かれてその治療戦略についてディベート形式で議論をする。応募にあたり、“各施設における切除可能の定義”および、“転移個数その他の条件により術前治療先行と切除先行の方針が変わる場合にはその条件”を抄録内で明確に提示していただきたい。
下部進行直腸癌に対する予防的側方郭清 ―あり vs なし―
我が国では古くから、下部進行直腸癌の治療成績向上のために予防的側方郭清が行われ、JCOG0212試験において側方リンパ節転移の無い下部進行直腸癌に対する予防的側方郭清の意義が示された。JCOG0212試験では側方リンパ節転移ありの定義が1cm以上と大きかったことを考慮すると、実際には画像上リンパ節腫大を認めなかった場合には、側方リンパ節郭清を省略できるとの考え方もある。また、化学放射線療法を併用することにより、予防的側方郭清を省略する戦略も考えられる。術後合併症・晩期合併症発生頻度、長期予後の観点から予防的側方郭清の意義についてディベート形式で討論を行っていただきたい。
シンポジウム
初診時切除不能胃癌に対するconversion surgeryの意義【International】
初診時にすでに遠隔転移や高度の多臓器浸潤を有し、切除不能と診断されたStage IV胃癌は極めて予後不良であるが、近年、様々な集学的治療が奏効し、根治を目指したconversion surgeryが可能な症例が散見されるようになってきている。初診時切除不能胃癌の治療成績を真に向上するために、適切な化学療法レジメンの選択基準、conversion surgeryの手術適応、時期、術式など様々な側面からconversion surgeryのあり方と臨床的意義について論じていただきたい。
非外傷性疾患に対するダメージコントロール手術の役割
循環動態が不安定な外傷患者では、初回手術において動脈性出血や腹腔内汚染のコントロール、一時的血流再建のみを行い、臓器機能再建を後日行うというダメージコントロール手術の有用性が示されている。この手術戦略は、外傷患者のみならず非外傷性疾患においても有用であることが示唆されているが、適切な対象疾患・病態、適応判断の方法・タイミングなどについて、臨床データに基づいて論じていただきたい。
非小細胞肺癌に対する積極的縮小手術の適応と限界【International】
小型肺癌に対する積極的縮小手術の妥当性を検証するために、JCOG肺がん外科グループはJCOG0804 /WJOG4507L、JCOG0802/WJOG4607L、JCOG1211の3つの臨床試験を行い、それらの臨床試験の最終解析結果が待たれている。一方、実臨床においては、主にすりガラス成分を有する小型肺癌を対象として積極的縮小手術がすでに広く行われている現状がある。しかし近年、積極的縮小手術後の局所再発例の報告が散見されるようになってきた。どのような腫瘍なら安全に縮小手術を適用することができるのか、あるいはどのような腫瘍には縮小手術を行うべきではないのか。これまでの各施設の経験を基に、現時点での積極的縮小手術の適応について議論していただきたい。
我が国の肝移植医療の実力と未来【International】
我が国で生体肝移植が開始され30年が経過し、その成績は、黎明期に比して格段に向上した。近年、脳死肝移植も年間60例程度行われ、生体肝移植に遜色のない成績をあげている。一方、年間肝移植数は生体・脳死とも増加せず、移植を受けられずに命を落とす多数の肝硬変肝不全患者が存在する。我が国の肝移植は、限られた臓器で確実に患者を救命する「実力」が求められている。本セッションでは、海外の移植先進国からその発展の道のりと最新の「実力」を発表いただき、国内施設からは患者選択、移植適応、手術手技、術後管理など確実に移植を成功させるために我が国で培った「実力」を発表していただくとともに我が国の肝移植の「未来」が数・質ともに発展するための方策を示していただく。
革新的医療機器の研究開発における外科医の役割
外科学の進歩には革新的医療機器の登場が不可欠といえる。新たな医療機器が臨床現場に届けられるまでには、プロトタイプの作成から動物実験等でのPOC確立、製品要求仕様の決定、量産化、医療規格試験、治験、薬事申請などの手続きがあり、機器の種類によっては、医師のトレーニング環境の整備やサポート体制の確立、学会と連携した認定の制度までも整える必要がある。広く普及するためには保険上の扱いも重要な要素である。事業化が企業主導で進められる中で、研究開発全体における外科医の関与はいかにあるべきか、特に国際競争力が求められる革新的医療機器について、国内外の実例に基づいて議論していただきたい。
小児腸管機能不全の最新知見
小児腸管機能不全に対する治療は今日でも困難な領域であり、外科的治療戦略、腸管管理、栄養管理、小腸移植など様々な試みが報告されている。さらに次世代に向けて腸管神経叢再生を目指した細胞治療や、オルガノイドを用いた新規治療開発など多様な観点からtranslational researchが進んでいる。本セッションでは、小腸移植など現行の先端的治療の現状や問題点、課題解決にむけた基礎的・臨床的研究を展望するとともに、この分野における基礎研究の最先端の知見を紹介し、腸管機能不全の基礎研究から臨床までの将来的展開につき議論していただきたい。
