小寺 泰弘
この度、第124回日本外科学会定期学術集会を2024年4月18日(木)~20日(土)に、愛知県常滑市で開催させていただくこととなりました。名古屋大学の外科学講座全体に取りまして大変名誉なことであり、本学会役員の方々をはじめ、すべての会員、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
これまでの学術集会では、わが国の外科医が各分野で開発した先進的な手術手技やそれに伴う優れた治療成績を披露し、わが国の外科学のレベルを惜しみなく表現する舞台でありました。こうした成果は忙しい日常業務の中でも常に限界を越えようと努力する前向きでストイックな姿勢の賜物です。時に時間を忘れ、目的に向かってがむしゃらに努力しないかぎり技術は身につかないというのが私たちの世代が持つ外科学のイメージです。第124回定期学術集会においても、このような姿勢から生まれた演題が主役であることに変わりはありません。
その一方で、外科医の作業には単独では実施できないものも多い中、時間を忘れて没頭する自分に付き合うことを他人に強要しにくい世の中となってまいりました。そこを何とかするのがリーダーシップであるとは言え、これまでのようには行かない何かが感じられる「働き方改革」がいよいよ本番を迎えるタイミングで第124回定期学術集会は開催されます。そこで、今回の定期学術集会では「わが国の資源で持続可能な外科診療を考える」というテーマのもと、一度立ち止まって外科医・外科診療の将来を考える機会を設けさせていただくことにいたしました。足りないのはもとより労働時間だけではなく、研究や教室運営に必要な資金もここにきて急激に不足してまいりました。さらに外科医の数が不足しているとなれば、この国の外科診療の持続可能性には強い疑義を抱かざるをえません。
外科医であることで得られる達成感は他では得がたいものだと外科医になった私たちは実感しており、ゆえにある程度の厳しさや不自由も容認して外科医を続けております。しかし、こうした人生に挑戦したいと考える医師の比率が右肩上がりに増えることはないことも私たちは事実として受け止める必要があります。そうした中で自らの意思でこのような職業を選んでくれたかけがえのない若手医師を大切に育て、肉体的・精神的なトラウマから守り、雑駁な感を免れない現在の外科医の業務内容をもっと能力を生かせる形に変えていくためにはどうすれば良いのか。持続可能な外科診療に必要な要素をSurgical Development Goals、つまり外科におけるSDGsと考え、いくつかのゴールを設定し、他の業界での経験談や考え方も交えてしっかりと議論する機会を設けたいと思います。
高木弘会長(第95回)を皮切りに、二村雄次会長(第105回)、中尾昭公会頭(第110回)、梛野正人会頭(第115回)が会場として使用された名古屋国際会議場は、今回は改装により使用できません。そこで愛知県常滑市の愛知県国際展示場を使用することにいたしました。会員の皆様には大変な御不便をおかけしますが、これまでにない大型の会場としての魅力もあると考え、名古屋大学の外科学講座全体で力を合わせて準備に当たっております。今後もアクセスに関わる情報の開示に努めて参りますので、何卒現地でのご参加をお願い申し上げます。