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演題募集(公募)

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特別企画

1.女性外科医のロールモデル

ロールモデルは女性外科医のキャリア選択にも大きく影響する。またキャリア満足度を高めるための支援にロールモデルは欠かせない。自分の希望に完全に一致するロールモデルは存在せず、存在したとしても、自分の条件に完全に当てはまるわけではない。女性外科医のロールモデルの出発点として、如何に外科修練を終え、外科専門医を取得するかが大前提となる。そこで、日常生活面での共通点を持つ同性のロールモデルからワーク・ライフ・バランスの知恵を是非聴かせていただきたい。また、近年、外科医が減少する一方、過剰労働を減らす等、働き方改革を迫られ、取り巻く環境は厳しさを増している。そこで、本特別企画では、現在のロールモデル事情をもとにロールモデルを持った/持っている/持ちたい方の間で、積極的な意見交換をお願いしたい。

2.新専門医制度の開始により見えてきたその現状と課題

2014年に日本専門医機構が発足し、新しい専門医制度の構築が求められた。日本外科学会はこれに対応して準備を進め、全国で204の研修プログラムすべてが日本専門医機構の二次審査に合格、2017年度のオンラインシステムによる専攻医登録を経て2018年度より新たな外科専門研修が開始された。そして消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺外科、内分泌外科の6領域が外科専門医直結のサブスペシャリティ領域として新専門医制度の準備を進めている。今回研修を開始した専攻医、旧制度下での外科専門医から統括責任者に至る指導医、あるいはサブスペシャリティ領域の外科専門医といった様々な立場から、現時点で感じられる新専門医制度への期待や疑問、問題点に関わる見解を述べていただき、建設的な討議を展開したい。

3.国民が期待する外科医像ー行政の観点も考慮して

多くの中堅・若手外科医が目指しているのは最新の外科技術を駆使して多くの患者さんの救命とQOL向上に貢献できる外科医でしょう。多くの国民もそれを期待していますが、さらに地域医療に貢献する外科医や患者・家族に寄り添う外科医も期待しています。一方、行政は地域格差をなるべく小さくした上で良質な外科医療を国民に届けようと制度改革に取り組んでいますが、働き方改革のプレッシャーも加わり、なかなかうまくいかないのが現状だと思います。多くの問題を有するわが国の外科医療の現状を踏まえたうえで、さまざまな視点と観点から“国民が期待する外科医像”を議論していただきたいと思います。可能であれば行政の観点も入れてください。

4.外科医が行うべき研究のありかたとは

2017年4月のNatureに“More surgeons must start doing basic science”という論文が掲載され、探索医療、移植免疫学、再生医学、先天異常、難治がん治療などに対して外科研究が重要であることを指摘している。実際に、外科分野においても病態の解明、最適な術式選択や周術期管理、さらには再生医学や移植免疫学、集学的治療の開発などで大きな変革がみられ、そのエビデンス創出には先達の外科医が重要な役割を果たしてきている。最近では、医工連携や人工知能(AI)の活用など異分野融合の新たな方向性も提唱されており、若い外科医が貢献できる領域も広がっている。本特別企画では、幅広い分野の外科研究の実例を紹介いただくととともに、外科医が行うべき研究について自由な討議を期待する。

5.時代にマッチした外科医の育成

2018年度より新専門医制度が開始され基本領域の外科医育成システムが均てん化されることになるが、これらの専修医は様々な異なる社会的要請に直面している。細分化された専門分野を極めるべき人口密集地域と広範な疾患群を少人数で診療しなければならない過疎地域、標準的治療を的確に行うべき地域の基幹医療施設と新規医療機器・治療法や手術技術を開発するアカデミック施設等々である。また、医療安全や倫理が世界的な関心を集める中、これらの非技術分野の教育も肝要である。このような地域・施設別の特性に従った育成計画や、医療安全・倫理その他の新たな社会状況に対応した育成プログラムに関して発表・提案をしていただき討論をお願いしたい。

6.医療安全―患者と医師が信頼しあえる外科医療を目指して―

隣人への思いやり、十分な科学性と高水準技術に支えられた良質な医療を、現在の社会基盤や医療環境の中で普遍的に個々の患者に届ける、を実践するためには、様々な工夫、新しい考え方や仕組みの導入、システムの整備と改善が欠かせない。ヒューマンエラーの頻度の最小化、アクシデントによる被害の最小化、エラーに学び害を防止する教育、医療者間、施設間ネットワーキング、地域連携、新しい医療技術やガイドライン導入時の修練、情報共有など多くのテーマがあげられている。患者と医師が信頼しあえる外科医療を⽬指し、討議していただきたい。

7.外科医にとっての働き方改革とは

現在、国を挙げて職種に関わらず働き方改革が推進されている。医師は医師法による応召義務があるため、単に労基法に準じた労働時間の制限によってのみ働き方が決まるわけではないが、昨今の働き方改革が5年後には医師に適応される予定である。そのような現状の中、実際には高齢化社会の到来、外科医不足、外科治療の高度化・多様化などの様々な要因により外科医の労働環境は必ずしも良好ではない。今後、外科医の働き方改革/労働環境改善には、業務の効率化、他職種(NP/PAなど)によるタスクシフトの導入、女性医師の参画、施設の集約化による施設当たりの外科医増等、様々な取り組みが必要と考えられる。本特別企画では、外科医の働き方改革に対する今後の取り組みに関し、忌憚のない意見を述べてほしい。

シンポジウム

1.各臓器癌の肝転移に対する手術的治療(Conversionを含む)【International】

転移性肝癌に対する手術的治療の是非は原発臓器により異なる。しかしながら積極的外科切除が求められる大腸癌や神経内分泌腫瘍においても、手術適応・タイミング・周術期化学療法導入の明確な基準や、手術不能例におけるConversion導入のベストプラクティスは依然示されていないのが現状である。さらに最近の分子標的薬を含む化学療法の進歩により、これまで非手術適応とされてきた胃癌・胆膵癌などのConversionの可能性も模索されている。本シンポジウムでは、各臓器癌の肝転移に対する手術治療を中心とした集学的治療戦略について議論するとともに、予後や手術適応を決定する画像診断やバイオマーカーなどについても検討していただきたい。

2.遺伝性乳癌の診断、治療、予防の現状と将来展望

遺伝性乳癌のマネージメントに関して、海外では多くのデータが蓄積されている。一方、我が国においてもBRCA1, BRCA2の生殖細胞系列の変異保因者に対してPARP阻害薬(olaparib)が薬事承認され、また、乳癌発症者においては対側乳房の予防切除も推奨されている。このような状況から、遺伝子検査に基づく治療ならびに予防的処置は、今後不可欠な課題である。さらに、BRCA1, BRCA2以外の生殖系列変異を有する家系における取組も必要であろう。本シンポジウムでは遺伝性乳癌の遺伝子診断、治療選択、予防的処置を行っていくうえでの問題点と実施に向けた対策を探りたい。