外科感染症に起因する敗血症の治療戦略
敗血症(sepsis)は2016年にsepsis-3として新しく定義し直された。各種診療ガイドラインにおいては早期診断・治療およびバンドルの概念が強調され、現況では“1時間バンドル時代”を迎えたと言っても過言ではない。敗血症の原因となる病態は様々であるが、手術後も含め、外科感染症に起因する場合も多い。重症感染症の一つの病態である敗血症の治療戦略の根幹が、全身管理と抗菌化学療法であることに異論はないが、感染巣コントロールも非常に重要である。外科医にとって極めて重要な病態である敗血症の治療戦略、今後解決すべき課題を診療ガイドラインにとらわれずに論じていただきたい。
Immuno-Oncologyが変えるがん集学的治療【International】
近年、免疫チェックポイント分子が癌免疫逃避機構のメカニズムの一つとして解明された。そして、免疫チェックポイント阻害薬を用いた多くの臨床試験の結果により大きな飛躍を成し遂げ、実臨床において肺癌や胃癌で抗PD-1抗体療法が認可、さらには高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌へと適応が拡大された。本セッションでは、がん局所の微小環境など腫瘍免疫に関する基礎研究の報告やそれらを応用した新規治療開発、症例選択に有用なバイオマーカー研究、臨床における使用実績など、基礎および臨床的観点からその有効性や課題について論じていただきたい。
乳癌に対する革新的な手術・局所療法とその適応【International】
我が国における乳癌手術療法は、当初の拡大手術から放射線照射を併用した乳房温存手術の確立や乳房再建術の発展、さらにセンチネルリンパ節生検の導入など、過去30年間めまぐるしく変遷している。今後も縮小化・低侵襲化への流れは継続すると予想されるが、これを加速させるための新たな治療戦略や医療機器の工夫が必要である。早期乳癌に限らず、局所進行乳癌などについても応用可能な革新的な治療法を提示していただき、その適応や薬物療法との補完関係など、臨床への実装に向けた課題について論じていただきたい。
大動脈瘤に対する枝付き・開窓型ステントグラフト術の妥当性【International】
我が国で腹部と胸部下行大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術が保険収載されてから10年以上が経過し、その低侵襲性と良好な成績から標準的治療の一翼を担うまでになったが、適応となる大動脈瘤は中枢、末梢側に正常な血管があることと、ステントグラフト留置部に重要な分枝血管がないことが前提であり、低侵襲性治療のニーズが高い弓部瘤、胸腹部瘤、腸骨動脈合併腹部大動脈瘤は分枝血管の存在のためステントグラフト術の適応とならないジレンマがあった。近年、様々な工夫により瘤を空置しつつ分枝血流を温存するデバイスや術式が開発され、完全血管内治療が行われ始めている。本セッションではこれら大動脈瘤に対する枝付き、開窓型ステントグラフト術(自作を含む)の最新の知見を紹介し近未来の展望を論じていただきたい。
直腸癌根治術―最新の標準術式を求めて―【Video】
直腸癌に対する手術として、従来から開腹手術と腹腔鏡下手術が行われてきた。最近では経肛門的低侵襲手術やロボット手術などの新しい内視鏡外科手術も登場し、直腸癌に対する手術手技は多様化しているが、それぞれの術式の妥当性に関するエビデンスは確立していないのが現状である。根治性と機能性を追求した手術手技の工夫やその標準化は、治療成績の向上のために必要である。根治性と機能性の観点から標準術式と考えらえる術式とその治療成績を提示していただき、直腸癌手術に対する最新の標準術式とは何かについて論じていただきたい。
T4食道癌集学的治療におけるsalvage surgeryの適応と成績【International】
食道癌に対する根治的化学放射線療法後のsalvage surgeryにおける安全性、長期成績は放射線療法の技術的進歩などにより徐々に向上しているが、初診時cT4食道癌に対する根治的化学放射線療法後の遺残・再発病変に対するsalvage surgeryについては依然多くの課題を残している。cT4食道癌に対するsalvage surgeryは高度の侵襲を伴い、手術手技の難易度、術後合併症発生率、手術関連死亡率いずれも高い。そこで本セッションではcT4食道癌の治療成績向上を目指した集学的治療の総合戦略や、salvage surgeryを安全に施行するための放射線照射野・線量の工夫、手術適応、時期、術式や周術期管理における課題など諸問題について論じていただきたい。
腹腔鏡下・ロボット支援肝胆膵外科手術の可能性と限界【Video】
