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第117回日本外科学会定期学術集会

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特別企画

3.若き外科医からの提言 ―わたしたちの将来の外科医療を見据えて―

初期研修制度の導入から、現在は新専門医制度の導入が検討され、若手外科医をとりまく環境は大きく変化してきている。外科に限らず、さまざまな分野で将来を担うのは若者である。ノーベル賞を受賞した研究の仕事は、30歳代以下の若い時の研究である場合も多く、この時期の、自由な発想をもつ若き外科医に大きな機会を与えうる環境、研修制度が必要である。さまざまなキャリアプランがある中でも、若き外科医の知識や技術に加え、情熱や誇り、人間性が将来の外科医療の発展に寄与していくはずである。本セッションでは、才気あふれる若き外科医より自由な視点、発想から将来の外科医療を見据え、外科医の環境や研修の在り方について提言していただき、若き外科医たちの更なる飛躍を期待したい。

考える外科学

1.臓器移植におけるドナー・グラフト年齢を考える

臓器移植における深刻なドナー不足から世界的にも適応拡大が模索されている。高齢ドナーは一般にマージナルドナーとして認識されているものの、移植臓器や脳死・生体の別によって移植後成績に与えるドナー年齢の影響は著しく異なる。そこで、本セッションでは各臓器移植におけるドナー年齢の短・長期的な移植成績への影響の有無や適応上限を明らかにするのみならず、ドナー年齢が臓器移植に与える影響の機序や臓器の加齢の評価法、さらには臓器加齢の影響の克服を目指した最新の基礎的研究をも広く募集し、臓器移植におけるドナー年齢の意味するものを考える。

2.認知症を有する症例に対する心臓血管手術を考える

認知症を有する症例に対する開心術を中心とした手術適応は心臓血管分野において大きな問題である。また、手術に伴う認知機能低下について検証は十分とは言えないが、関係を示唆する報告も散見される。本セッションでは心臓血管領域の患者に認知症の評価を行っているのか?どのような評価と対策を行っているのか?そして認知症を有する症例に対する手術適応や術式選択、さらには術後の認知機能の低下のリスク因子やそのメカニズムについて議論いただきたい。

3.内視鏡手術で覆った開胸・開腹手術の常識を考える

外科手術は、開胸・開腹から鏡視下手術が主流となり、現在は、ロボット手術も多くの施設で導入されつつある。その中で従来、手縫いで行っていた断端閉鎖や消化管吻合などが自動縫合器に取って代わるなど多くの手術操作が劇的に変化したのみならず、手術手技そのものにも影響を及ぼしている。例えば消化管手術においては、吻合における漿膜筋層縫合やRoux-en-Y再建後の腸間膜閉鎖が省略されたり、胆嚢摘出術における胆嚢管遺残などは鏡視下手術では考慮されていないように思われる。本セッションでは従来、開胸・開腹で行われてきた手技の常識の変化について改めて振り返り、その影響について考えてみたい。

4.食道扁平上皮癌におけるfield carcinogenesisを考える

食道扁平上皮癌はupper aerodigestive tractにおける複数臓器にわたる重複癌や食道内多発癌が他の臓器と比較して多く認められ、その発癌のメカニズムとしてfield carcinogenesisが提唱されている。食道癌においてupper aerodigestive tractにおける重複癌、食道という単臓器のなかの多発病巣、上皮内進展のような癌の発生進展の現象を踏まえてfield carcinogenesis のメカニズムを解明するべく、従来考えられていた発癌の常識に捉われない基礎的な研究に基づいた成果を発表、議論いただきたい。

5.H.pylori陰性時代の胃癌の動向と治療を考える

欧米からほぼ20年遅れて、日本を含むアジアでも下部食道腺癌、食道胃接合部腺癌および上部胃癌が増加し始めた。H. pyloriが胃癌発生に重要な役割を担うことが判明してから四半世紀が経過し、多くの知見が蓄積する一方、若年者での陽性率の低下、除菌療法の普及によりH.pylori陰性時代に突入しつつある。そうした時代における今後の胃癌発生や胃癌の局在、特性はどのように変わってゆくのか、基礎・臨床両面から最新の知見を示していただきたい。また、今後増加すると考えられる上部胃癌や接合部癌に対する検診のあり方や診断・治療戦略の方向性と将来展望もふくめ考えていきたい。

6.神経内分泌腫瘍(NET)の生物学的多様性を考える

神経内分泌腫瘍(NET)は2015年にわが国でも診療ガイドラインが作成され、その病態に応じて治療指針が示された。2010年にWHO分類が改訂され、すべての消化管と膵のNETを統一した組織学的分類となったが、一方で原発臓器や腫瘍特性により、機能性と非機能性、Gradeによる悪性度などの多様性が存在する。例えば、膵NETでは産生されるホルモンの違いによって臨床症状ばかりか悪性度も異なる。本セッションでは、各臓器におけるNETの生物学的な共通点、相違点を見出しながら、今後のNET診療の進歩に向けた議論を行っていただきたい。

7.各臓器における上皮内癌(非浸潤癌)および上皮内進展の位置付けを考える

上皮内・粘膜内腫瘍性病変は、臓器横断的な理解が重要である一方、臓器毎にその基準や取扱いが異なる点は各々の癌の発生やふるまいを理解する上で重要である。早期病変である粘膜内・上皮内腫瘍性病変で浸潤がないものは癌と診断しないという見解もあり、実際に乳癌領域における非浸潤性乳管癌で、低グレード病変では外科治療による延命効果はないとする報告がある。一方で、上皮内病変は広範に進展していることも多く、浸潤癌の存在、浸潤癌へ進行するリスクから拡大切除が必要な症例がある。本セッションでは臓器横断的な概念として前癌病変としての意義、病変の取り扱いについて、乳癌に加え、扁平上皮である食道、腺系上皮の胃、大腸、胆道、膵といった各臓器における上皮内癌・上皮内進展の位置付けについて考える。

8.肺扁平上皮癌を再び考える―発生のメカニズム―

肺癌全体の約30%を占める扁平上皮癌の発生機序は腺癌と比較して不明な点が多い。中枢発生の扁平上皮癌は、いわゆるdysplasia-carcinoma sequenceで説明される、気管・気管支上皮細胞の扁平上皮化生からの発生と考えられている。この理論は子宮頸がんにおける発がん過程の概念で広く知られている。一方、近年増加傾向にある末梢型扁平上皮癌における発生メカニズムは、中枢性とは異なるという幾つかの報告もあるが、未だ不明な部分が多い。また肺腺癌に比してDriver gene mutationも少ない。このように多様性を示す肺扁平上皮癌の発生メカニズムについて、口腔や食道といった他臓器の扁平上皮癌の病理との違いも視野に入れて、エキスパートの先生方に発表頂き、このテーマについて深く考えていただきたい。