3.最適な低侵襲肺癌手術をめざして【Video・International】

呼吸器外科領域における低侵襲手術として、Video-assisted thoracoscopic surgery(VATS)が導入されてから20年以上が経過し、当初は生検や嚢胞性肺疾患に対する肺部分切除から始まったその適応は、原発性肺癌に対する根治的手術にも拡がり標準的手技になりつつある。さらに、H30年4月からはロボット支援下内視鏡手術が肺癌手術においても保険収載となり、低侵襲肺癌⼿術をめぐる技術の進歩とその適応の拡大は今後さらに加速すると考えられる。その一方で、肺癌手術において真の低侵襲を追求する上での最新技術の定義や位置づけ、標準的治療としての普及に向けての合意形成は十分とはいえない。そこで本シンポジウムでは、呼吸器外科領域でこれらの技術革新が持続可能な低侵襲肺癌手術として受け入れられていくために、「低侵襲の再評価」と、それを踏まえた「低侵襲のこれから」について議論していただきたい。

4.外科治療成績の向上を目指した感染症対策

NCD(National Clinical Database)による、本邦における手術部位感染(浅層・深部・体腔)の合併率は約10%で、さらに重篤な術後敗血症の合併率は約5%とされ、外科領域における感染症対策は術後短期成績のみならず、癌再発を含めた長期成績にも影響を及ぼす重要な課題とされる。また、術後感染症による在院日数の延長や術後医療費の増大は患者負担のみならず、医療経済のうえでも重要な問題とされる。本シンポジウムでは、周術期の予防対策における各施設の試みについて、様々な視点から広く論じていただきたい。

5.大腸癌に対する手術手技【Video・International】

大腸癌に対する外科治療は、発生学に基づく膜構造に沿ったリンパ節郭清および腸管切除が基本である。進行癌ではD3リンパ節郭清を伴う全結腸間膜切除、全直腸間膜切除が実施されている。直腸癌の再発率低下を目指し自律神経温存側方リンパ節郭清やQOL向上を目指した内肛門括約筋切除術(ISR)も施行されてきた。一方、患者への低侵襲を目的に、腹腔鏡手術が普及してきた。最近では、発想の広がりと機器開発が両輪となって新たな外科技術革新として、ロボット支援手術、経肛門的内視鏡下手術(TaTME)、さらには正確な病変の同定や臓器血流評価のための術中蛍光ナビゲーション手術も産み出されている。本シンポジウムでは、各施設の手術術式の工夫や特色をVideoにて供覧していただき、治療成績を踏まえて、議論を深めたい。

6.高齢化社会における大動脈弁置換術、スーチャレス弁およびTAVIの適応を再考する【International】

高齢化が進む我が国においては、高齢患者にとって最適な治療が何かを考えることだけでなく、若年患者がその後何十年も長生きすることを前提に最適な治療が何かを考えることが重要である。重度大動脈弁狭窄症に対する根治的治療としては、TAVIがハイリスク高齢患者に対する第一選択としての地位を固めている。一方、外科的大動脈弁置換術はローリスク患者や解剖学的にTAVI不適合な患者に対して第一選択となっている。なお、外科的大動脈弁置換術には機械弁、生体弁に加えて、スーチャーレス生体弁というオプションが登場した。年齢、手術リスク、解剖学的条件を踏まえて、各々の大動脈弁狭窄症患者にとって最適な侵襲的治療が何かをディスカッションしていただきたい。

7.局所進行食道癌に対する手術手技【Video】

cT4あるいはそれに近い局所進行食道癌においては、化学療法、放射線療法、手術を組み合わせた集学的治療が行われ、成績向上が図られている。手術は主に化学療法、化学放射線療法が行われた後に計画されるが、局所進行癌では気管・気管支、大血管、心嚢など多臓器への浸潤も否定できないなかで、いかにR0手術を完遂するかが非常に重要である。R0を達成するための剥離手技と攻め方、隣接臓器合併切除の適応と方法、消化管再建の工夫、合併症軽減のための方策、副損傷の対応などを含めてビデオで供覧いただきたい。また、術前準備、画像診断、術式プランニングについてもポイントを教示いただき、広く共有することを目指す。 

8.転移再発大腸癌に対する治療と成績

近年、多剤併用療法や分子標的治療薬の開発、支持療法の進歩によって大腸癌化学療法は長足の発展を遂げ、奏効率の上昇と生存期間の延長が得られている。最近は原発巣の左右差による予後や薬剤感受性の差異、FOLFOXIRIの臨床導入と普及、MSI-Highに対する免疫チェックポイント阻害剤の有効性への期待、遺伝子パネルによる薬剤選択なども注目されている。本シンポジウムでは、上記の話題に加えて分子標的治療薬の使い分け、転移巣に対する集学的治療などについて基礎的・臨床的な側面から広く演題を募集する。進行再発大腸癌に対する治療成績の更なる向上につながる議論をしていただきたい。

9.小児外科疾患における再生医療【International】

再生医療は1980年後半に小児外科領域において最初に芽生えた領域で、約25年が経過した。先天性疾患が殆どの小児外科領域において再生医療の要望は大きく、また小児外科疾患ではなお根治が不可能な疾患が多く存在する。これらの疾患に対して実用化に向けて多くの施設で基礎的な研究が進められている。このような背景のなかで、各施設で小児外科疾患に対して、どのような再生医療が計画されているか、またどこまで実用化に近づいているのかについて討議していただきたい。

10.膵癌におけるartery first approach-長期予後からみた臨床的意義【International】

浸潤性膵管癌に対する手術において、R0手術を得ることは非常に重要である。近年、R0切除率向上や術中出血量軽減を目的としたArtery-first approachが注目されている。Artery-first approach は、1993年に中尾らによりMesenteric approachが報告されて以降、様々な方法が開発・考案され、浸潤性膵管癌の予後向上に寄与することが期待されてきた。本シンポジウムでは、浸潤性膵管癌に対する各術式におけるArtery-first approachの手技を供覧していただくとともに、長期予後を含めた治療成績を提示していただきたい。

11.食道胃接合部癌の外科治療(郭清・再建)

近年,食道胃接合部に発生する腺癌・扁平上皮癌の外科治療機会が増加している。日本胃癌学会と日本食道学会が合同で行った食道胃接合部癌に対する前向き試験の結果が一部公表され、各リンパ節の転移頻度が明らかとなった。しかし下縦隔郭清のアプローチ法や手技はいまだ標準化されておらず,より進行した腫瘍に対する上中縦隔や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清の扱いなど解決すべき課題も多い。さらにより安全で普遍性のある再建法の開発も急務である。各施設での知見を基に,食道胃接合部癌の長期・短期外科治療成績を向上させるための郭清、再建を中心とした術式について議論していただきたい。