2016年4月に腹腔鏡下肝切除は亜区域切除と区域切除、葉切除、三区域切除が、腹腔鏡下膵切除は膵頭十二指腸切除術とリンパ節郭清を伴う膵体尾部切除術が保険収載され、多くの施設において一定の条件下施行可能となった。これまでの各施設におけるそれぞれの術式に関する技術的な工夫、定型化された術式のポイントをビデオで提示していただき、その成績などについても提示していただきたい。また、ロボット支援手術の肝胆膵領域における現状と新たな展開に向けた課題についても議論していただきたい。
画像情報を駆使した下部消化管手術
近年の医療画像技術の進歩には目覚ましいものがあるが、大腸外科領域における医療画像技術の応用は未だ発展途上である。直腸癌に対するMRI画像診断、血管造影を中心としたナビゲーションサージェリー、ICG等の蛍光色素による術中リアルタイム内視鏡画像など様々な報告が散見されるが、術前診断や治療成績をさらに向上させるための工夫が必要である。医療画像技術の応用の実際とその結果を提示していただき、画像の精度や画質の標準化の工夫、今後解決すべき課題について示していただきたい。
がんゲノム医療は外科手術を変えるか
個々のがん患者の遺伝子プロファイルから、個別化治療を行うがんゲノム医療がいよいよ本格的に導入されようとしている。現段階では、こうしたゲノム医療の主目的は、分子標的治療薬が適応となる特定の遺伝子異常を検出することであるが、ゲノム情報と共に様々な臨床情報が蓄積されることで、いわゆる標準的治療に対する感受性や有用性を評価し、患者の層別化と治療の最適化が可能になると期待されている。その中には、外科手術の有用性や必要性も含まれる可能性も指摘され、初回診断時にがんゲノム検査を行うことで、手術的治療の有用性や術後補助化学療法の必要性についての情報が得られる時代が到来しようとしている。本セッションでは、そうした観点からがんゲノム医療と外科手術の融合について、将来展望を含めて論じていただきたい。
肝門部領域胆管癌切除限界の再考
肝門部胆管癌に対する技術的な切除限界については、少なくとも我が国や限られた世界のハイボリュームセンターでは見解がほぼ一致している。一方でBorderline resectableと言える症例や強い予後因子と言われているリンパ節転移を有する患者に対する腫瘍学的観点から見た切除の意義については検討の余地がある。手術技術が高い我が国では切除適応とされている患者に対して世界では肝移植治療も施行されているが、このような状況のなかで今後の肝門部胆管癌に対する切除限界をもう一度再考していただきたい。
パネルディスカッション
食道胃接合部癌の手術―アプローチ法・郭清範囲・再建術式のdecision making―【International】
近年、我が国においても欧米と同様に食道胃接合部癌が徐々に増加している。その腫瘍局在の特性から、食道胃接合部癌の局所制御においては食道外科・胃外科の垣根を取り払った総合的能力を有する上部消化管外科医による治療介入が必要となってきている。特に食道胃接合部癌に対する手術におけるアプローチ法、リンパ節郭清範囲、再建方法、術中の方針転換などについてはいまだに多くの課題を残している。各施設の食道胃接合部癌に対する手術術式ならびに治療成績を提示していただき、何を指標としてどのように術式選択をしていくべきかを討議していただきたい。
長期成績からみた膵癌に対する集学的治療の評価
遠隔転移を伴わない局所進行膵癌に対し、化学療法、放射線療法、手術を組み合わせた集学的治療が行われ、膵癌の成績向上が図られている。術後の補助治療の有用性に関しては多くの有用な報告がなされている。一方、Resectable®膵癌やBorderline Resectable(BR)膵癌に対する術前治療やconversionを目指したUnresectable(UR)膵癌に対する治療としての化学療法や化学放射線療法などのレジメンや期間などは様々である。本セッションでは遠隔転移を伴わない局所進行膵癌に対する集学的治療の現状と長期予後を含めた治療成績を提示し、今後解決すべき課題について論じていただきたい。
亜区域切除以上の腹腔鏡下肝切除術の短期・中期成績【International】
2016年4月からの診療報酬改定に伴い、腹腔鏡下肝切除術の適応が拡大され3年以上が経過した。術前全例登録制度のデータより大肝切除等、拡大適応された腹腔鏡下肝切除の短期死亡率は極めて低いことが証明され、我が国における同分野のself regulationによる安全な導入が確認されたところである。この状況において本セッションではさらに詳細に亜区域切除以上の大肝切除に対する腹腔鏡下手術の短期~特に中期成績を提示いただき、腹腔鏡下手術にどのようなメリットがあるかを具体的に議論していただきたい。
マスギャザリング・大量殺傷テロにおける外科医の役割
