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第118回日本外科学会定期学術集会

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演題募集(公募)

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特別企画

5.外科医のトレーニング―技術の継承とは―

近年、多くの外科手術で技術革新が進み、手技の高度化がもたらされた結果、従来型の「指導者の手技を見て学ぶ」教育法では十分な技術の習得が困難な状況にある。さらに、内視鏡外科の普及により、本来、基本とすべき開腹・開胸による手術を経験する機会が激減するなど、外科学発展の根幹を支えるべき手術手技の伝承に関し警鐘が鳴らされている。1980年代より欧米を中心に様々なシミュレーショントレーニングが発展してきたが、本邦では使用できるモデルの制限など多くの問題を抱えている。
本セッションでは各領域で行われている手術手技トレーニングの現状とその成果について発表いただき、技術をいかなる方法で伝承すべきかを議論いただきたい。

6.女性外科医のキャリアパス

昨今、女性医師の割合が増加しており、外科医も例外ではない。日本の外科学界を支えるにあたり、女性外科医が就労を楽しく継続し、キャリアアップを図ることは必要不可欠である。一方、日本は少子高齢化に直面しており、子供を産み育てることも次世代育成に必須である。この一見、対立するような事象をいかに両立し、こなしていくかを若い世代に指導することは外科学界の指導的立場にある者の重要な責務の一つである。後輩の指導に当たった方、ロールモデルとなりうる方、医局を運営する方、自身が子育てと外科医を両立している方、そのパートナーである方などから広く演題を募集する。

外科学の新知見

2.がんの早期診断に向けて

発癌や再発あるいは治療感受性の早期診断法の確立は癌死数逓減のために極めて重要である。近年、血中遊離DNAや細胞外小胞(EV)など、担癌状態の病態生理解明と相俟ってNGSおよびシングルセル解析をはじめとする技術革新が興り、血液・体液を検査対象とした確定診断すなわち“リキッドバイオプシー”が臨床応用へ近づきつつある。本セッションでは、ゲノム変異、エピゲノム(メチル化・non-coding RNA)、メタボローム、EV、動物・生物の診断応用などのモダリティのうち、特に低侵襲かつ精緻で既存の方法を凌駕するfeasibilityの高いアプローチ、あるいは新しい夢のある研究について紹介いただきたい。

3.再生医療の最前線

近年、ES細胞、iPS細胞や間葉系幹細胞などに代表される多能性幹細胞を用いた再生医療が我が国において急速に発展し、これまでは治療不可能な難治性疾患に対して一部臨床応用段階にある(iPS細胞を用いた網膜色素細胞や心筋細胞など)。今後、再生医療は外科治療においても切除による機能喪失を補う新たな、そして重要な治療オプションになると考えられる。
本セッションでは、近未来の外科治療を見据えた再生医療について、先鋭的な基礎研究、トランスレーショナルな応用研究、臨床研究など最前線の成果を提示していただき、再生医療の現状と課題さらに今後の展望を明確化することによって外科学のパラダイムシフトを大いに議論していただきたい。

4.ビックデータを活用した臨床研究の意義と問題点―臨床研究指針改定後1年を経て―

外科診療にかかわるビッグデータとして、NCD(National Clinical Database)やJACVSD(日本成人心臓血管外科手術データベース)をはじめ、がん登録システム、DPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースなどが存在する。昨年度の定期学術集会では、「ビッグデータ時代の外科医療」と題するシンポジウムが開催され、外科領域におけるビッグデータ研究の成果が紹介された。本セッションでは昨年度に引き続き、様々なビッグデータ解析による外科臨床研究の演題を幅広く募集し、ビックデータを活用した臨床研究の意義と問題点、および今後の展望について、さらに考察を深めたい。

5.ロボット手術の近未来【International】

内視鏡手術支援ロボットの進歩は目覚ましいものがあり、消化器外科、呼吸器外科領域のみならず、心臓外科領域においても薬事対象となり、さらには、泌尿器科領域以外の保険収載も期待されている。そのため、今後、ますます多くの領域で、様々なタイプの手術において活用されていくことが予測される。本セッションではロボット支援手術の近未来について、現時点での実際に行われている手術手技、成績をご発表いただき、さらに、どのように適応を拡大していくのか、領域を超えて横断的に議論していただきたい。

複数領域セッション

1.大腸癌多発肝転移に対する手術戦略【International】

肝切除の技術向上、腹腔鏡下大腸癌手術の流布、大腸癌に対する化学療法の進歩などにより、多発肝転移をともなう大腸癌に対する手術戦略は、その適応を含め大きく変化し、その成績も長足の進歩を遂げつつある。本セッションでは同時性大腸癌多発肝転移に対する治療法選択につきその順序を含め検討していただき、各症例におけるベストプラクティス選択のための基準を示していただきたい。

2.がん患者に対する栄養療法の意義と可能性

がん患者では代謝・異化の亢進、食事摂取量の減少から低栄養状態が生じることが多く、手術や補助療法の遂行の妨げとなりその成績を悪化させることもしばしばである。栄養療法には、低栄養状態の改善・予防に加え、がんに伴う炎症反応の制御など生体反応の調節も期待されている。本セッションでは、がん治療のさらなる進歩のために、1)がん患者に対する栄養療法施行によってどのような効果が得られたか臨床的な知見、2)がん患者に対して期待される新しい栄養療法の可能性について臨床データや基礎研究データ、を報告いただきたい。従来推奨されてきたがん患者に対する栄養療法のありかたが本当に正しいのか見直す研究にも注目したい。