9.鏡視下手術、solo surgery時代の外科教育を考える

鏡視下手術は低侵襲性の観点から急速に普及してきており、また画面を通した同一視野手術であることから、術者の手術手技に対して手術に携わる全員がリアルタイムにフィードバックを行うことができ、手術の安全性と完成度を高めあえることにつながる。一方、五感を著しく制限されていることから、開胸・開腹手術では見られなかった重篤な合併症をきたし得る。さらに近年では手術手技や機械の進歩によりsolo surgeryの様相が強く、後進への教育を介した継承を行い普及可能な技術にしていくことが困難となってきている。solo surgery時代の外科教育に関して考えていただきたい。

10.小児疾患における‘自然退縮’を考える

自然退縮は稀に見られる興味深い生物学的現象である。しかしながら多くの場合、どのようなメカニズムで自然退縮現象が起こっているかについてはよくわかっていない。神経芽腫は様々ながんの中で自然退縮が最も高頻度にみられる腫瘍としてよく知られ、自然退縮メカニズムを解明するための格好の研究対象となってきたが、そのメカニズムはまだ解明されていない。今回、神経芽腫をはじめとして自然退縮が認められる種々の小児疾患(血管腫、リンパ管腫、神経芽腫、肺嚢胞など)の自然退縮のメカニズムを考えることによって、これら疾患の理解あるいは治療法の開発においても新たな視点を与えるものと期待される。

11.転移性肝腫瘍における原発臓器別特性と治療のあり方を考える

転移性肝腫瘍において、大腸癌では積極的な切除が行われ予後延長効果が得られるようになっている。また、胃癌の肝転移は切除することで少数ながら長期生存をする症例があることが報告されている。一方で食道癌や乳癌の肝転移は全身転移の一部と考えられ、肝切除術が施行されることは少ない。このように同じ肝転移でも、原発臓器により切除や化学療法の効果が経験的に異なることがわかっている。この理由として肝臓という同一転移先であっても腫瘍の生物学的特性が異なることが挙げられる。本セッションでは、各原発臓器から肝臓へ転移する転移メカニズムと原発臓器の腫瘍特性を考慮した転移性肝腫瘍に対する治療のあり方について考える。

シンポジウム

1.大腸肛門疾患に対する手術の最前線【International/Video】

近年、大腸癌に対する腹腔鏡手術はめざましい進歩を遂げている。難度の高い下部直腸癌や横行結腸癌症例も増えている。また、炎症性腸疾患は増加しており、各種免疫調節薬や抗TNF-α抗体製剤が導入されているにも関わらず手術件数は減っていない。さらに、肛門には器質性疾患や機能性疾患など様々な病態が存在し、便失禁や直腸脱、直腸瘤といった治療に難渋する症例も多い。本シンポジウムでは良性・悪性を問わず大腸肛門疾患に対する実臨床での巧みな手術手技を発表していただき、併せて今後の展望についても提示していただきたい。

2.局所進行食道癌に対する集学的治療【International】

局所進行食道癌に対して、術前の化学療法や化学放射線療法で導入療法を行いDownstageした後に手術を行う選択肢もある一方で、根治的化学放射線療法による完全寛解を目指し、遺残・再発症例に対してSalvage手術を検討する考え方もある。近年の照射法の進歩や新たな抗癌剤のプロトコールもその成果が報告されている。また、浸潤臓器の合併切除を積極的に行い良好な成績を報告されている施設も見受けられる。そこで、本シンポジウムでは外科治療、放射線療法、化学療法等を駆使した集学的治療の現状と将来展望について発表いただきたい。

3.胃癌に対する腹腔鏡下D2郭清のコツとピットフォール【International/Video】

胃癌治療ガイドラインにおいて、胃癌に対する腹腔鏡手術はStage IBまでが推奨されている。また、cN(+)またはT2以深の腫瘍に対してはD2郭清を行うことが必要とされ、確実なD2リンパ節郭清が予後に大きく影響を及ぼす可能性がある。しかし、腹腔鏡下手術におけるD2郭清は難易度が高い手術手技であり、各施設で様々な工夫を行っているところである。本シンポジウムでは、安全・確実にD2郭清を行うための腹腔鏡の利点を生かしたコツと腹腔鏡手術ゆえのピットフォールを示し、議論していただきたい。

4.安全性と残膵機能の両立を目指した膵消化管吻合【Video】

膵切除における膵消化管吻合は、膵液瘻という克服すべき合併症のため、様々な方法が試され各施設で試行錯誤されてきた。近年high volume centerでは、再建法の工夫によりISGPF gradeB/Cが数%という良好な成績が報告されている。長年、外科医が苦しめられてきた重篤な膵液瘻の克服が現実味を帯びているなか、それらの再建法の長期的な残膵機能は保たれているのか、我々にとって短期的にも長期的にもベストな再建法は何なのか、議論していただきたい。

5.我が国の人工心臓治療の現況と展望【International】

欧米では1990年代に小型の植込み型補助人工心臓(VAD)が臨床に登場し、安定した長期補助が可能となっている。当初、心臓移植への橋渡しが主目的であったが、ここ数年でdestination therapy(DT)が適応の半分を占めるようになってきている。我が国では2011年以降現在までに4種の植込み型VADが保険適用となり、重症心不全の治療体系は大きく変わってきている。しかしながらVAD治療においてすべてが植込み型の適応になるわけではなく、体外式の目的や適応も良く理解して有効に使い分けることは重要である。現時点でのVADの治療成績を基に、いかに重症心不全治療の成績を向上させていくか、また我が国においてDTをどのように導入していくのか議論していただきたい。

6.肺癌手術における気管・気管分岐部再建【International/Video】

気管分岐部再建は胸部外科学術調査によると本邦で年間約10例しか実施されていない。T4N0-1に代表されるこれら局所進行肺癌は手術適応といえども、実際手術を実施している施設は限られている。どこまで切除して気管、気管支は寄るのか、二連銃が良いのか、端側吻合がよいのか。授動の必要性と方法はどうしたら良いのか。明日からの手術に役立つよう、気管・分岐部再建手術時の注意点と工夫をエキスパートに提示していただきたい。