12.進行胃癌に対する腹腔鏡下手術【Video・International】

進行胃癌に対する腹腔鏡下手術の安全性・腫瘍学的妥当性については、これまで多くの議論が重ねられてきた。エビデンスに関しては日本・韓国・中国ではランダム化比較試験の登録が終了し追跡調査が行われており、長期予後に関しての解析報告が待たれる。現在、腹腔鏡下胃切除は、全摘を含め進行度に関係なく保険収載されているが、早期胃癌を対象としている施設が多い。一方、一部の施設では進行胃癌にも積極的に適応拡大が行われているが、それには転移リンパ節に対する治療的郭清などの技術的な担保が求められる。本シンポジウムでは、その技術的背景となる手技をvideoで供覧し、その成績を提示いただきたい。また現状の課題となるBulky症例やNAC後症例、さらにはダビンチ手術の役割など今後の方向性についても議論の対象としたい。

13.肝胆膵外科手術における血管再建手技【Video・International】

日本では肝門部胆管癌や膵癌の局所進行例、あるいは門脈・下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌、転移性肝腫瘍の肝静脈根部浸潤例などに対し、血管合併切除・再建を伴う拡大切除が積極的に行われてきた。その中には、臓器移植の手技を融合し、完全肝血行遮断に冷却灌流を組み合わせたante-situm法、体外切除・自家移植などの超拡大手術も含まれている。Transplant Oncologyが注目されつつある中、肝胆膵領域の難治がんに対する現時点での切除限界がどこにあるのか、適切な患者選択はいかにあるべきかを見極めることが「メスの絆で科学を拓く」ことに繋がる。本シンポジウムでは切除困難・不能と診断された主要血管浸潤症例に対する血管合併切除・再建手技のビデオを術前画像と共に示し、日本が世界を先導してきた肝胆膵外科手術の現在の到達点につき十分に議論していただきたい。

14.術前薬物療法後の乳癌の外科治療:切除範囲、センチネルリンパ節生検の適応、再建方法【International】

乳癌に対する薬物療法の進歩とともに術前薬物療法が広く行われるようになって来た。その一つのメリットとして乳房温存率の向上など「手術の縮小化」があげられ、さらには「非手術の可能性」が検討されている。しかし、遺残病変の評価や特定方法など、化学療法前・後の画像診断を含めた課題も多い。また、領域照射の適応と合わせて、センチネルリンパ節生検あるいは腋窩リンパ節郭清の適応なども課題といえる。さらに、術前薬物療法後の同時乳房再建術に関しても賛否両論が存在する。本シンポジウムでは、術前薬物療法後の外科治療、局所制御に関して現状ならびに知識・エビデンスを把握し、今後の展望を考えていきたい。

15.進行肝門部胆管癌の手術治療と周術期管理の最前線

術前画像診断の向上、手術手技の進歩、術後補助療法の開発により、肝門部胆管癌の手術治療成績は改善しつつあるが、胆汁漏、肝不全、門脈血栓、動脈血栓など重大な術後合併症も稀ではない。その原因として、術前胆道ドレナージを必要とし汚染胆汁である、高齢者が多い、広範囲の肝切除を要する、しばしば血管合併切除を必要とする、膵頭十二指腸切除を併施することもある、など、総じて過大侵襲となることが考えられる。本シンポジウムでは肝門部胆管癌の切除成績を示していただくとともに、術前術後管理法、そして合併症が発生した場合の早期発見法とその治療法について、エキスパートに供覧して頂き、合併症発生率および手術死亡率を低くするコツと技術について発表していただきたい。

16.三尖弁手術を極める【Video】

三尖弁疾患、特にその多くを占める三尖弁閉鎖不全症(TR)に対し外科治療を要する症例は増加してきているが、単純な弁輪拡大によるTRから右室拡大によるTetheringを伴う機能性TR、感染性心内膜炎によるものなどその発症機序は多岐にわたる。また先天性領域においてもEbstein’s anomalyなどの先天性TRに加え近年ではファロー四徴症術後遠隔期の肺動脈弁閉鎖不全に伴う二次性TRを呈する成人症例も増加しており、三尖弁に対する手術・治療戦略に習熟することは非常に重要である。
本シンポジウムでは後天性・先天性の様々な三尖弁疾患(単心室に伴うものは除く)に対する手術ビデオを供覧していただき、弁形成の手技・リングの選択や弁尖・弁下組織への介入などの技術的な工夫及び現状の外科治療戦略の適応・妥当性・方向性について議論していただきたい。

17.炎症性腸疾患に対する外科治療の成績と方向性

生物学的製剤や免疫調節剤の導入により炎症性腸疾患の内科的治療の成績は飛躍的に向上した。しかしUCでは難治・重症例の手術のタイミングは重要な問題であることは言うまでもない。また、初回手術の術式選択はいまだに議論の余地がある。患者の安全と術後QOL維持は重要な課題である。一方、CDにおいて、近年、内科的治療や吻合方法と再手術率の検討がなされているが、長期的な予後は不明である。CDに合併する発癌症例の有効なサーベイランス法については明らかにされていない。本シンポジウムではこれらの臨床的問題について各施設の成績ならびに取り組みを発表いただき、これからの炎症性腸疾患に対する外科治療の方向性を示せるような討論を期待している。

18.隣接臓器合併切除を要する胸部悪性腫瘍の治療戦略

画像診断法の発展により小さな腫瘍が多く発見されるようになり、呼吸器外科の興味の対象も、これら‘早期癌’に対する低侵襲手術と縮小手術に転じている。そのためか、わが国における局所進行癌に対する隣接臓器合併切除の施行頻度は減少しており、その傾向は2014年以後顕著となっている。一方、近年の薬物治療や放射線治療の進歩は目覚ましく、切除不能‘進行癌’例においても長期生存が得られるまでの効果を見せている。そのような現状において、これまでに隣接臓器合併切除を要した胸部悪性腫瘍例の治療成績を検証し、これら‘局所進行悪性腫瘍’に対する今後の治療戦略について、外科的技術の教育・継承・発展の観点も含めて論じていただきたい。

19.重症心不全の外科治療ーDT時代を迎えるにあたって

植込み型左室補助人工心臓(LVAD)によるDestination therapy (DT)は欧米で開始され15年が経過し、欧米での重症心不全治療の中で重要な役割を果たしている。一方本邦では移植待機患者への植込み型LVAD治療が始まり7年が経過し、J-MACS委員会の報告によると、その2年生存率は89%と欧米より優れた遠隔期成績が得られている。本シンポジウムでは長期LVAD治療に伴う感染、脳合併症、大動脈弁逆流等に対する対策、再入院を減らし、患者QOL社会復帰率を向上させるための工夫等について各施設の遠隔期成績を基に発表して頂きたい。そして生命予後のみならずQOLの高いDTを我が国で実現するための方策を今一度議論していただきたい。