3.胃癌肝転移の治療

胃癌肝転移は長年の間胃癌治療の中で克服すべき大きな問題の一つである。同時性・異時性いずれにおいても化学療法が選択される場合も多く、外科手術の適応は胃癌治療ガイドラインのCQで一定の見解が述べられているが明確には定まっていない。本セッションでは、いくつかの治療モダリティが考えられる中で、これまでの治療成績および今後考えるべき臨床試験などについて議論していただきたい。

4.肝肺転移を伴う大腸癌の治療戦略

進行大腸癌の治療成績は、近年、有効な全身化学療法の開発・普及とともにめざましく改善してきているが、その中でも頻度が多い「肝および肺への転移を伴う大腸癌」に対しての治療戦略はどう変化してきたか。
術後補助化学療法の有効性、あるいは切除不可能な進行大腸癌への化学療法後のconversion surgeryなども報告されてきているが、本セッションでは、肝・肺転移を伴う進行大腸癌に対して、集学的治療の一環としての積極的外科治療の位置づけについて考えたい。

5.呼吸器外科と心臓外科の合同手術と棲み分け

腫瘍性病変の大血管合併切除や肺移植などの呼吸器外科手術では、隣接臓器を扱う心臓(血管)外科医と合同手術を行う機会が少なくない。その際、どこまで呼吸器外科医が行い、どこから心臓外科医にお願いするのか。外科医や施設による方針の違いがあるのは当然だが、○○は自分でやるが××はお願いする―などの判断のポイントや合同手術のピットフォールに関して幅広く演題を募集する。また指定演題として心臓外科側から見たポイント、ピットフォール、呼吸器外科医への助言・提言を予定している。

シンポジウム

1.IBD外科治療の現況と展望

IBDの内科治療の多様化に伴いIBDの外科治療の適応の決定も複雑化してきている。IBDの外科治療にも様々な低侵襲なアプローチが応用されつつある。潰瘍性大腸炎では回腸嚢炎や瘻孔、回腸嚢機能不全などの術後合併症のリスクファクターの同定や対処法の確立が重要である。また、三期分割が必要な症例や一期手術が可能な症例をどのように選別するかは重要な課題である。クローン病に関しては再手術に対するリスクファクターの同定や外科的・内科的対処法の確立が重要である。IBD外科治療の適応やアプローチ、手術手技やその合併症のリスクや対処法などIBD外科治療の現況と展望に関する各施設の取り組みに関する発表を期待している。

2.大腸癌腹膜播腫に対する治療戦略【International】

大腸癌腹膜転移は肝転移や肺転移よりも予後不良とされる。肝転移や肺転移については治癒切除可能なかぎり切除が望ましいとされるのに対し、腹膜転移に対する切除の意義は未だ定まっていない。欧米の専門施設では腹膜切除と術中腹腔内温熱化学療法の組み合わせが積極的に行われているのに対し、わが国ではあまり盛んではない。また、転移再発大腸癌に対する近年の分子標的薬を含めた全身化学療法の進歩は目覚ましいが、腹膜転移に特定したその治療効果はあまり論じられていない。本シンポジウムでは、大腸癌腹膜転移(腹膜偽粘液腫は除く)に対する治療戦略についてさまざまな角度・視点から論じていただきたい。

3.高度進行胃癌に対する集学的治療

早期胃癌は内視鏡治療および低侵襲手術の発展により十分な根治性と良好なQOLが期待されている。しかし高度進行胃癌の予後は化学療法の進歩とともに改善がみられるもののいまだ予後不良である。高度進行胃癌に対する集学的治療の中での外科手術の位置づけについても考えるべきことは多い。本シンポジウムでは、各施設での取り組みにおける治療成績と問題点、今後の課題や今後試みるべき治療法についての知見を紹介していただきたい。

4.食道胃接合部癌に対する治療戦略【International】

食道胃接合部癌増加が全世界的に知られている。しかしながら、その外科治療は標準化されているとは言い難い。特に、Siewert 2型に対しては、食道癌として右開胸食道切除、胃管挙上再建、あるいは胃癌として経裂孔的に胃全摘が行われている。しかしながら、その2術式はまったく異なるものである。最近、わが国では後向きの全国調査が行われ、3000をこえる症例が集積、検討された。その結果から(暫定的であるが)、リンパ節郭清として意義ある領域は、下縦隔、No. 1,2,3,7,9,11pとなった。このような結果をふまえ、本シンポジウムでは、食道胃接合部癌に対する外科治療、集学的治療を未来に向けて論じていただきたい。

5.膵手術と短期成績【Video・International】

膵切除の短期成績は向上したが、合併症率は高く臨床的膵液漏は10―20%程度に遭遇し、入院期間の延長や術後化学療法の開始の遅延を余儀なくされる。各施設で膵手術の術後合併症を減らす術式上の工夫を理論的背景と短期成績とともに動画で具体的に提示していただきたい。主に膵液漏に伴う合併症を減らすための工夫を歓迎する。なお膵腸吻合における膵液漏率は正常膵に限定した数字も提示していただきたい。