我が国において、ラグビーワールドカップ2019、東京オリンピック・パラリンピック2020など世界的規模のイベントの開催が予定されている中で、マスギャザリング・大量殺傷テロ発生時における対応は重要課題の一つである。日本外科学会も学術団体としての使命を全うすべく、東京オリンピック・パラリンピック2020開催中の救急災害医療体制に係るコンソーシアムの構成団体の一つとして活動している。爆傷、銃創などへの対応など、大量傷病者発生時における外科医の役割は大きい。このような緊急事態に遭遇した場合の初期診療、緊急手術対応、共有すべきピットフォール、今後解決すべき課題などについて論じていただきたい。
局所進行大腸癌に対する治療戦略【International】
根治切除が困難と考えられる局所進行大腸癌に対しては、周辺臓器切除も含めた根治的拡大手術、化学療法や放射線治療により腫瘍の縮小を図ってからの根治的切除など様々なアプローチ法が考えられるが、どのアプローチを選択すべきかに関するエビデンスは確立していないのが現状である。拡大手術を行った場合には、術中偶発症、術後合併症を回避するために様々な注意が必要であると同時に、機能性の維持についても留意する必要がある。局所進行大腸癌に対する治療戦略を提示していただき、安全かつ根治性を担保した治療のあり方、共有すべきピットフォール、今後解決すべき課題について論じていただきたい。
甲状腺・副甲状腺疾患に対する内視鏡手術の可能性と限界
2016年度から甲状腺副甲状腺良性疾患が、2018年度から甲状腺悪性腫瘍の内視鏡手術が保険収載され、今後さらに各施設で適応が広がってくることが予想される。しかしながら頸部内視鏡手術の適応、アプローチ方法については腫瘍の大きさや位置、癌の進行度によって異なり、一定の基準が定まっていないのが現状である。本セッションでは、手術時の様々な状況に対応する手技のポイントを提示していただき、手術の安全性はもとより癌の根治性を担保した手術のあり方、共有すべきピットフォール、今後解決すべき課題について論じていただきたい。
大腿膝窩動脈病変に対する再血行再建の治療戦略【International】
2018年に我が国でも薬剤溶出型バルーンが薬事承認され、大腿膝窩動脈病変に対する血管内治療のツールとして金属製ステント、薬剤溶出ステント、ステントグラフトと併せて全ての主要デバイスが臨床現場で使用できるようになった。これら血管内治療は低侵襲であることと、外科医以外でも施行できることからその施術数は急速に増加し、同時に再血行再建の機会も増えている。2次治療として血管内治療と外科手術があるが、いずれの場合も初回治療に比べて不利な状況である。本セッションでは急増している大腿膝窩動脈病変に対する再血行再建における最適な治療法、工夫や戦略、そして成績を論じると共に初回血管内治療の適応と限界に関しても議論していただきたい。
長期遠隔成績を見据えた低侵襲心臓手術の術式選択―MICSからロボット支援手術へ―
MICSの導入により、整容上のメリットである小切開心臓手術が可能となるとともに、胸骨正中切開に伴う手術患者の身体的負担が軽減され、入院期間の短縮が可能となってきた。また、内視鏡による拡大視効果により、より精細な解剖の観察が可能となり、手術成績の向上が期待されている。ロボット支援下手術では、アームの操作性が良いことより、より精密な心臓手術が可能になると期待されている。一方で、これらの手術では、定型手術では認められないような補助循環や片肺換気に伴う合併症の発生が問題となっており、適切な適応基準の確立が求められている。また、心臓手術においても、短期成績のみならず、長期遠隔成績においても定型手術に対する非劣性を証明することが求められている。本セッションでは長期遠隔成績を見据えた低侵襲心臓手術の術式選択について議論していただきたい。
外科手術と放射線治療―共存か競合か―
外科手術の局所制御力を補う目的で、術前・術中・術後に放射線治療を併用する集学的治療が様々な領域で行われている。放射線治療により腫瘍縮小や局所再発予防が期待される一方で、創傷治癒遅延などの術後早期合併症や腸炎や肺臓炎といった晩期合併症に対する注意も必要となる。総合的な観点から放射線治療は外科手術と共存すべきか、あるいは競合しているのか議論の分かれるところである。各領域における放射線治療を含めた集学的治療の意義と今後の方向性、安全かつ根治性を担保した手術のあり方、共有すべきピットフォールなど解決すべき課題について論じていただきたい。
炎症性腸疾患に対する手術―タイミング・アプローチ法・再建術式のポイント―【Video】
近年の炎症性腸疾患患者の増加により、専門病院でなくても炎症性腸疾患に対する手術を行う機会が増えているが、未だに比較的な稀な疾患であり専門病院で行われている工夫が十分に浸透していないのが現状である。炎症性腸疾患に対する手術は、手術成績を向上させるための術式の工夫、術式選択、周術期管理、クローン病においては再燃や長期予後を考慮した手術手技など考慮すべき点が多い。炎症性腸疾患における様々な状況に対応する手技のポイントをビデオで提示していただき、共有すべきピットフォール、今後解決すべき課題について論じていただきたい。