7.Precision Medicine―bench to bedside―【International】

遺伝子発現プロファイルは、がんの個別化医療を実現するための重要なアプローチであるが、乳癌領域においてはcDNAマイクロアレイを用いて内因性サブタイプが特定され、臨床的意義のある分類であることが示された。近年、次世代シーケンサーの登場により、DNA-塩基多型、小規模の挿入・欠損、構造的変化コピー数変化、さらには遺伝子の転写に影響するエピゲノム、mRNAなどの解析が可能になった。これにより個人ゲノム情報を中心とした多様な患者データを統合解析することで疾患特異的な個別化医療だけでなく、潜在的な患者群に対する発症予防も包括した概念として「Precision Medicine Initiative」が提唱された。新たな個別化治療へ繋がる基礎研究に加え、個人ゲノム情報を分子診断マーカーとして利用するPrecision Medicineが外科診療や抗がん剤治療に与える影響について発表いただきたい。

8.肝切除におけるシミュレーションおよびナビゲーション技術の最前線【Video】

肝切除を施行する上で3次元画像解析を用いた術前シミュレーションは肝臓外科に欠かせないツールとなっており、技術革新とともに様々な方法が報告され、腹腔鏡手術にも応用されるようになっている。また位置センサーを用いたリアルタイムナビゲーションやICG蛍光法などのナビゲーション技術も進歩してきている。本シンポジウムでは、各施設で行われている術前シミュレーションと術中ナビゲーションに関する最新技術を供覧していただき、確実性・安全性を追求した肝切除術の最前線について発表していただきたい。

9.日本と諸外国における生体肝移植の現状【International】

わが国では2010年に改正臓器移植法が施行されたが、2014年の時点で生体肝移植が463例、脳死肝移植が45例と、依然として生体肝移植が主体となっており、脳死肝移植に関しては年間40例程度を推移している。このようにわが国では生体肝移植が主流であるが、諸外国においては、アメリカやオーストラリアでは脳死肝移植が90%以上を占め、台湾、韓国においても脳死肝移植が30%となっている。本企画では我が国と諸外国における生体肝移植の現状や、治療成績の向上への取り組みなどについて発表していただきたい。

10.肝門部胆管癌手術のコツとピットフォール【Video】

肝門部胆管癌の治療の第一選択は外科切除であり、治癒切除が唯一の長期生存を期待し得る治療方法であるとされる。しかしながら、その解剖学的な特性から根治切除のためには、正確な腫瘍進展範囲の評価に基づいた切除範囲の決定を必要とし、手術操作の中では肝動脈や門脈合併切除再建などの高難度の手術手技を必要とするため、それぞれの症例に応じた治療戦略が必要とされる。本シンポジウムでは、肝門部胆管癌に対する各施設での治療戦略と手術についてビデオで供覧していただき、肝門部胆管癌手術のコツとピットフォールを示していただきたい。

12.Best resultを目指した乳癌手術 【International】

根治性と整容性、機能性は乳癌手術の最大の命題である。一次再建の保険適応後は乳房切除と再建によって整容性の優れた乳房を得ることが可能となったが、部分切除でも整容性と根治性を保つことが可能と考えられる場合でも安易に乳房切除と再建に流れている感も否めない。また乳房皮膚の温存(Skin-sparing mastectomy)や乳頭乳輪の温存(Nipple-sparing mastectomy)、さらにセンチネルリンパ節転移陽性の場合での腋窩郭清の適応には一定の見解は得られていない。そこで患者の満足も考慮したBest resultを目指した乳癌手術について討議したい。

13.ビックデータ時代の外科医療

ビッグデータ解析ではこれまでのデータ規模では明らかに出来なかった新知見を得ることが可能と考えられている。医療の現場ではビッグデータの活用により疾患や異常の早期発見、予測等が可能になると期待されいる。外科診療の分野ではNCD(National Clinical Database)、JACVSD(日本成人心臓血管外科手術データベース)、がん登録システムなどの大規模データベースが存在するが、その運用、意義、成果について十分議論されていない。本シンポジウムではビッグデータ解析により得られた外科診療に大きな影響を与えうる演題を募集し、ビッグデータと外科医療の今後について理解を深めたい。

14.後天性三尖弁閉鎖不全症に対する治療戦略

三尖弁閉鎖不全症はその多くが左心系疾患に伴う二次的なものであり、欧米では左心系の介入により良くなるものと考えられてきた。しかしながら近年二次性三尖弁閉鎖不全症のある症例で、左心系の単独手術のみ行ったものは、40%以上で三尖弁逆流が増悪し生命予後に関与すると報告され、二次性三尖弁閉鎖不全症に対する積極的な外科介入がされるようになってきた。それに伴い様々な形態の形成用リングも本邦に導入されている。本シンポジウムでは後天性三尖弁閉鎖不全症の外科治療の中長期成績を基に本邦に適した手術適応と治療戦略を議論していただきたい。

15.肺癌外科治療は進歩しているのか―外科治療による予後改善を評価する―

肺全摘に始まった肺癌の外科治療は解剖学的切除による肺葉切除、縦隔郭清を標準手技として肺癌根治性を追求してきた。進行肺癌に対しては心大血管などを含む隣接臓器合併切除や胸膜肺全摘術などの拡大手術も行われる一方で機能温存のための気管支形成術なども手技が確立し予後の検討がなされてきた。最近になって診断技術の向上によってより早期の小さな病巣の発見が可能となり、縮小手術として肺区域切除や郭清範囲の縮小も図られている。さらに分子標的薬をはじめとした薬物療法や定位照射など放射線照射の急速な進歩により外科治療の役割も次第に変化している。これまでの外科治療の成績を検証し、今後の肺癌外科治療がどのよう展開してゆくのか、提示していただきたい。

パネルディスカッション

1.下部直腸癌に対する内括約筋切除術後の肛門機能と長期予後

下部直腸癌に対する肛門温存手術の術式として内括約筋切除術(ISR)が本邦でも広く選択されるようになっている。ISRの選択は、年齢、性別、骨盤の広さ、腫瘍径など施設間で異なっている。また、腫瘍学的な根治性を担保しながら、肛門機能を温存するために様々な工夫がなされている。本パネルディスカッションではISR手術のコツとピットフォールについて言及していただき適応、治療成績、合併症、術後のQOL等について議論していただきたい。