6.TAVIおよびスーチャレス弁の現状【International】

重症ASに対するTAVIは高リスク例を対象に登場したが、少なくとも海外では中リスクにも適応が拡大されている。最近では低リスクを対象とした国際治験が開始され、急速な適応拡大とデバイスの進化が心臓外科医にとって脅威になっている。一方、最近、薬事承認されたsutureless弁は、手術時間の短縮や小切開手術の簡略化など心臓手術に大きな飛躍をもたらすと期待されているが、決して開胸や体外循環を不要にするものではない。本シンポジウムでは、各施設におけるAS治療の現状やそれぞれの弁の長所と課題を明らかにした上で、現時点での適切な治療選択の考え方などを示していただき、AS治療に関し今後の方向性を考える場としたい。

7.術後合併症予防・早期回復のための周術期管理の工夫

ヨーロッパにおけるERAS®、米国におけるfast track surgery、日本におけるESSENSEなどの術後早期回復をめざした各種プログラムが臨床の現場で広く取り入れられるようになった。しかし、これらのプログラム導入が本当にわが国において術後合併症・早期回復に有効であるのか、各種術式で十分に検証されていない。また、これらとは異なる独自の工夫を導入し良好な成績を得ている施設もあろう。さらには、より良い管理を目指した動物実験などの基礎研究の意義も大きい。本シンポジウムでは、これらの臨床、基礎研究の成果を報告いただきたい。

8.先天性嚢胞性肺疾患の外科治療

先天性嚢胞性肺疾患は近年出生前診断例が徐々に増加している。そのため、胎児診断に基づく出生後の治療方針の決定が重要となっている。また、生後の手術治療の最適な時期についても議論がされてきたが、内視鏡手術導入の有無により、手術時期が異なることも考慮すべきポイントである。本シンポジウムでは、これら最近の状況に基づいて総合的観点から、先天性嚢胞性肺疾患に対する最新の治療方針について議論していただきたい。

10.開腹肝切除の手術手技とその工夫【Video】

近年、腹腔鏡下肝切除術が積極的に臨床応用されているが、肝切除の基本は開腹肝切除であり、開腹でないと難しい術式も多くある。巨大腫瘍例、癒着高度例、血管合併切除・再建例、亜区域切除例、など依然開腹術式により安全性が担保される可能性が高い。開腹術式、腹腔鏡下術式の各々の工夫が相互に術式のレベルを上げることに繋がるであろう。本シンポジウムでは、各施設での開腹肝切除の基本手術手技とその工夫をVideoで供覧して頂き、改めて開腹肝切除のポイントを議論し、更なる手術手技の改善を図りたい。積極的な応募をお願いしたい。

11.脳死下または複合臓器移植の最前線【Video・International】

脳死下複合臓器移植として、頻度は少ないものの、我が国でも肺同時移植、肝腎同時移植、肝肺同時移植が施行されており、肝小腸同時移植なども今後施行される可能性がある。本シンポジウムでは、脳死下複合臓器移植を経験された施設から、チーム体制の構築、術前準備の工夫をお示しいただいた上で、そのグラフト摘出手術および移植手術のポイントにつきvideoにて呈示していただきたい。

12.癌外科治療におけるバイオマーカー研究のインパクト

これまでにがんの悪性度・患者予後を規定するマーカーや抗がん剤、放射線、分子標的薬に対する感受性を予測するマーカーなどさまざまなバイオマーカーが報告され、がん患者の治療戦略に多大な貢献がなされてきた。がん外科治療の現場ではがん関連遺伝子、採血データ、PETなど画像検査を含むさまざまなバイオマーカーを総合的に活用することで外科治療の適否だけでなく、サルベージ症例・コンバージョン手術症例に対する適切な手術時期の判定や補助療法のあり方、早期再発診断、治療効果予測などを可能としている。本シンポジウムではがん集学的治療のなかでの外科的介入の意義や適応に影響を与えうる最新のバイオマーカー研究に関する知見を発表していただき、併せて今後の展望、実臨床への応用に向けた取り組みについても提示していただきたい。

13.次世代のための呼吸器外科トレーニングシステム

外科医志望の医師が減少する中で、効率的で魅力的な呼吸器外科トレーニングシステムの構築が望まれる。胸腔鏡手術の手技から開胸手術の手技まで体系的なトレーニングシステムが望ましく、肺の部分切除、区域切除、肺葉切除、リンパ節郭清から縦隔腫瘍の切除、感染症の手術、胸壁合併切除、気管支形成、肺動脈形成など多岐にわたる内容のトレーニングが必要である。世界をリードする我が国の呼吸器外科を継承する若手外科医の育成について考えたい。

14.直腸癌に対するMRI診断の役割【International】

直腸癌に対するMRIはNCCNのガイドラインで術前検査として記載され、欧米では標準的な検査として広く行われている。MRIの撮影により深達度やリンパ節転移、他臓器浸潤、壁外静脈侵襲(EMVI)、CRMの予測や化学放射線療法の効果など幅広い臨床情報が術前に得られ、治療方針や術式の決定に非常に有用であるとされる。本シンポジウムでは本邦でも普及しつつあるこの直腸癌のMRI診断に関する各施設の最先端を発表していただき、その有用性と問題点につき論じていただきたい。