パネルディスカッション

1.中間位・高位鎖肛に対する手術術式

中間位・高位鎖肛に対する根治術では、直腸肛門周辺の骨盤底筋群の働きを正しく理解し、合併症を回避しつつ、できるだけ正常な構造を再建することにより長期的に良好な排便機能を得ることが求められており、確実な瘻孔の処理と適切な貫通経路の作成が肝要である。近年では、本症に対して内視鏡外科手術が行われているが、術後合併症の発症を可能な限り回避し、長期的に良好な排便機能を得るためには、いかなる術式が最も適切であるかは未だ明らかでない。本パネルディスカッションでは、男女それぞれの中間位・高位鎖肛に対して、直視下手術と内視鏡外科手術の長所や短所を踏まえながら、術式の工夫も含め、経験とデータに基づいてご討論いただきたい。

2.成人先天性心疾患の外科治療と問題点【International】

日本では毎年約1万人の先天性心疾患をもった患児が生まれている。心臓外科手術・内科的治療の成績が向上したことに伴い、現在では先天性心疾患の小児の約90%が成人期に達するようになった。日本ではすでに40万人以上が成人患者となっており、その数は今後ますます増加していくと予想される。これらの患者の中には高度の肺高血圧を伴うもの、未修復の複雑心奇形、フォンタン循環不全や重症心不全患者なども多く含まれておりその治療戦略は複雑かつ多様である。これら成人先天性心疾患の外科治療と問題点、今後の可能性などについて討論していただきたい。

3.下部直腸癌に対する術前治療【International】

欧米ではいくつかの第III相臨床試験を経て進行下部直腸癌に対する標準治療として術前放射線化学療法が広く行われてきた。術前放射線化学療法は術後局所再発率を有意に軽減しうる治療であるが、生存率に対する上乗せ効果は明らかではない。近年では術前放射線療法と化学療法や免疫療法を組み合わせた術前治療レジメンにより生存率の向上を目指した臨床試験も行われ、術前治療により癌細胞の完全消失に至る症例ではWatch & Waitも検討されている。一方日本では従来術前放射線化学療法を行ってきた歴史は浅い。下部直腸癌、特に肛門管に近い病変に対する手術単独治療では十分なRadial marginを確保できない場合には局所再発に対する一定の懸念があることもうかがえる。本パネルディスカッションでは、国内外の下部直腸癌に対する臨床試験の現状を踏まえたうえで、術前治療を行うべき対象、適切な治療レジメンなどを含め、今後の直腸癌に対する術前治療の方向性について広く議論したい。

4.高齢者肺癌の治療【International】

わが国では肺癌が臓器別がん死亡者数の第一位を占めてから久しくなった。喫煙に加え、国民の高齢化のために患者数が増加している。早期の非小細胞肺癌に対する最も有効な治療法は、現時点では切除であり、近年高齢者の手術数は増加している。80歳以上の患者に対する手術治療も日常的となった今日、加齢に伴う心肺機能の問題だけでなく、様々な基礎疾患を有することが多い患者に対して、より安全確実・低侵襲な治療が求められている。術前の非腫瘍学的因子から見た術後合併症発症リスクや術後長期生命予後、新たな低侵襲手術や周術期管理法、高齢者に対する治療指針に関する討論を行っていただきたい。

5.上部消化管癌集学的治療における手術のタイミング【International】

集学的治療の進歩により当初手術適応ではなかった進行癌が切除可能となり、術後長期生存する症例を経験したり、あるいは、切除症例の長期予後が良好であるという報告も散見されるようになった。本パネルディスカッションでは、手術適応のない、あるいは、手術をしても予後不良であると考えられる上部消化管癌において、まず化学療法や化学放射線療法を行い奏功した場合の手術適応、手術のタイミング、選択すべき化学療法レジメン、そして手術術式などに関して各施設のご経験、方針を発表いただき、総合討論にて現時点でのある程度のコミュニティースタンダードを提示することを目的とする。計画された術前治療ではなく、あくまで本来は非手術的治療が標準治療となる病態に絞ってご提示いただきたい。

6.乳癌における腫瘍浸潤リンパ球の評価とその意義【International】

腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes: TIL)は癌組織内に認められる免疫細胞の集簇像で、癌に対する生体の免疫反応を反映しTILの多い腫瘍は免疫原性が高いと考えられている。TILの評価方法については2014年に国際ワーキンググループによるrecommendationが出されており、これまで特にtriple negative乳癌やHER2陽性乳癌においてTILの程度と予後や治療効果との関連性が報告されている。本パネルディスカッションでは、各施設でのTILと治療効果や予後等についての検討に基づき、臨床的に有用なTILの評価法について討論していただきたい。

7.局所進行膵癌に対する動脈合併切除術-長期成績の観点から見た臨床的意義の再考

新規化学療法を含む集学的治療により、膵癌に対する手術治療成績は向上している。Conversion Surgeryなど手術適応は拡がりつつあり、局所進行膵癌に対する動脈合併切除を積極的に行う施設も増えている。しかし、それらの長期予後は未だ十分に明らかではなく、動脈合併切除術の臨床的意義は不明確である。本バネルディスカッションでは、局所進行膵癌に対する動脈合併切除の長期成績、予後の観点から、手術適応の妥当性、長期生存のための条件、術前治療及び術後治療のあり方などを明示していただき、現時点でのコンセンサスおよび今後明らかとすべき臨床課題を討論していただきたい。

8.MELD scoreによる生体肝移植の術後解析

末期肝不全状態の指標としてChild-Pugh分類よりも客観的に定量化できるModel for End-Stage Liver Disease(MELD)scoreは、欧米では脳死肝移植待機患者の臓器配分優先基準として用いられている。一方、MELD score高値はレシピエントの術前状態の悪化を反映し、生体肝移植でも移植後早期死亡のリスク因子と考えられる。本パネルディスカッションでは、術前MELD scoreと生体肝移植の術後成績との関連について分析し、他の因子も含めた予後予測解析におけるMELD scoreの役割について討論していただきたい。