ロボット支援手術は内視鏡外科手術を凌駕できるか―食道癌・胃癌―【International・Video】
2018年4月にロボット支援手術12術式が新たに保険収載された。食道癌手術においては手ぶれのない精緻な操作によって反回神経麻痺の回避が期待され、胃癌手術では人の手関節よりも自由度の高い鉗子の関節機能により膵液瘻を中心とした術後合併症の軽減が期待されている。その一方で、現在の内視鏡外科手術はすでに標準化され、完成された術式となっているのも事実である。本セッションでは、果たしてロボット支援手術は食道癌・胃癌手術に対する内視鏡外科手術の短期・長期成績を超えられるのか、さらには、その限界を超えるためにはどのような技術が必要とされるのかという視点に立ってビデオを供覧しながら議論していただきたい。
先天性胆道拡張症術後遠隔期の問題点と対策
先天性胆道拡張症は小児、成人ともにみられる古典的な外科疾患であるが、近年の内視鏡手術の普及に伴い、世界的にも手術戦略のパラダイムシフトが起こっている。胆道拡張のない症例に対する標準的治療戦略や、再建における肝管空腸吻合と肝管十二指腸吻合の優劣に関しては現状では小児領域と成人領域でコンセンサスが形成されていない。内視鏡手術において将来的な発癌母地である胆管の切除範囲をどこまで確実に決定できるか関しても議論が分かれる。本セッションでは手術後遠隔期合併症の回避に主眼をおいて現状の問題点を俯瞰し、小児・成人領域双方のエキスパートによる包括的な議論を行い、本症の手術術式に対するコンセンサスの確立を目指したい。
我が国における脳死移植の課題と将来
改正臓器移植法の施行から10年が経過しようとしている。我が国の脳死移植においては、脳死下臓器提供数の不足をはじめ解決すべき課題が山積している。臓器のallocationシステムの在り方、procurementのシステムや技術的改善点、マージナルドナーの選択基準、移植手術・術後管理の工夫など我が国の脳死移植医療をさらに一歩前進させるために解決すべき諸課題について、心臓、肺、肝臓、膵臓、小児の各臓器移植の実臨床の現場で活躍されるエキスパートの先生方に論じていただきたい。
がん周術期栄養管理は短期成績・長期予後を改善するか
がん治療において、栄養を保つことの重要性は広く認識されている。特に、がん周術期において、短期成績を良好に保つためには栄養管理が必須であり、これらの短期成績は長期予後にも影響することが報告されている。一方、治療としての周術期栄養療法が、がん治療の短期成績・長期予後を改善するという確実な科学的根拠は十分得られていないのが現状である。現時点における周術期栄養療法のエビデンス、今後の可能性、解決すべき課題について論じていただきたい。
進行肺癌の集学的治療―腫瘍減量手術の再考―
進行肺癌に対する集学的治療は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新規薬物療法が急速に発展・多様化しつつある中で、近年大きく変化している。腫瘍の遺伝子、分子病態的特徴を理解し、個々に最適な治療を提供する、“Precision Medicine” を実践する時代になり、集学的治療における外科治療の役割も再考すべき時にある。ここ数年でOligometastatic Diseaseに対する研究報告が多くなされ、外科治療と新規薬物療法との併用療法は、切除不能とされた進行肺癌の予後を改善させうる有効な集学的治療となる可能性がある。また、症例によっては、これまで適応なしとされてきた腫瘍減量手術も薬物療法と組みわせることで有効な治療戦略となるかもしれない。進行肺癌に対する実際の治療経験を踏まえ、集学的治療における外科治療の有効性、適応、今後解決すべき課題について議論していただきたい。
高齢患者に対する肝胆膵高難度手術の適応と限界
近年、高齢者を対象に肝胆膵高難度手術を施行する機会も増加しつつある。一方で多くのデータベース解析において直近10年の肝胆膵高難度手術後死亡率はさらに改善傾向にある。これは高齢者でも全身状態が良い患者を選択して、より安全な手術と術後管理を提供していることによるものと考えられるが、本セッションではそれをより定量的、客観的に提示いただきたい。また短期成績だけでなく、長期成績や術後QOL、患者満足度なども提示いただき、超高齢者に対する肝胆膵高難度手術のあり方、意義を議論していただきたい。
ワークショップ
局所進行食道癌・胃癌に対する内視鏡外科の手術手技【Video】
我が国に内視鏡外科手術が導入されて30年余りが経過した現在でも、局所進行食道癌・胃癌に対する内視鏡外科手術の妥当性に関するエビデンスは確立しておらず、臨床研究として行われているのが現状である。局所進行食道癌・胃癌に対する内視鏡外科手術においては術中偶発症、術後合併症を回避するために様々な注意が必要であると同時に、腫瘍学的な観点から長期成績を少しでも改善する手技の工夫も必要である。局所進行食道癌・胃癌における様々な状況に対応する手技のポイントをビデオで提示していただき、安全かつ根治性を担保した手術のあり方、共有すべきピットフォール、今後解決すべき課題について論じていただきたい。