15.胸腔鏡手術における新しいアプローチの工夫【Video・International】

近年の胸腔鏡手術は約25年の経過を経て、最近では、従来の複数の皮切での手術手技と対比させて、シングルポートの手技や細径鉗子の手術などが報告されてきている。それぞれのアプローチにはそれぞれの工夫があると思われるが、本シンポジウムではこれらの新たなアプローチについての工夫について検討したい。

16.進行肝細胞癌に対する集学的治療は進歩したか

進行肝細胞癌に対する推奨治療は明確ではなく、肝切除・TACE・TAI・RFA・肝移植・化学療法・分子標的薬などが施設判断により採用されている。さらにこれらを組み合わせた集学的治療の成績も未だ十分とは言えない。本シンポジウムではStage III~IV Bの進行肝細胞癌に対する集学的治療の成果を提示して頂きたい。
さらにStageごと、因子ごと(腫瘍数、腫瘍径、脈管侵襲、リンパ節転移、遠隔転移)に層別化し、有効な治療方針について議論を期待したい。

17.急性胆嚢炎に対する治療戦略【International】

急性胆嚢炎に対しては、我が国発のガイドラインに基づいた治療方針が普及しつつあるが、施設ごとの診療体制による制約も存在し、また早期手術困難例、腹腔鏡手術の適応に対する方針も施設ごとに様々である。さらに、ENGBDやEUS-BDなど、新たな手技の発達に伴い、治療体系も今後変わってゆく可能性がある。本シンポジウムでは、各国、各施設の成績の成績から急性胆嚢炎治療の現状を把握し、次期ガイドラインに反映可能なコンセンサスの形成および検討課題の抽出を目指したい。

18.センチネルリンパ節生検における残された課題の解決に向けて

臨床的腋窩陰性例に対するセンチネルリンパ節生検は広く普及し、乳癌の腋窩に対する標準的なアプローチとなっている。しかし、センチネルリンパ節転移陽性時リンパ節郭清は省略できるか、術前化学療法にて画像上消失したリンパ節に対する対応はどうするか、などまだまだ解決すべき問題が残っており、データの集積、コンセンサス形成が必要である。

19.弁輪破壊を伴う重症感染性心内膜炎の手術【Video】

感染性心内膜炎(Infective Endocarditis: IE)は、弁膜に感染創を有する敗血症の一つである。早期診断と適切な抗生剤による内科治療が治療の基本であるが、院内死亡率は15~22%と高率である。抗生物質に反応せず、弁破壊による心不全の進行や弁輪に及ぶ感染に対しては外科治療が必要となるが、弁輪破壊を伴う重症例に対する外科治療は依然としてチャレンジングであり、局所再発や弁周囲逆流などの術後合併症予防が成績向上の鍵となる。
本シンポジウムでは、弁輪破壊を伴う重症感染性心内膜炎における感染巣廓清範囲、再建材料、再建方法など、外科治療成績向上のための工夫をvideoで供覧いただき、その適応と有用性に関して討論したい。

20.新生児開心術の工夫

本邦における新生児開心術の成績は近年改善しているが、2014年の胸部外科学術調査によると、大動脈スイッチ術の死亡率は6.7%、総肺静脈還流異常症の死亡率は13.3%、ノーウッド手術の死亡率は15.2%と依然改善の余地がある。新生児開心術においては、1)新生児特有の組織の未熟さに伴う周術期管理、2)大動脈弓部を形成する際の術式の工夫、3)総肺静脈還流異常症における術式の工夫、4)肺動脈絞扼術、両側肺動脈絞扼術などの初回姑息術の導入方法、など施設によって様々な方法がとられている。これらを中心に、我が国における新生児開心術の治療について広く議論を深めていただきたい。

21.肝胆膵外科高難度手術の総括―安全性と成績―

肝胆膵外科手術は高難度・高危険度の手術が多いが、我が国では世界に冠たる高い安全性を確立した。その一方でhigh volume centerでの高い死亡率が報道されたことも記憶に新しい。安全性を確保しつつ根治性を求めるうえでいままでとられた具体的な対策とその成績につき、拡大肝葉切除・血管合併膵切除・肝膵同時切除など特に危険度の高い術式に絞って発表いただき、それらの安全性と成績のさらなる向上のための方法を示していただきたい。

22.大動脈基部再建術の術式選択

大動脈弁輪拡張症に対する大動脈基部再建術には、人工弁(機械弁、生体弁)を使用する術式と自己大動脈弁を温存する術式がある。後者には、David手術(Reimplantation法)とYacoub手術(Remodeling法)があるが、David手術では人工血管にバルサルバ洞様のふくらみを持たせるための人工血管や工夫が報告されており、Yacoub手術ではbasal ringを縫縮するための種々の方法が考案されている。また大動脈弁閉鎖不全症に対する形成術も重要なポイントである。これらの術式の優劣について、遠隔予後を含む手術成績、最新の画像診断による血行動態の評価など多角的に論じていただきたい。