2.上部消化管機能温存手術の工夫とその生理学的評価【International】

術後のQuality of Life(QOL)を保つために機能温存手術の概念が生まれ様々な工夫がなされている。胃外科領域では早期胃癌に対して切除範囲を縮小して残胃の機能を温存する術式が広く行われるようになり、噴門側胃切除(PG)、幽門輪温存術式(PPG)、迷走神経温存術式などの機能温存手術はガイドラインに明記されているものの、予後や術後のQOLについて定型手術との比較が十分になされておらず、高いエビデンスが存在していないのが現状である。また、機能温存手術前後の消化管機能については、患者の自覚症状や内視鏡所見による評価が中心となるが、生理学的評価については報告が少ない。本パネルディスカッションでは、各施設における上部消化管機能温存手術の適応や工夫について示していただき、生理学的評価からみる機能温存手術のメリット・デメリットについて多面的な討論を行いたい。

3.AYA世代の外科治療

従来、15歳までを小児外科、16歳以上を成人外科が担当することが一般的である。しかし10代から20代にかけては、小児外科領域の疾患と成人外科領域の疾患が混在し、ときに治療内容や術式の選択に悩む症例に遭遇することがある。今回は対象疾患を虫垂炎、鼠径ヘルニア、縦隔腫瘍に限定し、小児と成人の狭間に位置するAYA(Adolescent and Young Adult)世代に対して小児と成人外科でどのように手術術式や管理法が異なるかの情報共有を行い、それぞれの立場から各疾患の診断、治療の留意点を議論いただきたい。

4.cN0, pSN陽性乳癌に対する腋窩手術―適応と課題―

センチネルリンパ節(SLN)転移陽性でも約半数は非SLN転移陰性である。SLN転移陽性例を対象として郭清(ALND)の有用性を検討したACOSOG Z0011ではALNDの有無により全生存率、無病生存率に有意差はなく、SLNに転移を認めた場合のALNDの必要性が議論となっている。さらにSLN転移陽性例における腋窩照射とALNDのランダム化比較試験であるAMAROSの結果も報告され、これらの結果から適切な症例と術後治療を選択すれば、ALNDを省略しても局所再発や予後への影響は少ないと考えられる。しかし、現時点で症例の選択や適切な術後治療に関しての十分なエビデンスはなく、cN0, pSN陽性乳癌に対する腋窩手術における適応と課題について議論したい。

5.遠隔転移を有する大腸癌に対する治療戦略

分子標的薬の併用による化学療法や術後補助化学療法の進歩により大腸癌の予後は改善しつつある。Stage IV症例に対しても分子標的薬、新規抗癌剤、放射線療法さらには免疫療法等を組み合わせた集学的治療により、切除不能を切除可能へとコンバージョンさせる症例も存在している。本パネルディスカッションでは遠隔転移を有する大腸癌に対する新しい治療戦略、個別化医療の導入、将来への展望について議論していただきたい。

6.食道癌術前治療の有効性を再考する【International】

JCOG9907試験の結果から、本邦では5FU+cisplatinを用いた術前化学療法がcStageII/III切除可能胸部食道癌に対する標準的治療とされている。しかしsubgroup解析ではcStageIII食道癌では術前化学療法の術後化学療法に対する優位性は示されなかったことから術前3剤併用化学療法の導入や術前化学放射線治療が検討されている。一方海外では術前化学放射線治療において生存期間の有意な延長が報告されており標準治療とされている。 それぞれの食道癌術前治療のメリットおよびデメリットを報告して頂き、最良な術前治療および今後の術前治療の方向性を示したいと考えている。

7.胸腹部大動脈瘤におけるdebranch TEVAR vs open surgery【Video】

胸腹部大動脈瘤治療においては、debranch TEVARには追加治療が一定度あり得る点、一方open Surgeryには対麻痺の回避に課題が残るなどそれぞれに解決すべき点がある。近年は血管内治療技術の向上に伴い、より難度の高いあるいはよりhigh Riskの胸腹部大動脈瘤症例に対しても本治療が施行される症例が増加している。一方では、血管内治療後の追加治療を避けるべくopen Surgeryを選択する症例もある。本パネルディスカッションでは、各施設におけるこれらの治療の選択基準とその成績、そして各治療における克服すべき課題への対応法などを提示していただき、本分野での更なる成績向上に向けて情報を共有したい。

8.肺癌に対するTKI・SBRT時代のサルベージ手術

分子標的薬の登場は、特定の遺伝子異常を有する切除不能あるいは術後再発患者の予後やQOLを著しく改善させている。さらに治療経験の蓄積にともない、遺伝子異常の多様な分布と変化が治療中の病巣の変化と関連付けて理解されるようになってきた。また体幹部定位照射や重粒子線などの新しい放射線治療はI期肺癌患者の治療選択肢として定着してきたが、画像範囲を超えて浸潤している肺癌を識別できない以上、一定の頻度の局所再発が経験される。このような時代において、これまでの概念を超えた外科治療の役割として、非外科治療後の局所あるは遠隔臓器における再燃・遺残病変に対する外科切除が検討される機会が増えており、本パネルディスカッションではそのようなサルベージ手術の是非、適応について議論していただきたい。

9.cStageII/III下部直腸癌に対する側方郭清―JCOG0212の結果を踏まえて―

本邦では、側方リンパ節郭清が下部直腸癌に対する標準術式であるが、欧米では普及には至っていない。JCOG0212の中間解析では術前画像診断で側方リンパ節転移のない症例の約7%に病理学的転移を認めていることから、予防的側方リンパ節郭清の有用性も示唆されており、長期予後を含めた最終解析結果が待たれている。また、欧米で主流である術前化学放射線治療を導入する施設も増えている。本パネルディスカッションでは、各施設における予防的側方リンパ節郭清の適応、予後、合併症等について議論していただきたい。

10.食道胃接合部癌の手術手技【Video】

食道胃接合部癌は、その解剖学的特性から、切除および郭清範囲や具体的な手技に関して様々な議論がある。3領域郭清による徹底したリンパ節郭清を標準化しVATSを含めた胸部操作に慣れ親しんだ食道外科医の技と、拡大手術からD2郭清の標準化および腹腔鏡下手術の定型化時代に入った胃外科医の技の、まさに食道外科と胃外科の手術手技の融合が求められる領域である。そこで本シンポジウムでは、各施設で施行されている接合部癌に対する、開腹、開胸、鏡視下手術を問わず、リンパ節郭清の工夫やQOLに配慮した再建法など手術手技をvideoで提示していただきたい。

11.胃癌術後補助化学療法の新たな選択

ACTS-GC試験の結果により、Stage II/III胃癌治癒切除患者に対してはS-1の補助化学療法が標準治療とされているが、特にStage III胃癌に対する治療効果は十分とは言えない。多剤併用療法の臨床試験も行われており、また胃癌に対するオキサリプラチンの使用が承認され補助化学療法の新たな選択肢として期待される。ただし、術後補助化学療法におけるS-1単剤とCapeOX療法またはSOX療法を直接比較した試験はなく、病期やリンパ節転移数、組織型等による使い分けが議論されている。本パネルディスカッションでは、胃癌補助化学療法における薬剤選択、適応、投与期間を含めた新たな治療戦略とその成績を示していただき、今後の展望や問題点について討論したい。