9.局所進行下部直腸癌に対するCRT vs 側方郭清

下部進行直腸癌に対する日本の標準治療はTME+側方郭清であるが、その妥当性を検証したJCOG0212試験の解釈をめぐってはさまざまな意見がある。一方、欧米では無作為比較試験の積み重ねにより(化学)放射線療法(CRT)や全身化学療法を術前に加える集学的治療が標準治療として確立されている。近年、本邦でも術前CRT、さらに術前全身化学療法を取り入れる施設が増加し、直腸癌の外科治療は多様性の時代へ突入している。そこで本パネルディスカッションでは、側方リンパ節に腫大を認める場合、認めない場合に分けて、どのような基準でどのような治療を選択するか、各施設の支持する治療法を提示、討議していただき、各治療法の成績、長所と短所、適用基準などについて議論を深めていただきたい。

10.災害医療における外科医の役割

南海トラフ地震や首都直下地震では地震に対する備えが病院や地域で求められている。大阪府北部地震では大都市災害の特徴が明らかになった。さらに東京オリンピック・パラリンピックを控え、爆傷や銃傷に対する備えも喫緊の課題となっている。業務継続計画(BCP)策定や多数の患者を受け入れるための教育・訓練が地域を巻き込んだ形で病院においても実施されている。外科医には、患者を診療する能力、メスを使う能力に加え、日頃からチーム医療を実践しているがゆえの支援者をまとめる能力などが期待される。災害時の外科医の役割、医療人としての役割についての取り組みとその成果、今後の展望などを示していただきたい。

11.直腸癌局所再発に対する治療戦略

直腸癌局所再発は外科治療による治癒が期待できる一方、骨盤内臓器や骨盤骨の合併切除を伴う手術の侵襲は大きい。最近は,重粒子線治療によって手術に匹敵する成績を得られることが報告されているが、重粒子線治療にも短期的、長期的に特有の有害事象が発生する場合があることもわかってきている。また,化学放射線療法や化学療法単独などの治療効果は不十分であることが多く、経過中には疼痛や瘻孔形成などにより患者のQOL低下を来す場合もある。本パネルディスカッションでは、外科治療における手技の工夫と長期成績および重粒子線治療、化学放射線療法、化学療法単独など非外科治療の有効性、早期、晩期の合併症などについて発表いただき、今後の治療の方向性について討論したい。

12.胃癌における周術期化学療法の最先端

これまで、Stage II/IIIの胃癌に対しては、ACTS-GC試験により1年間のS-1、CLASSIC試験により6か月のXELOXが術後補助化学療法のスタンダードとして確立されてきた。近年、Stage IIに対してはJCOG1104試験が、Stage IIIに対してはSTART-2試験が、また4型/大型3型に対してはJCOG0501試験の結果が次々と発表され、術前補助化学療法や免疫チェックポイント阻害薬を含めた周術期化学療法の開発が進められている。本パネルディスカッションでは、近年発表された試験結果について発表いただくとともに、開発中の試験や今後の有望な試験治療などについて紹介いただき、すでに確立された標準治療の問題点、Negativeとなった試験から得られた教訓、および今後の治療開発について討論していただきたい。

13.急性大動脈解離手術の慢性期合併症と予後【International】

急性大動脈解離の手術においては、エントリーの切除や閉鎖のために人工血管置換術やステントグラフト内挿術が行われるが、救命を第一として、広範囲にわたる置換術を避け、エントリー切除を断念することすらある。慢性期には、残存したエントリーやリエントリーから偽腔への血流が残存して再治療を要することも稀ではない。一方、急性大動脈解離に対する手術成績は向上しており、A型解離に対する弓部置換におけるオープンステントグラフト法や、complicatedなB型解離に対するステントグラフトの有用性が報告されている。急性大動脈解離に対する手術の長期成績を提示し、急性期手術自体の成績を保ちながら慢性期の予後も改善する方策について討論していただきたい。

14.肺癌に対する肺動脈・気管支形成【Video】

肺癌に対する肺動脈・気管支形成術は、片肺全摘術を避けることにより機能を温存することができるだけでなく、長期予後の改善にも寄与することが知られている。実施頻度は少ないものの、呼吸器外科医にとっては必須の技術である。特に、double sleeve や carinal resection を必要とする症例の手術難易度は高く、近年では自家肺移植の技術も応用されている。本パネルディスカッションでは、肺動脈・気管支形成の様々な術式をビデオで供覧していただき、そのtipsだけでなくpitfallsについても議論していただきたい。

15.局所進行甲状腺癌の外科治療【Video】

甲状腺の進行・再発癌治療においては、近年、分子標的薬(TKI)が華々しく登場したことから大きく様変わりすることも予想(期待)された。しかしながら、その適応は根治切除不能な甲状腺癌であり、とくに分化癌においては甲状腺全摘を前提とする放射性ヨウ素内用療法に不応である場合に限られる。また、TKI治療では創傷治癒遅延や瘻孔形成、大血管破綻などの重大な合併症も散見されることから、局所進行甲状腺癌に対する外科的根治切除の重要性が改めて注目されている。本パネルディスカッションでは、気管・喉頭、食道・下咽頭や頸部大血管、縦隔や咽頭後部などに浸潤、進展する甲状腺癌に対する高難度の手術ビデオを術前評価によるストラテジー構築とともに供覧していただき、TKI時代における外科手術の適応判断およびコツと技について討論していただきたい。

16.重症虚血肢外科治療の限界への挑戦

近年、血管内治療の適応は広がりつつあるが、下腿足部動脈病変において直近のヨーロッパ心臓病学会/血管外科学会ガイドラインでは自家静脈が使用できる場合、distal bypassを推奨している。しかし本邦では糖尿病・透析患者が多いため高度動脈硬化病変に対する手術手技、重度併存疾患を抱える患者に対する周術期管理、感染を併発した場合等虚血性創傷に対する適切な創傷管理等が必要となり血管外科医にとって難度の高いものである。さらに中長期では静脈グラフト閉塞、虚血症状再燃といった問題も経験する。本パネルディスカッションでは、distal bypassにおいて短期・中長期成績を改善する各施設の取り組みについて論じていただきたい。

17.上部消化管癌の周術期合併症に対する試み

上部消化管癌における治療の中心は外科的切除であり、根治性とともに安全性を担保した手術が求められている。全ての患者に合併症のない手術をすることが理想であるが、思わぬ合併症に頭を悩ますことも少なくない。ひとたび起きた合併症は、対応ひとつで致命的になることもあり、合併症の適切な診断と治療は、まさに外科医の技術力・総合力を表しているといえる。本パネルディスカッションでは、上部消化管手術後合併症の診断や治療法に対する様々な試みを提示いただき、明日の外科診療に役立つ討論をしていただきたい。