23.TEVAR・EVARにおけるIFUとデバイス選択

腹部・胸部大動脈瘤に対するステントグラフトが本邦で認可されて10年が経過し、長期成績の報告も散見される。この間にデバイスも進化し、それぞれの長所短所を鑑みて選択されてきたことと思われる。デバイス間の比較は、適応自体が異なる傾向があることから困難であるが、個々の解剖学的特徴に応じてデバイス選択をするエビデンスが求められている。またIFU(instructions for use)の適応に関する因子は、解剖学的にデバイス選択、しいては手術の適応自体も左右することになり、重要である。
これらの解析を中心にTEVAR/EVARの成績と適応・方針について議論いただきたい。

24.画像シミュレーションの現状と課題―ブレイクスルーはあるのか?―

診断画像の進歩と情報処理の開発により画像シミュレーションは近年長足の進歩を遂げてきた。一方でそのシミュレーション画像の外科領域での利用法においては、他領域と比べていまだ十分に活用しきれているとは言えない。診断能の向上・治療法の選択・術中ナビゲーションなどにおいて、画像シミュレーションの最近の到達点とその活用法を示していただくとともに、今後の方向性やそのためにさらに必要な技術などにつき発表していただきたい。

25.食道癌治療成績向上のための治療戦略

食道癌はいまだ難治癌のひとつとして考えられている。一方、手術療法においてはより低侵襲な技術、薬物療法においては多剤併用や新規薬剤の導入、放射線療法においては毒性軽減のための工夫などそれぞれの領域で進歩が認められる。本シンポジウムにおいては、外科治療を中心にして、集学的治療の新展開や術式の工夫など、食道癌成績向上につながるあらたな取り組みを紹介していただきたい。

27.乳癌診療のための新しい乳癌画像診断

乳房温存術、乳房全摘術、皮膚温存乳房全摘術、乳頭乳輪温存乳房切除術など乳癌に対する術式の選択肢は広がってきた。トモシンセシス、造影MMG、ABUS、乳房PETなど新しいモダリティが各種出てきた中、その広がり診断における実力やdense breastが多い日本人女性での術後の経過観察、術前化学療法の評価など診療の場面での位置づけにつき議論したい。

パネルディスカッション

1.肝門部領域胆管癌に対する治療戦略【International】

肝門部領域胆管癌に対する外科手術は高難度であり、特に脈管侵襲を伴う進行例では周術期合併症の頻度も高く、高い周術期死亡率も報告されている。そのため、切除適応、切除可能限界については施設間の温度差がいまだ存在すると考えられる。本パネルディスカッションでは、各施設の切除適応およびその適応での切除成績に関する発表を通じて、コンセンサスが得られる点、逆に今後検討すべき点を明らかにしていただきたい。

2.非浸潤癌に対する治療

非浸潤性乳癌は予後良好といわれているが、それ故にそのマネージメントについては解決すべき課題が多い。例えば、自然史、画像診断、術前診断方法、温存の意義、断端陽性の取り扱い、センチネルリンパ節生検の意義、薬物療法の意義、放射線療法の意義、病理学による確定診断の問題、などが挙げられる。さらには最近では切除不要な非浸潤癌の存在の問題が提起されている。本パネルディスカッションでは治療がメインであるが、それに関わる種々の課題について議論していただきたい。

3.直腸癌に対する腹腔鏡手術の新展開【Video】

直腸癌に対する腹腔鏡手術はその拡大視効果に加えて、3Dや4K内視鏡システムの開発により奥行のある骨盤内での手術操作が容易に行えるようになり急速に普及している。また難易度が高いとされてきた側方リンパ節郭清も各種シーリングデバイスの導入により、僅かな出血量で施行することが可能となっている。腹腔鏡手術は、開腹手術では「見えなかったもの」を「見える」ようにしてわれわれの骨盤解剖の知識を飛躍的に増やしてくれている。
一方、標準化一歩手前の技術としては、reduced port surgery, NOSE(natural orifice specimen extraction), TAMIS(transanal minimally invasive surgery)によるDown-to-up TME, 完全鏡視下操作によるISRなどの新しい試みをあげることができよう。
本パネルディスカッションでは、各施設での先進的な取り組みをビデオで供覧していただき、現時点での適応と限界、さらには今後の展望についてディスカッションしていただきたい。

4.食道癌根治術における至適アプローチ―開胸 vs 胸腔鏡 vs 縦隔鏡―【video】

食道癌根治術において様々なアプローチが利用されており、各施設、各術者によって異なるものと思われる。すなわち、開胸、胸腔鏡、縦隔鏡によるアプローチであり、どれが至適かは定まっていない。そこで、本パネルディスカッションではそれぞれのアプローチの特徴(長所、短所)や適応、成績を紹介していただき、今後の食道癌根治術の在り方を検討する場としたい。

5.IPMNとIPNB―診断と治療のアップデート―

IPMNは診断基準、治療方法もinternationalに議論され、確立されつつある。一方、IPMNのカウンターパートとして臨床的、病理学的に似ている胆管内乳頭状病変としてIPNBは提唱された。しかし、IPMNの診断基準、治療方法も改訂のたびに新たな基準が提唱され、まだまだ検討の余地があるのも事実である。さらにIPNBは診断基準が提唱され7年が経過するが施設間で統一されておらず、依然、混沌としている。臨床的に肝内に発生したIPNBはIPMNに病理学的に似た病変が多いが、肝外にはIPMNに似ていない病変も多く見られる。両疾患ともまだまだ診断と治療の改善点が残されている。本パネルディスカッションでは、IPMNとIPNBの診断と治療の最新の知見を発表していただき、更なる病態の解明に役立てたい。積極的な応募を期待する。