12.大腸癌肝転移に対する集学的治療としての肝切除の役割

切除可能大腸癌肝転移に対しては肝切除が標準治療であり、根治も期待できる。切除不能大腸癌肝転移においても、近年の化学療法の進歩に伴い長期予後が期待できるようになった。さらに様々な集学的治療によって、切除不能大腸癌肝転移を切除可能とする試みがなされている。しかし、肝切除のタイミングやConversion therapy による予後の改善については、一定の見解が得られていない。大腸癌肝転移に対する各施設の治療方針、治療成績を発表していただきたい。

13.2012年版IPMN国際診療ガイドラインを再考する

IPMNの国際診療ガイドラインが2012年に改訂された。主膵管型IPMNの診断感度向上のため、主膵管拡張の閾値は5mmに下げられた。また、臨床的悪性度がHigh-risk stigmataとworrisome featuresとして二段階に層別化され、これらの所見に基づいた切除適応の決定法が提唱された。WHO分類に従って非浸潤癌をhigh-grade dysplasiaとし、浸潤癌のみが悪性と定義された。High-grade dysplasiaの生物学的悪性度、EUS-FNAやERCP膵液細胞診の診断能、また合併膵癌の発生を意識した経過観察法等は今後の課題である。本パネルディスカッションでは、新ガイドラインの有用性を検証するとともに、根治切除が得られるタイミングを逸することなく手術を考慮するための、新たなエビデンスに基づいた今後の課題と対策について議論していただきたい。

14.がん免疫療法と外科治療

がん免疫療法として免疫チェックポイント阻害剤、癌ワクチン、樹状細胞移植、CAR-T療法などの有効性が非常に注目されている。従来の手術、抗がん剤、放射線による治療では治療できなかった症例に対しても著効することもあり、多くの臨床試験が進行中であるが免疫チェックポイント阻害剤などは高額な薬価が医療経済上大きな問題となっている。本パネルディスカッションでは外科診療におけるがん免疫療法の役割とその治療効果や患者予後を評価可能なマーカー研究などについて議論したい。

15.CABGの際の第3のグラフトチョイス【International】

虚血性心疾患の治療ストラテジーの中で冠動脈バイパス手術は未だ重要な位置を占めている。その大きな理由は冠動脈インターベンションに比し良好な遠隔成績、生命予後の改善効果であることは疑いない。その良好な長期成績の源泉は長期的なバイパスグラフトの開存である。現在、両側内胸動脈の左冠動脈領域へのバイパスが左内胸動脈単独より予後改善効果があること認められているが、第3のグラフト選択に関してコンセンサスは未だない。そこで本パネルでは両側内胸動脈に次ぐ第3のグラフト選択に関して遠隔成績から議論していただきたい。右胃大網動脈か、橈骨動脈か、大伏在静脈か、はたまたその他のグラフトか。

16.災害医療における外科医の役割

地震や津波等による自然災害や大規模な事故など多数の患者が同時多発的に発生する状況において、限られた医療資源をどのように効率的に運用するかは災害医療における大きなテーマといえる。特に急性期災害医療では外傷に対処する外科医の役割は重要と言えるが、実際の災害現場で外科医に求められる知識、技術については十分に確立していない。本パネルディスカッションでは、災害医療で求められる外科医としてのスキルや改善すべき様々な問題点等について、実際の災害現場における外科診療を体験した発表者らにより発表、議論していただき、今後の災害医療における外科医の意義について論じていただきたい。

17.乳癌分子標的薬Up-to-date

分子標的薬は、がん薬物療法の画期的進歩をもたらした。標的分子が存在すれば、臓器別を問わず効果が認められている。HER2を標的とするトラスツズマブは、乳癌をはじめ、胃がんでも効果が認められている。臓器横断的に効果が認められる可能性と共に、標的が腫瘍特異的でなければ正常細胞にも影響を与え、さまざまな有害事象を伴っている。これらの有害事象は特徴的であり、かつ共通したメカニズムから発症することも知られている。また、高額な薬剤費も問題であり、本パネルディスカションでは、乳癌のサブタイプ別の分子標的薬の医療経済を加味したポジショニングと有害事象を軽減するための支持療法について紹介いただき、パネリスト間にて推奨されるべき使用方法を議論して行きたい。

ワークショップ

1.食道手術周術期管理の最前線―チーム医療の実践―

食道癌に対する食道切除再建術は過大侵襲を伴う手術であり、その術後合併症は依然として高頻度に認められている。食道癌手術の術後合併症は短期予後のみならず長期予後をも悪化させる可能性が報告されており、周術期合併症の軽減は外科医にとって大きな課題の一つである。近年、術後合併症の軽減を目指して、手術の低侵襲化と並んでチーム医療による周術期管理が注目を集めている。本ワークショップでは、食道癌手術の周術期管理における新たな取り組みについて、特に多職種によるチーム医療の実践とその成果を中心に発表していただき、食道癌周術期管理の新たなスタンダードについて討論していただきたい。

2.肝再生を考慮した肝切除―基礎から臨床へ―【International】

肝臓は人体で唯一再生機能を持つ臓器であり、肝切除術や肝移植術はこの機能の恩恵によるところが大きい。また近年、門脈塞栓術の普及やALPPSの登場により、肝再生機能を利用した肝切除戦略が謳歌する時代となっている。これまでの基礎研究や臨床研究により肝再生のメカニズムが明らかになりつつあるが、依然として未解明な部分も多い。本ワークショップでは、現時点での肝切除術における肝再生の分子動態を明らかにしつつ、肝切除術適応の限界を探っていただきたい。

3.安全性に配慮した肝胆膵領域における腹腔鏡下手術【International/Video】

肝胆膵領域における腹腔鏡下手術は、亜区域以上の肝切除や膵頭十二指腸切除、胆道拡張症などが保険収載となり、より拡大術式が腹腔鏡で施行可能となった。このような中で、これらの拡大術式をいかに安全・確実に施行するかが社会的にも問われている。これら術式を行う上で、系統的肝切除の鏡視下戦略や胆道再建・膵再建の鏡視下手技をいかに確実に行うかなど、議論すべき課題が挙げられる。本ワークショップでは、拡大術式を安全に行うための手術手技の工夫や各施設での取り組みについて発表していただきたい。