18.系統的肝切除をめぐる諸問題-術式の選択と長期予後の観点から

肝細胞癌(HCC)は門脈行性転移を来すことから、肝機能が許容される範囲内で系統的肝切除が推奨されている。しかし、系統的肝切除が長期予後に与える影響については長い間議論されているものの一定の見解はない。近年、C型肝炎に対する治療成績が向上し、新しい分子標的薬が次々に開発され、外科領域でも腹腔鏡下肝切除や肝移植が普及するなどHCCに対する肝切除を取り巻く環境が激変している。このような現状をふまえ、今あらためて術式の選択と長期予後の観点からHCCに対する系統的肝切除の意義について討論していただきたい。

ワークショップ

1.再生医療の外科学への応用

近年、iPS細胞や幹細胞などの細胞ソース、オルガノイド培養や3D培養などの発見、また、ゲノム編集技術等様々な再生医療関連基盤科学技術が発展している。また、同基盤技術を用いて、網膜再生、心筋再生、消化管再生、肝再生等のトランスレーショナルリサーチが行われており、既存の外科学に付加価値を与える可能性のある技術に進化しようとしている。本ワークショップでは、幹細胞等を用いた再生医療の基盤研究、臨床応用をはじめ、疾患iPS細胞を用いたiPS創薬なども含めた最先端の再生医療の研究についてご発表いただき、今後の外科学における再生医療の役割、将来展望に関して議論したいと考えている。

2.胃切除後の機能評価

胃切除後の機能温存によって、術後のQOLを保ったり、術後の体重減少や筋肉量を維持したりすることで、がん治療を円滑に行えるのではないかと注目が集まっている。一方、胃切除後の機能をどの様に評価するかは定型化された方法はない。本ワークショップでは、術後体重減少や栄養状態の変化などの単純な評価項目から、多くの評価を組み合わせたPGSASのような総合的評価システムを含めて、機能評価について、何が優れているか考察し、それらを用いた各術式についての評価や工夫についても紹介していただきたい。 

3.複雑病変に対する僧帽弁形成術のコツ【Video】

変性僧帽弁閉鎖不全症に対しては弁形成術が標準手術となっている。しかし、前尖逸脱、Barlow氏病を含む両弁尖逸脱、感染性心内膜炎、弁輪石灰化(MAC)を伴う僧帽弁逆流、リウマチ性僧帽弁逆流、先天性僧帽弁逆流、弁形成術後の逆流再発等は複雑病変とされ、これら病変に対する形成術は、経験や形成手技の熟練を必要とする。本ワークショップでは、複雑病変(特に余剰組織、組織欠損、感染組織、硬化組織)に対する手術手技をビデオで供覧し、その手技操作に加えて複雑病変の術前術中評価と手技計画、形成後の術中術後評価について議論したい。

4.ビッグデータを用いた臨床研究の成果と課題【International】

医療ビッグデータの基盤整備と研究利用が進みつつあり、近年飛躍的に進歩し、幅広い領域に影響を与えることが想定される。医療ビッグデータとしては、①診療報酬データ(DPC,NDBなど)、②疾患特異的患者登録データ(学会主導のNCDやJCVSDなど)、③政府統計、④その他として電子カルテやゲノム等の遺伝情報などがあげられるが、これらのデータの連携含め、データの効率的な収集、品質の管理、有効利用法に関しては議論の余地がある。本ワークショップでは、これまでの臨床研究の成果と問題点を提示していただき、今後の政策面、臨床面、研究面への活用について議論いただきたい。

5.大腸癌診療におけるprecision medicine

がん細胞の網羅的遺伝子解析を行い、発がんの原因となった遺伝子変異を個々に同定し、その遺伝子変異に効果があるように設計した分子標的薬を使用するプレシジョン・メディシンは、2015年のオバマ大統領の“Precision Medicine Initiative”の演説以来、世界的に脚光を浴びている。特に非小細胞肺がんの領域では、これがドライバーオンコジーンの異なる希少がんの集合体との認識のもとに急速に開発が進行している。一方、大腸癌でも標的となる遺伝子は徐々に明確になりつつあるが、遺伝子変異に合う治験薬開発の遅れ、プレシジョン検査に要する費用、医療制度基盤の整備の遅れなど、解決すべき問題が山積し、本治療概念の浸透度に比べて実臨床への導入までのロードマップが不透明である感も否めない。本ワークショップでは、大腸癌診療においてプレシジョン・メディシンに期待される役割と共に、上記の問題の解決に向けての取り組みとその成果、展望などを示していただきたい。

6.3D臓器モデル・シミュレーション・ナビゲーションの外科手術への応用

CTやMRIによって読み取られた体表および体内(内臓や血管、筋肉、骨といった臓器)の2次元データから、3次元モデルを構築したものを手術のシミュレーションやナビゲーションに用いる研究が様々な分野で行われている。3Dプリンターを利用した臓器モデルも構築されているが、実用化に向けた問題点も存在する。シミュレーションやナビゲーションの有用性を如何に評価するか?リアルタイムナビゲーションのためには何が必要か?本ワークショップにおいては、分野や臓器を問わず、研究のための研究ではなく、実用化に向けた現状と今後の展望についてご議論いただきたい。

7.ロボット支援手術の現況と展望

2018年度よりあらたに12術式(外科では9術式)においてロボット支援手術が保険診療として認められた。現在は、安全な普及を目指して各領域での取り組みが進んでいる。本ワークショップでは、本邦の外科領域のロボット支援手術の現況と問題点、さらに今後期待される展望について討論する。これまで実施してきた施設の工夫や成績のみならず、取り組みを始めた施設での問題点なども発表していただきたい。ロボット支援手術を安全に普及させるためのコツやピットフォール、さらには同じ低侵襲手術である腹腔鏡手術や胸腔鏡手術と比較してロボット支援手術の有用性はどこにあるのかを議論して、今後ロボット支援手術が発展するために鍵となるポイントを明らかにしたい。

8.呼吸器外科医によるトランスレーショナルリサーチ

肺癌の治療戦略、ことに薬物治療はここ数年で大きく変貌している。基礎医学研究の成果が創薬につながり、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤などをがんの特性によって使い分ける個別化治療が標準治療となった。外科領域においてもこれらが周術期治療に導入されつつある。また、医工連携によってロボット手術や画像ナビゲーションによる診断、手術支援が次々と導入されてきた。小型肺癌に対する縮小手術の適応決定には腫瘍の悪性度解析が応用されよう。このように肺癌外科のあらゆる局面でトランスレーショナルリサーチ(TR)の結果が臨床の基盤となって来ている。またこのような進歩は肺癌領域にかぎらず移植、気胸、感染症その他の良性疾患の領域でも実現されているであろう。本ワークショップにおいては広く呼吸器外科領域の進行中のTRと、その結果予想される将来像について述べていただきたい。