6.呼吸器外科手術における画像Navigation

いまや大抵の病院で放射線ワークステーションを使った3D構築が容易に可能となっており、呼吸器外科手術におけるnavigationとしての活用も広がっている。外科医自身が容易に利用できるワークステーションの登場、バーチャル気管支鏡を利用した術前肺マーキング・マッピング技術の出現、そしてコンピューターに強い若い世代の外科医の台頭も、この流れに拍車をかけているかもしれない。こうした画像ナビゲーションの呼吸器外科手術における役割、メリット、新たな利用方法等に関する演題、また逆にこうした技術のデメリット、ピットフォールに関する演題を募集する。

7.これからの急性期外科医・外傷外科医をどう育成するか?

急性期外科(Acute Care Surgery)とは、外傷外科、救急外科、外科的集中治療の3つの領域を担当する新たな診療概念である。外科医にとって、特に外傷診療のOn-the-job trainingを得る機会が極めて乏しいわが国の現状を鑑み、急性期外科医、外傷外科医の育成は喫緊の課題である。本パネルディスカッションでは、育成に係る研修領域やプログラムなど様々な視点からの演題を募集する。

8.局所進行直腸癌に対する集学的治療の最前線

局所進行直腸癌の外科治療においては根治性と機能温存の両立が難しく、集学的治療の必要性が示唆されている。術前の補助療法として化学放射線療法(CRT)が行われるが、その適応や手術術式(鏡視下手術や側方リンパ節の取り扱いなど)には議論の余地が大きい。
また遠隔転移の制御には化学療法が重要であるが、術後の補助療法として行う以外に、CRTの前に行うinduction chemotherapyやCRT後の術前に行うconsolidation chemotherapyなど様々な工夫がなされている。また術前補助療法として放射線療法を伴わないneoadjuvant chemotherapyも試みられている。
本パネルディスカッションでは、各施設での局所進行直腸癌に対する集学的治療の取り組みや今後の展望について議論していただきたい。

9.StageIV大腸癌における原発巣の治療戦略

Stage IV大腸癌の原発巣対する治療においては、症状の有無や転移巣切除の可否によって様々な治療戦略が想定される。転移巣が切除困難あるいは不能な場合の原発巣の取り扱い(外科的切除、人工肛門、ステントなど)、転移巣が切除可能な場合の原発巣切除のタイミングなどに関しては議論の余地が大きい。
またStage IV大腸癌における原発巣の占居部位は臨床的なバイオマーカーとしての意義が近年注目されており、左右大腸癌に対する異なる治療戦略の可能性が示唆されている。
本パネルディスカッションでは、各施設でのStage IV大腸癌における原発巣の治療戦略と今後の展望について議論していただきたい。

10.胃切除後ベストな再建方法は何か?

150年前のBillroth以来、胃切除後の再建法には様々な方法が工夫されてきた。十二指腸を食物が通過する生理的な方法が良いかと思いきや、耐糖能を考慮するとRoux-en Y法が優位であり、肥満手術にも応用されるなど、消化管生理にはまだ不明な点も多々ある。一方、逆流性食道炎、逆流性胃炎など患者のQOL低下や二次癌発生をいかに予防し、患者の栄養状態を良好に保つかも重要な課題である。再建法のみならず、吻合手技、腹腔鏡下手術のための再建法のmodifyの結果を含め、熱い討論を期待する。

11.心不全の外科治療up to date

重症心不全の外科治療として心臓移植は実施数が限定されているものの、わが国の10年生存率は90%という画期的成績を出している。植込み型補助人工心臓はBTTに限定されているものの、優れた遠隔成績が報告されている。今後、DTへの適用や改良されたデバイスの導入によってその恩恵はさらなる広がりをみせると考えられる。しかし、この2つの治療には適合条件や除外条件があり必ずしも全ての心不全患者に適用できない。昨今、新しい重症心不全の外科治療のオプションが開発されてきた。これらを含めて、わが国重症心不全の外科治療の将来展望を含めて広く議論を深めていただきたい。

12.進行神経芽腫の外科治療:Gross total Resection のコンセンサス【video】

近年の神経芽腫に関する知見や集学的治療の進歩により、神経芽腫に対する外科治療の役割は変化している。最近の研究では進行神経芽腫において外科的完全切除は治療成績の向上に寄与しないとの報告が多く、拡大切除による外科的合併症回避の観点から“Gross Toral Resection”を推奨する意見が近年は主流である。
本パネルディスカッションでは、各施設におけるGross Total Resectionの実際について手術方針や手術動画、治療成績などを提示していただき、進行神経芽腫に対するGross Total Resectionについて議論していただきたい。

13.Border line 膵癌に対する腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP-CAR)の意義