領域横断的チームで挑む高難度手術【Video】
内臓動脈瘤や内臓虚血、悪性腫瘍の合併切除、臓器移植、外傷などで、外科的血行再建手術や血管内治療が求められることは少なくない。また、泌尿器、生殖器や肝臓腫瘍の下大静脈進展は根治切除の追求により長期予後が期待できる例も見受けられる。外科領域での領域横断的チームによる外科的治療のみならず、内視鏡医や放射線科医などとの協力でしかなし得ない高難度手術または治療を、状況に応じた再建経路、各施設の工夫を中心に、ビデオで供覧していただきたい。
術中イメージング―モニタリングを駆使した最新手術―
CTやMRIなどいわゆる医用画像をもとにした3次元情報による術前シミュレーションはもはや日常臨床として活用されている。術前のシミュレーションにとどまらず、近年は術中リアルタイムナビゲーション、血流や神経活動のモニタリング技術が急速に発達してきている。しかしこれらの技術には未だ多くの課題が残されている。本セッションでは臓器や分野を問わず、術中のリアルタイム情報を活用した最先端技術の現状と将来への期待を論じていただきたい。
管腔内視鏡・腹腔鏡合同手術の最前線
Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery(LECS)は胃粘膜下腫瘍に対し、内視鏡と腹腔鏡により至適な胃切除範囲を決定し、胃切除および縫合閉鎖を行う術式で、腹腔鏡下胃局所切除の術式の一つとして報告された。近年、原法を進化させたLECS関連手技も多く報告されている。胃粘膜下腫瘍のみならず、胃癌にまで適応を広げつつある。また、十二指腸や大腸といった他臓器への応用も臨床研究として行われている。本セッションでは、LECS関連手技における各施設の工夫や成績、またLECSのさらなる展開について議論していただきたい。
胆嚢・総胆管結石治療困難症例に対する内視鏡外科手術適応限界の再考
近年、胆石胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術、総胆管結石に対する内視鏡下採石術など、胆石関連疾患に対する低侵襲治療はめざましい発展を遂げている。一方で、上腹部手術の既往などにより胆嚢周囲に高度の癒着を認める症例や、上部消化管再建術後で内視鏡的に胆管へ到達困難であったり、内視鏡的に採石困難な総胆管結石症例は、腹腔鏡下手術の難易度も高く、依然として開腹による胆管・胆嚢アプローチを試みる施設も多い。本セッションでは、従来の鏡視下手術では困難とされた胆嚢摘出術症例・内視鏡下採石困難な総胆管結石に対する外科的採石症例を提示いただき、胆嚢・総胆管結石治療困難症例に対する内視鏡外科手術の適応と限界について再考したい。
ロボット支援手術は内視鏡外科手術を凌駕できるか―直腸癌―【Video】
2018年にロボット支援下直腸癌手術が保険収載されたが、従来の内視鏡外科手術を凌駕するようなロボット支援下手術の妥当性に関するエビデンスは確立していない。ロボット支援下手術を行う利点と難点を把握し、適切な症例選択を行っていくことが安全なロボット支援下手術の導入には不可欠である。また、若手外科医の教育的観点からの配慮も必要である。直腸癌に対するロボット支援下手術の手技のポイントをビデオで提示していただき、安全かつ根治性を担保した手術のあり方、共有すべきピットフォール、今後解決すべき課題について論じていただきたい。
大腸癌局所再発に対する外科治療 【International】
局所再発大腸癌は切除により根治可能な場合もある一方で、切除により大きな機能喪失が避けられないことが多く、化学療法や放射線治療を活かした集学的アプローチにも注目が集まっている。局所再発大腸癌に対する手術を行う場合には、術中偶発症、術後合併症を回避するための注意が必要であるとともに、腫瘍学的な観点から長期成績を少しでも改善する手技の工夫も必要である。集学的アプローチに伴う晩期合併症への注意も必要である。外科治療の工夫や非外科手術も含めた結果を提示していただき、局所再発大腸癌に対する外科治療の意義や今後の課題などについて論じていただきたい。
遠隔転移を伴う大腸癌に対する集学的治療の実際
大腸癌に対する化学療法を活かした集学的アプローチの進歩により、従来では根治切除不能と考えられた症例が根治切除可能となることが期待できるようになってきた。しかしながら、診断時に根治不能であった症例に集学的治療後に根治切除を行うことにより生存期間の延長が得られるというエビデンスがないのが現状である。手術手技の限界を補い、生活の質を維持し、長期成績を改善するための工夫が必要である。肝転移に対するconversion therapyや、複数臓器に渡る転移の根治を目指した集学的治療の結果を提示していただき、現時点における集学的治療の位置付けと意義について論じていただきたい。
高齢化社会における弁膜症手術の適応と限界【International】