9.膵・膵島移植における残された課題

1型糖尿病の根治療法として、本邦でも膵臓移植、膵島移植が臨床応用されている。膵臓移植においては脳死ドナーの増加に伴い、年間30~40例が施行され、その成績も向上している。しかし、血栓症や後出血をはじめとする周術期合併症や膵臓単独移植の長期成績が不良であるなど、依然改善すべき課題も多い。また新たな免疫抑制プロトコールにより膵島移植の成績向上も得られているが、保険適用ではなく、広く実施されるに至っていない。膵臓移植、膵島移植それぞれの課題について示していただき、さらに脳死ドナーが増加する中、両移植への膵臓のAllocation、患者の適応などについて、その成績や侵襲性を含め議論していただきたい。

10.外科侵襲と予後

これまで術後の合併症や過剰な炎症反応は、たとえ根治切除後であっても微小もしくは浮遊癌細胞の生着を助長し、癌特異的な長期予後に影響を及ぼす可能性があることが示唆されてきた。近年手術アプローチの工夫が進み、内視鏡手術やロボット手術が導入される中で、外科侵襲の制御そのものが長期予後改善に寄与する可能性が期待されている。本ワークショップでは各領域で行われている臨床試験、及び各施設での治療成績について提示いただき、様々な視点から広く議論いただきたい。

11.腫瘍免疫のがん治療への応用

近年、がん局所において免疫応答が成立していることが周知となるとともに、がん細胞と宿主の免疫応答を制御する免疫チェックポイント分子が、がん免疫逃避機構を担う因子として同定され注目を浴びている。本邦では肺癌や胃癌にも抗PD-1抗体が保険承認され、その他のがん種でも広く免疫チェックポイント阻害薬を中心に据えた複合免疫療法の開発研究が国内外で数多く行われている。がん免疫は、もはやがん治療の考え方そのものを大きく変革したと言っても過言ではなかろう。本ワークショップでは,免疫微小環境など腫瘍免疫に関する知見やそれらを応用した治療効果、症例選択に有用なバイオマーカー研究など、様々な基礎的および臨床的観点から演題を公募したい。

12.複数診療科を必要とする拡大手術

局所進行癌に対する外科手術においては、肉眼的根治切除を達成するために、隣接臓器の合併切除・再建が必要となることがある。このような拡大手術は、単一診療科で遂行することは困難であり、心臓血管外科、呼吸器外科、消化器外科、婦人科、泌尿器科、整形外科、形成外科などの複数診療科で協力して手術を行うことが多い。拡大手術は、その侵襲も高く、また合併症も高頻度に認められることから、実施可能な施設も限られている。本ワークショップにおいては、複数診療科を必要とする拡大手術を実施するにあたり、各施設の工夫や治療成績、さらにはこれまで切除不能とされてきた病変に対する手術の可能性について、議論していただきたい。

13.肝切除におけるシミュレーション・ナビゲーションの応用【Video】

安全かつ精緻な肝切除を成功するためには、肝臓の局所解剖に精通する必要がある。具体的には門脈・肝動脈・肝静脈だけでなく、胆管の走行および腫瘍との位置関係に細心の注意を払わなければならない。また残肝機能を考慮した根治性と安全性を両立させた過不足のない肝切除も望まれる。しかし、肝臓の局所解剖は複雑でバリエーションに富んでいるため、1つの誤認が致命的な合併症を引き起こす危険もある。こうした危険を回避するために、3D-CT画像、バーチャルリアリテイーシステムおよび蛍光法をはじめとする最新のシミュレーション・ナビゲーションシステムの開発および応用に焦点を当て、ビデオを供覧しながら討論していただきたい。

14.低侵襲時代の虚血性心疾患の外科治療

胸腔鏡下弁膜症手術が保険償還されるなど、心臓外科領域においても本格的な低侵襲時代が到来している。冠血行再建においては、我が国ではOPCABが標準術式となっているが、さらなる低侵襲化を目指した肋間開胸MICS CABGが一部の施設で導入されている。また虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraclipや、心原性ショック症例に対するImpellaなど新たなデバイスが使用できるようになり、治療オプションが増えている。虚血性心疾患に対する低侵襲外科治療の現状と今後の展望について議論していただきたい。

15.下部直腸癌に対する新しい手技の工夫【Video】

根治性と機能温存を両立させた下部直腸癌手術は、時に非常に困難で、今後も手術手技の進歩が期待される領域である。近年、直腸癌手術は数多くのオプションが選択出来る時代になってきた。標準治療である開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術やロボット手術、経肛門的アプローチと新たなアプローチを導入している施設も増えつつあり、それぞれのアプローチにおいても様々な工夫がみられる。また、術前画像をもとにした血管構築やICG蛍光造影法などの術中ナビゲーションなど、新たな取り組みもみられる。本ワークショップでは、下部直腸癌に対する手術手技の工夫を手術ビデオで示していただくと共に、その工夫によって何が得られるのかを討論いただきたい。

16.外傷外科におけるoff-the-job-trainingの現状と課題

近年、重症外傷症例は減少傾向にあるが、緊急手術を実施しなければ救命できない症例は少なからず存在する。緊急事態に対応できる外傷外科医の教育は必須であり、各種off-the-job-training(off-JT)が開催されている。Off-JTには、アニマル・ラボで生体ブタを用いたシミュレーション実習を行うものや、献体されたご遺体を用いた手術手技研修、外傷外科医に求められるノンテクニカルスキル修得のための多職種を交えた講習などがある。今回のワークショップでは、それらの現状と課題について討論し、外傷外科医の養成における、効果的なOff-JTのあり方について議論していただきたい。

17.乳癌ゲノム医療の推進に向けた取り組み

遺伝性乳癌の存在に注目が集まる中、次世代シーケンス解析等を用いて原因となる遺伝子変異を明らかにすることにより、新たな治療戦略の構築につなげるなど、がんゲノム医療は大きく前進している。実際、がん遺伝子パネル検査を用いて網羅的にがん関連遺伝子変異を探索し、治療方法を選択するクリニカルシーケンスが実臨床に取り入れられはじめている。しかし、遺伝子変異が同定されても、標的を選別し、治験を経て最適治療につなげる過程は容易ではない。ここでは、乳癌ゲノム医療に関する問題点を明らかにし、それらを解決するための新たな取り組みや研究成果について討議し、乳癌ゲノム医療の推進に向けた今後の展望を明らかにする。

18.高齢者上部消化管癌に対する治療戦略

高齢者は生理的老化に加えて複数の併存疾患を有することが多く、臓器機能・予備能は低下している。治療が過大な侵襲となり合併症を併発するとADLやQOLが著しく損われ、中・長期予後も不良となる。上部消化管癌では治療の前後を通じて経口摂取が低下し、栄養状態は障害されるため、機能温存やADL・QOLの維持を十分に考慮した治療戦略が求められる。高齢者上部消化管癌に対する治療について、治療前のリスク評価方法、治療方法の適応と基準、ガイドライン通りの標準治療か縮小治療とするべきなのか、治療周術期の全身管理の注意点と工夫、退院後の療養体制などについてなど、データを基に様々な観点から論じていただきたい。