進行膵体部癌に対しDP-CARは通常切除不能であるT4膵癌に対しては、切除を可能とし、T3膵癌に対しては、R0切除率を増加させることで予後の改善を目指す術式である。短期的には肝血流や胃血流が低下するため、虚血性胃炎などの合併症を招く恐れが報告されている。現状におけるDP-CARの適応と合併症回避のための工夫を成績とともに提示し議論していただきたい。

14.側方郭清の適応

下部進行直腸癌においてTMEはグローバルスタンダードであるが、側方リンパ節はその切除領域外にあり、転移頻度は20%程度度と決して低いものではない。欧米においては術前CRTが標準療法となっているが、本邦においては現在でも大腸癌治療ガイドラインにおいては下部進行直腸癌における標準治療は側方郭清である。しかし実際には術前化学放射線療法や術前化学療法などの集学的治療の発展もあり各施設においてその適応はさまざまであるのが現状である。一方で新たに、TME+側方郭清に対するTME aloneの非劣性を検討したJCOG0212の結果も公表された。これらを踏まえて各施設における側方郭清の適応について議論していただきたい。

ワークショップ

1.UR膵癌に対する治療戦略

化学療法の進歩により切除不能膵癌の長期予後は延長した。更には症例によって切除可能となるいわゆる“conversion surgery”や“adjuvant surgery”が行われるようになり、予後の延長が報告されている。しかし、腫瘍マーカーが正常化したものの画像的に縮小が得られない症例や遠隔転移が画像的に消失した症例の切除適応に苦慮することはしばしばである。RCTでの検証ではないため、予後の延長が症例選択によるものか切除効果によるものかは不明であるあるが、現状におけるUR膵癌における治療戦略をConversionの可能性の観点から、その至適治療戦略を議論していただきたい。

2.TNM分類第8版が治療戦略に与えたインパクト

2017年1月からUICC-TNM分類第8版を原発性肺癌病期決定のために用いるようになった。近年小型肺腺癌が多く診断され縮小手術が試みられた背景から、旧版のT1a/T1bがTis, T1mi, T1a, T1b, T1cと細分化され、さらに充実成分/浸潤部の径が主腫瘍径を代表することとなった。N因子の定義は変更されなかったがより高い病期に振り分けられた。旧版のM1bは単発転移のM1bと多発転移のM1cに分けられ、oligometastasisに対する治療戦略の差別化を目指している。TNM分類第8版が今後の非小細胞肺癌治療にどのような位置づけをあたえるのか、EBMに基づいた意見を求めたい。

3.胃切除後障害に対する対策

胃切除後においては、自覚症状の有無を別として、何らかの障害があることが多い。小胃症状をはじめとして、栄養状態の低下、下痢、逆流性胃炎、ダンピング、貧血、鉄欠乏、ビタミンB12欠乏、骨粗鬆症、癒着性イレウス、胆石症、残胃癌と枚挙のいとまがない。これらの胃切除後障害をいかにコントロールし、患者にQOLの高い人生を歩ませるかも外科医の大切な仕事である。日常の診療において、胃切除後障害をどのようにコントロールしているか、follow-up法も含め、広く演題を募集する。

4.手術と手術室のイノベーション

外科学の進歩とともに、手術術式も大きく変化、発展してきた。かつての「新たな術式」とは、手術対象の臓器に対する新たな処置法やこれまでの手術器具の改良を伴うものであった。しかしながら、近年の「新たな術式」とは、革新的な医療機器の導入を意味し、医療機器自体も年々高性能化、大型化している。最近では医療情報を介して手術室全体が機器の一部と化していることさえある。本ワークショップでは、現行の最先端の手術術式と、その発展した未来の姿も紹介していただく。発表を聴いた参加者の一人ひとりが、手術現場から新たな術式を創出する「手術と手術室のイノベーション」の担い手になれるような演題を募集する。

5.整容性を考慮した乳癌手術【Video】

乳癌の治療の本質は生存率の向上である。しかしながら生存率を損なわれないようにして乳癌で失われるものを最小限にすることも患者のためには重要である。温存療法は確立さされた術式であるが、その整容性を保つ工夫は施設により様々である。また、シリコンバックを使用した乳房再建術が保険収載された。それに伴い、自家移植を含めた乳房再建症例が増加している。こうした変化に伴い手術適応も含めて新たな課題や問題点が浮上している。videoを通じて各施設の工夫を供覧すると同時に、新たな課題についても考える機会としたい。

6.新TNM分類の本邦大腸癌外科治療への影響

TNM分類第8版が2016年に出版された。大腸癌取扱い規約第9版では病期分類をはじめ大幅にこの新TNM分類が取り入れられることになっている。従来の本邦取扱い規約と大きくことなる新TNM分類の複雑な病期分類、細分化されるStage II、個数のみで分類されるNカテゴリー(N3の廃止)、tumor deposit(N1c)、遠隔転移へのM1c(腹膜播種)の追加などが、本邦大腸癌外科手術、補助化学療法等へ与えうる影響について論じていただきたい。

7.上部消化管癌周術期における予後規定因子

これまでの癌治療ではどのような手術や補助療法を行って生存率を向上させるかが大きな課題であり、一定の成果が挙げられている。昨今様々な低侵襲手術が考案されているが低侵襲ということ自体が予後に与える影響はいまだ明らかではない。周術期の様々な因子(合併症の発生、手術時間、出血量、術後の炎症所見など)および患者サイドの因子(術前の栄養状態や炎症所見など)と予後との関係もまた今後重要な課題となってくる。本ワークショップでは上部消化管癌周術期における様々な因子と予後との関係を十分に議論していただきたい。