弁膜症の外科手術の成績向上に伴い、その適応は高齢者に拡大されてきており、長期の遠隔成績も良好なものが得られている。また、手術のリスクが高い患者でも、TAVIやMitraClipなど経カテーテル治療の拡大とともに超高齢者に対しても積極的に治療が行われるようになった。一方、我が国における医療費の急激な増大は深刻な問題となっている。命の尊厳を延命にのみ求めてきた医療から、人間そのものの尊厳を見据えた医療も議論すべき時期にきている。状況によっては、治療を行わず病と共に行きることも提示されるべき一つの選択肢であり、高齢化が進む社会において、患者の望む命の尊厳に向き合いながら進歩していく弁膜症治療の適切な適応とその限界について議論していただきたい。
先端技術を駆使した呼吸器外科手術
2018年4月、Da Vinci によるロボット支援手術が保険収載され、多くの施設でロボット支援手術が開始されるようになった。また、近年の技術革新により、8K画像や人工知能(AI)など様々な新技術が登場し、呼吸器外科領域でも術前・術中診断、術中イメージング、手術支援、手術教育などでの活用が期待されている。先端技術は今後の呼吸器外科手術を一変させる可能性を秘めている一方で、臨床的なベネフィット、有用性は果たしてあるのかという意見も少なくない。新技術はどのような状況でどう用いれば我々呼吸器外科手術の質を向上させることができるのか? 先端技術の今後の可能性、解決すべき課題について議論していただきたい。
発生学・拡大視局所微細解剖に基づく最新の手術手技【Video】
低侵襲手術として導入された腹腔鏡手術、胸腔鏡手術、ロボット支援手術は、同時にその拡大視効果によって、局所微細解剖学の進歩をもたらした。また、人体発生学的考察により様々な臓器や膜構造の系統的理解が進み、合理的な手術手技の開発、定型化が進んでいる。それぞれの領域において、こうした発生学・拡大視局所微細解剖に基づく最新の手術手技をビデオにて供覧していただき、今後のさらなる展望を議論していただきたい。
局所進行膵癌に対する手術手技の工夫と成績【International・Video】
局所進行膵癌に対する手術において、予後を改善するためにR0手術を目指すことは非常に重要である。特に手術先行ではR0切除が困難と想定される、主要動脈に接触する切除可能境界(BR-A)膵癌や局所進行切除不能(UR-LA)膵癌に、化学療法や化学放射線療法を施行していかにR0切除を達成するかは外科医にとって大きな課題のひとつである。R0を達成するための神経叢の剥離・切離の工夫、血管合併切除・再建などを含めた局所進行膵癌に対する手術手技をビデオで提示していただき、予後を含めた各施設の成績を供覧し、論じていただきたい。
我が国のAcute Care Surgeonの将来像
Acute Care Surgeryは、その名前の示すとおり外科学の1分野であり、2005年に米国外傷外科学会(The American Association for the Surgery of Trauma; AAST)によって提唱されたもので、“Trauma Surgery”、 “Emergency General Surgery”、“Surgical Critical Care”を一体として取り扱う新たな外科領域の名称である。我が国において、その担い手であるAcute Care Surgeonがどのような診療領域、専門領域を臨床実践しそのアイデンティティーの確立していくのか、今後解決すべき課題なども含め、我が国におけるAcute Care Surgeonの将来像を論じていただきたい。
大腸疾患に対する新しい手術手技【Video】
大腸外科手術領域では古くから様々な工夫がなされ、術式や手法に人名の付く術式も多い。近年では経肛門的低侵襲手術など他領域では見られないアプローチ法の工夫も報告されている。術中の偶発症や術後合併症を回避し、整容性に優れた新しい術式がさらなる治療成績の向上に必要である。良性から悪性まで大腸疾患に対する新しい手術の工夫とその長所についてビデオを用いて提示していただき、次の時代の萌芽となりうる手術手技について論じていただきたい。
次世代に伝えたい乳癌手術の工夫【Video】
大都市圏以外の乳腺外科医が減少傾向を示し、新たな乳腺専門医の育成が喫緊の課題となっている。本セッションでは第一線で活躍する乳腺外科医が日常的に行っている手術の工夫や新手法など、次世代を担う若手乳腺外科医が継承すべきと考えられるポイントをビデオで提示していただきたい。手技的な面だけではなく、手術に関わる治療方針や診断法、ピットフォールについても議論を深め、さらに若手への手術教育法などについても提起していただきたい。
ハートチームによる心不全治療の実際