4.栄養障害を有する症例に対する外科手術成績の向上にむけて

栄養障害を有する症例で手術の合併症や死亡率が上昇することは広く認識されている。原疾患の進行による経口摂取低下や消耗性によるもの、高齢に伴うものなど栄養障害の原因として様々な要因が考えられるが、これらを術前にスクリーニングし適切な栄養学的介入により改善することは周術期成績の向上に向けて必須である。また栄養障害を有する患者に対してはより低侵襲、短時間な手術、あるいは二期的手術といった段階的なアプローチも考慮される。本ワークショップではこうした栄養障害を有する症例に対するスクリーニング、術前術後管理、手術適応、手術手技など、治療成績向上を目指して各施設で行われている工夫について幅広く議論していただきたい。

5.外傷外科の最前線―基礎および臨床―

外傷診療において外科の果たす役割は大きいが、診療現場で行われる手技、治療戦略については十分なエビデンスの得られていないものも多い。今後の外傷外科をさらに発展させるためには、現在の診療で行われている様々な診断法や治療法などの意義を更に掘り下げていく必要がある。本ワークショップでは外傷外科に関する基礎的、臨床的な研究成果を取り上げ、外傷患者の予後改善、QOL向上を目指した新たな治療戦略について各施設での検討を中心に議論していただきたい。

6.超低出生体重児の外科と治療成績

本邦の新生児外科全国アンケートにおいて低出生体重児の割合は約4割をしめ、超低出生体重児が、その1/4を占めるようになっている。対象疾患は消化管穿孔を中心とした重篤な疾患が多く、その治療成績は未だに満足のゆくものではない。さらに臓器の未熟性から、手術だけでなく周術期の管理も患児のQOL改善には重要である。長期的にも脳室周囲白質軟化症による脳性麻痺など多くの問題点を有している。それらを踏まえ、対象疾患、治療内容、治療成績について各施設の現状報告に加え、少子化の進むわが国における周産期外科医療の在り方、小児外科専門医および周産期センターの配置などについても議論していただきたい。

7.呼吸器感染症に対する呼吸器外科手術―適応と術式―【Video】

呼吸器外科医は難治性膿胸、肺結核や非結核性抗酸菌症、肺アスペルギルス症などの内科治療抵抗性の呼吸器感染症に対する手術に精通する必要がある。しかし、手術適応や術式に関して症例毎に最適な治療を考え、適切なタイミングで実行しなくてはならないし、周術期合併症の危険性が高く、治療の難易度は高い。本ワークショップでは上記感染症に対する呼吸器外科手術を演者からビデオで供覧していただき、手術適応・周術期管理で留意する点と術式の工夫について討議していただきたい。

8.局所進行下部直腸癌に対する術前療法の意義【International】

局所進行下部直腸癌への国際的な標準治療は、術前の化学放射線療法と直腸間膜全切除である。本邦では側方リンパ節郭清を伴う直腸間膜全切除が行われてきたが、近年術前化学放射線療法や術前化学療法を導入する施設は増加している。しかし、術前化学放射線治療は局所再発を減少させるが、予後の改善はみられず、術後合併症の増加や術後肛門機能不全等が報告されている。術前化学療法は、腫瘍縮小効果、微小転移巣の治療、患者のコンプライアンスが良いというメリットがあげられる。本ワークショップでは術前療法のメリット、デメリット、さらにはどう個別化するかに関して発表していただきたい。

9.高度進行胃癌に対するNeoadjuvant chemotherapyとConversion surgery【International】

切除不能な進行癌症例に対して化学療法や放射線療法が奏功し、遺残のない治癒切除が可能と判断されて施行される外科的治療をconversion surgeryと呼び、昨今胃癌においても報告が増加しつつある。一方で、高度のリンパ節転移を有する進行胃癌や大型3、4型胃癌は、たとえ手術が可能であっても予後不良であることが知られ、これらに対する有望な治療戦略としてneoadjuvant chemotherapy(NAC)も注目されている。しかしながら胃癌においてはいずれの戦略のコンセンサスもまだ得られていないのが現状である。本ワークショップでは各施設における経験を基に発表いただき、今後の展望について議論していただきたい。

10.Borderline resectable膵癌に対する集学的治療

膵癌の治療成績は早期発見、手術手技の進歩、術後化学療法により向上してきているが、現状でも進行例が多く予後不良な疾患である。特に門脈系への浸潤、動脈への近接するBorderline resectable(BR)膵癌は、手術単独ではR0を得ることが困難であり、化学療法、放射線療法を併用した集学的治療が必要となる。本ワークショップでは各施設において、BR膵癌の予後改善のために施行している治療法、治療成績、問題点などを挙げていただき、議論を進めていただきたい。

11.外科領域における漢方の役割

漢方薬は数千年の年月をかけて、生薬の組み合わせによって生み出された。本来、個々の患者の体質や病気の状態(証)に応じて適な漢方薬を使い分けていく、いわゆる「オーダーメード」の治療である。近年、外科領域の病態に対しても漢方薬が使われるようになり、Japanese traditional medicineとして欧米でも注目されている。現在では基礎研究により作用機序の解明がすすんでおり、臨床的な有用性も多く報告されている。漢方薬は外科医療における低侵襲化や個別化治療の発展に大きく貢献できる可能性を秘めている。外科領域における漢方治療のエビデンスとなるような、臨床・基礎研究における最新の知見を発表いただきたい。

12.症例から考える進行再発乳癌の治療方針

乳癌治療においてサブタイプ別の個別化治療が浸透してきた。しかしながら、進行再発乳癌においては治療方針の決定において議論の分かれる場面に遭遇することもしばしば認められ、早期乳癌の術後補助療法のようにエビデンスに沿った治療方針の決定が必ずしもできないことがある。治療選択に難渋する進行再発乳癌を提示し、特に外科治療にスポットを当て、ケーススタディ形式でコンセンサスレベルでの最善の治療を見出したい。

13.下部消化管手術教育における私の工夫―開腹手術と腹腔鏡手術―

下部消化管外科専門を志す外科医は数多く存在するものの、下部消化管に特化した教育システムは確立されていない。本ワークショップでは、日常診療と教育の中で若手医師はどう学んでいけばいいのか、経験豊富な下部消化管専門の医師はどう若手医師を教育すれば良いのかを語っていただきたい。今後の下部消化管外科への取り組み絵の一助となれば幸いである。