8.腹腔鏡下解剖学的肝切除の最前線【Video・International】

解剖学的肝切除は、肝表からの領域同定と、その境界に沿った正確な肝離断が必要不可欠である。開腹肝切除と比較して腹腔鏡下肝切除においては穿刺含め術中超音波の操作などが困難であり、開腹と同じ方法での領域同定や肝離断ナビゲーションが不可能であることも多い。一方で腹腔鏡下手術ならではの視野での手術操作により開腹肝切除にはないメリットも数多く発表されている。解剖学的肝切除における腹腔鏡下手術のメリットを駆使した最新の工夫を、領域同定・正確な肝離断の2点につき発表していただきたい。

9.安全に配慮した高難度腹腔鏡下膵切除【Video】

高難度腹腔鏡下膵切除はすでに保険収載されて2年以上が経過した。日本膵臓内視鏡外科研究会では術前の全例登録では膵頭十二指腸切除術(Lap-PD)の全例登録を推奨している。Lap-PDではしかし、術後10日前後の死亡例が、未だに散見されるところである。一方、開腹PDでの術後死亡は約1%とかなり減少してきているのが現状である。Lap-PDのメリットも十分な意義ついて明らかにされていないのも実情である。本ワークショップでは【Video】を駆使し、誰でも安全にLap-PDの手技を行えるコツを伝授し、その上で開腹PDに比較してメリットは何かを十分に検討していただきたい。

10.外科感染症の予防・早期治療のために今何が求められるか

手術手技とさまざまな手術器材の進歩は、外科感染症の発生予防に大きく貢献している。しかし、ひとたび重篤な外科感染症が発生するといまだにその治療は難しく、予後の悪化につながる。外科感染症を起こさない、起こっても速やかに治すために、何が必要なのか、1)従来までに有効と期待されてきた予防法と治療法の効果の大規模な検証、2)新規に導入されつつある予防法と治療法の合理性と臨床効果、3)臨床への応用が期待される基礎研究の成果、などについて報告いただきたい。

11.進行胆嚢癌に対する集学的治療と新たな治療

進行胆嚢癌の予後はいまだ不良である。症例ごとに治癒切除を目指した拡大切除が行われているのが現状であるが、広範なリンパ節転移例に対する切除適応はあるのか、HPDの適応があるのか、術前治療にbenefitがあるのか、術後補助治療はどうするか、など未解決の点が多い。本ワークショップでは、各施設の治療戦略およびその治療成績を示していただき、今後の問題点を明らかにしていただきたい。また新たな取り組みについても発表いただきたい。

12.Damage Control Surgeryの実際

「ダメージコントロール戦略」は、出血性ショックにより循環動態が破綻しているような重篤な外傷患者の診療において、損傷修復よりも生理学的徴候の破綻阻止に主眼を置いた、救命率向上のための重要な戦略である。生命を脅かす出血の制御と消化管損傷などに起因する腹腔内汚染の制御を行って迅速に初回手術を終了し、集中治療による全身状態の改善後に根治的手術を行うものである。本戦略の一環であるDamage Control Surgeryの実際について、各施設からの演題を募集する。

13.T4食道癌に対する取り組み

T4食道癌に対する集学的治療に対する初期治療は化学放射線療法が標準治療である。一方で、術前の化学療法や化学放射線療法で導入療法(induction therapy)を施行し、その治療効果が得られた症例に外科治療を行う、あるいは根治的化学放射線療法後の遺残、再発に対してサルベージ手術を行う考え方もあるが、未だ満足できる治療成績を得るまでに至らないのが現状である。T4食道癌に対して、より有効な方法は何か、手術方法の工夫、周術期合併症のマネージメントや生存率の面からも検討したい。

14.術前化学療法で乳癌治療は変わるか?

術前化学療法はごく一般的に実施されているものの、その意義が明らかでない部分がある。術前に化学療法を実施しても、術後化学療法と比較して予後を改善する証拠はない。病理学的完全奏功は、長期的な生存率の予測因子といわれているが、確立したものとは言い難い。術前化学療法は温存率の向上に寄与すると言われているものの、その効果が限られている患者群もある。一方で治療の反応性に応じて治療方針を変える試みがなされている。
このような状況のなかで、術前化学療法の適応も含めて、今後の術前化学療法の展望を議論していただきたい。

15.甲状腺微小乳頭癌の自然史の解析と標準治療の構築

近年、先進諸国において甲状腺癌の「過剰診断・過剰治療」が社会問題化している。わが国では世界に先駆けて、浸潤・転移が明らかでない微小乳頭癌のactive surveillanceの前向き臨床試験が行われてきた。その結果に基づき、微小癌のactive surveillanceは現在、日本だけでなく米国のガイドラインにおいても治療選択肢のひとつとして容認されるに至っている。本ワークショップでは、微小癌の標準治療確立のために有用と考えられる自然史についての解析や患者報告アウトカムの検討、診療体制整備など社会医学的観点からの分析を募集し、今後の低リスク甲状腺癌の取扱いの方向性を見極めたい。

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