以前は急性と慢性に分けられていた心不全の概念が、近年1つの概念としてまとめられてきた。また、外科治療に関しても、左室形成の是非、機能的僧帽弁閉鎖不全に対するインターベンションの適応と方法、経皮的補助循環法(ECMO)に関するcentral ECMOやventingの適応に加えて、新たに導入された補助循環システムとしてのインペラーの使い方、心臓移植を前提とした植え込み型補助人工心臓のdestination therapyへの適応拡大、など心不全治療に対する治療の選択の大きな変革が始まっており、もはや内科単独もしくは外科単独では対応できない状況になっている。本セッションは今後の心不全治療の進歩に寄与することを目的とし、ハートチームとして心不全の治療のアルゴリズムを確立するための議論を深めていただきたい。
進行食道癌・胃癌に対する内視鏡外科手術の治療成績と適応限界
内視鏡外科手術の急速な発展、普及に伴い、その適応を早期癌から進行癌に広げようとする動きが活発化している。その実現のためには、内視鏡外科の利点である低侵襲性を維持しながら、腫瘍学的観点からその妥当性が維持されることが必要であるが、未だエビデンスの確立は十分ではない。進行食道癌・胃癌に対する内視鏡外科手術ついて、各施設での適応、術式を含めた治療戦略を示していただいた上で、短期・長期成績を発表いただきたい。さらに、開胸・開腹手術と内視鏡外科手術の特性に基づき、進行食道癌・胃癌における内視鏡外科の適応限界についても、議論を展開していただきたい。
上部消化管機能温存術式のエビデンス
上部消化管癌手術においては、病期に応じた臓器切除ならびにリンパ節郭清範囲が確立されてきている。その中で、過不足ないリンパ節郭清を実現し、腫瘍学的効果を維持しながらも術後の機能温存を最大限に考慮した術式選択が求められてきている。しかし、現行のガイドラインを含め、機能温存術式に関する指針、それを裏付けるエビデンスは限られているのが現状である。各施設の術後消化管機能を温存するための術式ならびにその術後成績に基づき、食道癌・胃癌に対する機能温存手術としての理想形を示していただきたい。さらには、現在の標準とされている治療からさらに切除範囲を縮小し、機能温存を実現するための治療戦略を裏付けるエビデンスについて発表いただきたい。
外科的侵襲・炎症と癌の転移再発
侵襲的治療手段を用いる外科領域において、外科侵襲に対する生体反応を理解しそれを制御することは極めて重要である。生体反応には、遺伝子・細胞レベルでのcell signaling、タンパク合成、細胞間接着から組織・臓器レベルにおける炎症反応、免疫応答、内分泌系反応、組織修復/再生などがあげられる。近年、癌の外科的治療において、侵襲に伴う術後の合併症や過剰な炎症反応・免疫応答は、たとえ根治切除後であったとしても循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)や微小環境に残存する癌細胞の生着・増殖を助長し、予後に影響を及ぼす可能性が示唆されている。本セッションでは、外科的侵襲に伴う生体反応と癌の転移再発について各領域で行われている基礎から臨床研究にいたるまで様々な視点で議論をいただきたい。
再生医療の実現―外科医に期待される役割―
iPS細胞の開発以来、再生医療研究は急速に発展し、臨床応用への期待は大きく膨らんでいる。一方で、再生医療が細胞や組織を主に用いる性質の治療法であることから、実際の担い手が外科医であることが認識され、再生医療実現化における外科医の役割の重要性が指摘されてきている。本セッションでは、再生医療研究の実現化のために、外科医の果たすべき役割に焦点を当てながら、基礎的な研究成果からトランスレーショナルな研究、臨床試験段階の技術も含めて、外科学の多くの分野から最近の研究成果を発表いただきたい。
血行再建を伴う進行癌切除術の手術手技【Video】
外科的切除は今日においても固形癌に対する根治的治療の主軸であるなか、さまざまな癌に対して進行度に合わせて手術手技の低侵襲化が開発されている。一方で時に高度局所進行症例においては根治切除のために主要血管合併切除・再建を伴う拡大手術が必要となり、血管外科技術や臓器移植技術との融合により安全性を確保した難易度の高い手術手技が求められる。本セッションでは適切な患者選択の上で、局所進行癌に対していかに安全に血管処理が行えるかをビデオとともに示していただき、現在の血管合併切除を伴う癌根治手術の到達点につき議論いただきたい。
転移性肝癌に対する肝切除の位置付け
一般に転移性肝癌に対する肝切除の是非は原発臓器により異なるとされてきた。つまり大腸癌や神経内分泌腫瘍の肝転移に対しては外科切除により良好な成績が得られることが知られる一方、これまで切除の意義が明らかではなかった胃癌・乳癌・卵巣癌や胆膵癌などの肝転移に対しても、適切な患者選択によっては一定の治療効果が報告されつつある。癌種毎の生物学的特性の理解と分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする薬物療法の発展とともに、転移性肝腫瘍に対する手術治療の位置付けも変化しつつある。本セッションでは様々な原発臓器癌の転移性肝癌に対する現在の肝切除の位置付けについて発表いただきたい。