14.再発食道癌の治療戦略―外科的介入の有用性は―

近年、食道癌の治療成績は向上し、食道切除術の5年生存率は50%を超えるようになってきている。しかしいったん再発すると、その後の治療は困難を極める。投与できる化学療法剤が限定されている上に、分子標的薬も投与できないのが現状である。そのような状況の中、再発癌を手術で制御し、少しでも予後を改善しようとチャレンジする施設も数多く存在している。手術や根治的化学放射線療法後の外科治療は、どのような症例にいかにして行われるべきなのか。そしてそれらが全体の予後を押し上げる可能性はあるのか。様々な施設から様々な意見を頂戴し、サルベージ手術も含めた再発治療としての外科治療の是非を問いたい。

15.食道癌手術における再建の工夫

近年、食道癌切除後の再建においては、術後合併症の軽減を重視した再建方法のみならず、QOLの向上を目指した再建方法が考案されている。食道切除後再建法に関して、大規模臨床試験によって検証された科学的データが存在しないため、再建経路や再建臓器の選択、あるいは血行再建の有無については各施設や術者の考えによって選択されているのが現状である。本ワークショップでは、安全性とQOLを配慮した食道切除後再建に関連した術式や手技の工夫について、その評価法や成績も含めて論議していただきたい。

16.他科とのコラボレーション手術の実際【Video】

外科領域において他科との共同手術が必要となることが多い。食道癌手術における頭頸部外科との共同手術、大腸癌手術における婦人科、泌尿器科との共同手術、機能的再建を目指した形成外科との共同手術、消化管領域における腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)LECS、心臓血管手術とカテーテル治療のコラボレーション、多臓器高度浸潤悪性腫瘍や多発外傷におけるコラボレーション手術などスペシャリストの英知と技術を結集して行われる標準治療とは対極的な個別化治療の工夫、戦略について映像を通じて議論していただきたい。

17.胃癌手術における逆流防止の工夫と長期成績

胃術後障害の一つとして逆流症状が挙げられるが、重症例では術後栄養障害(体重減少)につながることもあり、臨床において問題となることは少なくない。術後障害を予防することを目的に、術式の変更、神経温存や再建法の工夫などが行われているが、その有用性に関するエビデンスは十分とは言えない。本ワークショップでは各施設の取り組みを基に逆流防止の要点“do and do not”や工夫、エビデンスや新しい知見に関して幅広く演題を募集する。これらの演題を通して現在または今後の問題点を浮き彫りにし、術後短期だけでなく長期的な逆流防止に対するコンセンサスの形成と今後の方向性を探りたい。

18.高リスク患者に対する肝胆膵手術

高齢化が進むことで、様々な既往症を有する患者の手術を行うことが増加している。手術リスク因子となるような循環器、呼吸器、腎などの重要臓器に既往症を認めたり、ステロイドや免疫抑制剤などの使用歴や、糖尿病を有していたりと様々な既往疾患への対応が求められる。その中でも手術リスクを正しく評価し、周術期管理を行う必要がある。肝胆膵疾患に特有のリスクとして、慢性肝炎や肝硬変に伴う肝機能障害、術前の胆道感染症、急性膵炎後といったリスクがある。高リスク患者に対する手術適応やリスク軽減の方策、周術期管理、手術成績について議論していただきたい。

19.肝内胆管癌の局在および多様性から見た術式選択

肝内胆管癌は外科的切除が最も根治性の高い治療法であるが、リンパ節郭清や肝外胆管切除の適応に関しては、リンパ節腫大の有無や腫瘍部の局在やなどにより意見の分かれるところである。当セッションでは肝内胆管癌において、治療成績向上のために、腫瘍の局在やリンパ節転移の有無に応じて、各施設で取り組んでいる治療方法(集学的治療も含め)を呈示し議論していただきたい。

20.透析例の重症虚血肢に対する治療向上のための工夫

近年、齢化や糖尿病患者、析患者の増加に伴い、症虚血肢症例も増加している。の約半数を占める透析患者においては、再建後の患肢および生命予後は短期中期とも非透析患者に比べ、良であることが一般に知られている。析患者では、腿動脈以下の病変、高度石灰化、不良なrunoff vesselといった病変の解剖学的特徴を有し、また併存疾患、栄養状態といった全身的な背景も重度であることが多い。療にあたってはchallengingなケースもしばしばみられるが、透析患者を多くかかえる本邦では喫緊の問題である。症虚血肢透析患者の治療成績を向上させる各施設の取り組みについて議論していただきたい。

21.Sublober resectionの功罪―根治性および肺機能の側面から―

診断技術の急速な進歩によって小さな肺癌の発見が可能となり、標準的な肺葉切除や縦隔リンパ節郭清についての適否が検討されている。患者の高齢化や合併疾患の存在、外科治療後の退院、社会復帰が急がれる社会状況で、肺機能温存のための縮小手術はより質の高い外科治療を目指すものであるが、これまでの標準治療に対して成績が劣ることは許されないであろう。臓側胸膜に境されていない区域間の処理や部分切除の手技など腫瘍学的側面からの議論が求められる。リンパ節郭清についても標準的な郭清の意味についても検討したうえで、縮小郭清の適否を議論していただき、Sublober resectionがいかにあるべきか方向性を示していただきたい。

22.外科診療における腸内フローラ・腸内細菌の重要性

腸内フローラは感染症だけでなく癌、代謝性疾患など様々な疾患の発症、治療効果に関連する重要な因子であることが明らかとなってきた。外科領域では周術期の栄養管理、疾患治療の一環による絶食など診療自体が腸内フローラに影響を与えうる。本ワークショップでは外科診療における腸内フローラの変化とその意義について各施設での検討を中心に論じていただきたい。

23.進行甲状腺癌における外科治療の役割

進行甲状腺癌においては手術療法が中心であったが、放射性ヨウ素治療に加え分子標的治療の導入により、進行甲状腺癌に対して集学的治療を考慮する時代となってきた。集学的治療を行う上で、外科治療の位置付けや、その後の治療を考慮した外科治療の変革など、進行甲状腺癌に対しどのような戦略で治療を行うのか、あるいは集学的治療における分子標的薬の位置付けを含めて、進行甲状腺癌治療の現状と展望について幅広い観点から議論したい。

ディベート

1.直腸癌手術におけるdiverting stoma-造設するvs造設しない―

低位前方切除を行う場合にはdiverting stoma を造設することがあるが、この目的は(吻合部の安静を図り)縫合不全などの合併症を抑え、手術関連死亡を減らし、確立はしていないものの局所再発を防止することにある。一方では、stomaを造設すると、stoma関連合併症、ストーマ閉鎖時の合併症までを含めると、総合併症の発生率には差がないとの報告も存在する。Stomaを造設した患者のQOLを良好に保つためには、合併症の発生を最低限にする必要がある。近年は、装具の改良により結腸でも回腸でもstomaの管理が容易になってきている。本セッションでは、diverting stoma造設の必要性に関してご発表していただき会場の皆様とともに意見交換したい。

2.胸腔鏡下食道切除術―左側臥位 vs 腹臥位―

食道癌に対する低侵襲手術として胸腔鏡下食道切除が導入され、当初は、左側臥位にて行われてきたが、海外での腹臥位手術の報告以来、本邦でも腹臥位による胸腔鏡下食道切除術を導入する施設が増加してきた。左側臥位あるいは腹臥位、陽圧気胸の有無などアプローチの違いがあるものの鏡視下手術は次第に普及し、術中成績の改善、拡大視効果によるリンパ節郭清精度の向上、長期成績などが議論され、技術の向上を目指した様々な取り組みがなされている。本セッションでは左側臥位、腹臥位のそれぞれの立場でメリット・デメリットを視野の展開、手技の難易度、安全性、教育などの観点から議論していただきたい。

3.cStageI上部胃癌の術式選択―噴門側胃切除 vs 胃全摘―

胃癌治療ガイドラインにおいてT1 cN0 StageI上部胃癌症例に対して1/2以上の胃温存が可能であれば機能温存を目的とした縮小手術である噴門側胃切除を考慮してもよいと規定されている。噴門側胃切除は胃全摘と比較し、膵外分泌や消化管ホルモン分泌の保持、消化吸収能や体重、経口摂取量の維持、術後貧血の防止などのメリットがあるとされている一方で吻合部狭窄や逆流性食道炎などのデメリットも存在する。特に逆流性食道炎は患者のQOLを著明に低下させるため、逆流防止機構を伴った再建方法などのさまざま工夫がなされ一定の効果が得られている。しかし、期待されるほどのQOL改善効果や患者満足度を得ていないとする報告もあり、術式の選択にコンセンサスを得られていない。StageI上部胃癌に対する術式選択やその意義、手技の工夫など討論していただきたい。

4.生体肝移植ドナー肝グラフト採取術におけるPringle法―行うvs行わない―

わが国では現在でも生体肝移植が主流であり、ドナー手術における安全性の担保は非常に重要な課題である。肝切除において術中出血量を抑えることは、術後合併症の発症リスクを軽減する有効な方法である。Pringle法は肝切除における出血の抑制のために、一般的な方法であるが、ドナー肝グラフト採取時はグラフトバイアビリティーをできるだけ損なわないという意図からPringle法を行わない施設もあり、議論のあるところである。本セッションでは生体肝移植のドナー肝切除におけるPringle法の必要性について、各施設での成績を含めて議論していただきたい。

5.胸部食道癌手術における頸部郭清の合理化は可能か―Standard or Selective―

胸部食道癌におけるNo.104リンパ節の位置づけは、欧米では遠隔リンパ節(M1)とされているが、本邦では郭清すべき領域リンパ節と考えられている。2015年に改訂された食道癌取扱い規約第11版では、胸部中部食道癌においては従来の第3群リンパ節から第2群リンパ節へと格上げされた。しかし現実には、本邦においても食道癌取扱い規約通りにNo.104を郭清する施設もあれば、術前検査や術中のNo.106recリンパ節の迅速診断結果に基づいて郭清を省略する施設もあり、胸部食道癌手術における頸部リンパ節郭清の実施は必ずしも統一されていない。
本セッションでは胸部食道癌手術における頸部郭清について、その功罪、合併症、長期・短期成績などの観点から合理化や個別化が許容されるか否かを論じていただきたい。また頸部郭清の省略が術前検査や術中病理所見によって予測可能であるかについても論じていただきたい。

6.中等度リスクの大動脈弁狭窄症におけるConventional AVR vs TAVR

TAVRの適応は現時点では, Conventional AVRの適応外症例となっており、現在は中等度リスク症例への治験が進行中である。TAVRの合併症としての基部は破裂など重篤な合併症は克服されつつあるが、脳合併症や弁周囲逆流の克服は十分とは言えない。また医療経済的には高額な治療になるTAVRには価格面での問題点もある。海外では既によりリスクの低い症例や生体弁移植後の所謂Valve in Valve法なども行われ、適応が拡大されている。一方従来型弁置換はその有用性が確認され、狭小弁輪用やSutureless Valveなども出現しその適応や手技の簡便化がはかられている。これらの点から両者の有用性を議論いただきたい。

7.胆道拡張症、膵・胆管合流異常症の標準術式は?―小児外科および成人外科の立場から―

胆道拡張症および膵・胆管合流異常症の標準術式については、長年、小児外科と成人外科の両者の立場から議論が行われてきた。本症の外科治療は、鏡視下手術の導入などにより、総胆管の切離レベル、肝内胆管拡張への対応、再建術式、胆管非拡張例への対応など、未だ統一した見解が得られていない。今回、あらためて疾患の定義、病態、がん化の問題を含めた長期成績などの観点からエビデンスに基づいた推奨治療について小児外科と成人外科のそれぞれの立場から議論していただきたい。

8.胸膜中皮腫の手術―P/D vs EPP―

胸膜中皮腫に対する外科治療は呼吸器外科手術の中でもっとも侵襲的な手術のひとつである胸膜肺全摘術(EPP)が標準的治療とされていた。しかし、その治療成績および術後のQOLの低さからEPPに代わって胸膜切除・肺剥皮術(P/D)が行われるようになった。P/Dは2016年から保険収載になり、今後多くの施設で行われるようになることが予想される。従来の臨床経験からP/D術後のQOLに関してはEPPをある程度しのぐものであることは分かってきたが、術中術後管理の問題点、長期の治療成績についてはなお不明な点も多い。今回、EPPを主に行ってきた先生とP/Dを行ってきた先生にご登壇いただき、外科的手技と腫瘍学の両面から両術式を論じていただく。また、これら手術の集学的治療での位置付けについても言及していただく予定である。

9.術前化学療法でcN1からcN0となった乳癌の腋窩郭清―する vs しない―

cN1乳癌の術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検に関する十分なコンセンサスは得られておらず、臨床上の重要な課題となっている。一方、アカデミックディベートは意見が分かれるテーマを深く考える上で有効な手法である。そこで、evidenceとclinical expertiseに基づいたディベートを通してcN1乳癌の術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検を行なうか、およびそれに伴う適切な腋窩マネージメントを考えていただきたい。

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