19.ガイドラインの功罪

診療ガイドラインとは、医療従事者が科学的根拠に基づき適切な診断や治療を国民に対して提供できるようにすることを目的として作成された指針である。我が国では2000年以降、その普及とともに標準的な診療情報の提供による診療水準の均てん化や治療成績の向上に大きな役割を果たしてきたが、診断・治療の進歩、超高齢化社会への突入、海外のガイドラインとの整合性など、急激な変化や多様性にどう対応すべきか?科学的根拠をどこまで重視するのか?ガイドライン自体のその質の保証をどうするのか?などまだまだ課題は多い。本ワークショップではガイドラインの総論的および各論的(領域別)現状と問題点について言及し、その功罪および今後の展望について述べていただきたい。

20.人工知能がもたらす外科の将来像

近年、医療分野での人工知能(Artificial intelligence; AI)技術が注目されており、将来実臨床への応用が期待されている。画像情報を認識して定型化された縫合手技を行う手術ロボットの開発が報告される一方で外科手術へのAIの応用は現状では非常に困難であると考えられている。本ワークショップにおいては、AI支援下医療(術前・術中診断、外科治療)の「開発の現状」さらには「将来展望」について外科の各領域から広く演題を募集する。さらに今後のAI支援下医療の「夢」をも語っていただきたい。

21.小児外科領域における真の低侵襲手術とは?【Video】

内視鏡手術の技術及びデバイスの進歩により、小児外科疾患にも低侵襲手術の代表として内視鏡手術の適応は拡大してきている。一方、小児外科疾患は、全体的に集学的治療の進歩により生命的予後は顕著に改善してきていることから、現在は長期的な予後とQOLを重視した低侵襲手術が望まれているが、内視鏡手術が全ての小児外科疾患において低侵襲手術であるとはいえない現状がある。このような背景の中で、各小児外科疾患におけるオープン手術と内視鏡手術のメリット・デメリットについてご発表いただき、小児外科領域における真の低侵襲手術について今後の方向性を討論していただきたい。

22.外科治療における多職種介入栄養管理―NSTが目指すアウトカム

中心静脈栄養法の発展・普及とともに、栄養管理を専門とするメディカルスタッフが各施設で求められるようになり、1970年代初頭、アメリカでNutrition Support Team(NST)が誕生したとされる。侵襲を受けた生体における代謝変化を理解して、状況に合わせた的確な輸液・栄養管理を実践するNSTの必要性が認識されるようになって久しいが、近年、再び NSTによる栄養介入が注目されるようになった。積極的な栄養介入を行うことで、創傷治癒の改善、感染性合併症予防、化学療法の有害事象軽減、さらには予後改善の報告がみられるようになったためである。そこで本ワークショップでは、多職種介入栄養管理によって得られるアウトカムについて今後の展望を踏まえて議論いただくとともに、代謝栄養学のエビデンスに基づいた栄養療法ガイドラインの基盤構築につながることを期待したい。

23.進行再発甲状腺癌に対する分子標的治療の現状と展望

分子標的薬が進行再発甲状腺癌に対して臨床導入されてから数年が経過し、実臨床における使用経験が蓄積されてきている。しかし、各施設における経験症例数は限られており、未だ、切除不能の定義、RAI不応性の判定を含めた導入のタイミング、用量減量・休薬を含めた副作用マネージメント、薬剤の切換方法、放射線外照射既治療例・高齢症例に対する適応などについては、統一された見解は示されていない。また、未分化癌に対しては、手術を優先すべきなのかについても、方針は統一されていない。このワークショップにおいて施設における使用経験、臨床試験等の結果などを報告し、今後の展望などを示していただきたい。

24.呼吸器外科における周術期管理と術後合併症への対策

呼吸器外科の周術期の死亡率は2000年代まで著しい改善がみられたが、2010年代に入り横ばいもしくはやや悪くなっている。この一因は対象患者の高齢化と、複数の併存疾患を有する患者に対する手術の増加が考えられる。これまでは周術期管理、合併症対策と言えば特定の疾患をターゲットに、それに対する術前管理方法と術後対応方法の検討を重ねてきた。それはそれで有効であったわけであるが、我が国の急速な高齢化に対応するには個別疾患ごとに対応策を立てるという従前の方法論だけでは不十分であるかもしれない。肺がんという加齢とともに指数関数的に増加する患者を対象とする呼吸器外科としては高齢で、かつ複数の併存疾患を抱える患者を総体としてとらえた対策が必要と思われる。本ワークショップでは上記の観点から周術期管理と術後合併症への対策を紹介していただき、議論する場になればと考える。

25.プレシジョン・メディシンの外科学への応用

がん研究は変遷期を迎えている。2015年1月オバマ大統領によって今後の目標として提唱された「プレシジョン・メディシン」は、次世代シークエンサーなどの技術革新によりがんに対するゲノムレベルでの理解を深め、がん細胞を遺伝子レベルで分析し、個人に対する適切な管理(予防から治療まで)を選択するための取り組みである。わが国ではこの一環として厚生労働省が2018年2月に『ゲノム医療中核病院』を指定し、がん診療におけるゲノムデータの利活用をする国家レベルの枠組みを構築した。一方、ゲノム解析技術の進歩は著しく、近い将来、標準化して安価で汎用化される社会の実現が予想されるが、担がん患者と最も身近な立場にある外科医としては、如何なる臨床的局面でどのように活用するか?アカデミアとして考え得る新たな展開は?など、この分野をリードする必要がある。本ワークショップにおいては、こうしたプレシジョン・メディシンを外科学として、どのように捉え応用していくべきなのか?現在の取り組み、成果および今後の展望についてご議論をいただきたい。

26.肝胆膵領域における腹腔鏡手術の困難例とは?

肝胆膵領域の高難度腹腔鏡下手術(肝臓切除、膵臓切除、胆道拡張症に対する分流術など)が保険収載され、未だ導入時期ではありながらも諸外国と同様に施行症例数が着実に増加してきている。腹腔鏡の拡大視効果は、より繊細な手術操作を求められる肝胆膵外科手術に効力を発揮し、既にその有用性を示す報告が数多く認められる。しかし、症例間の手術難度の格差は大きく、術前・術中における腹腔鏡手術困難例の適切な見極めは、安全面と根治性を担保する上で大変重要である。本ワークショップでは、各施設において定型化された腹腔鏡下手術手技を紹介していただき、その手技における困難例とその対処法を提示いただきたい。それらを題材とした討論を通じて困難例に対する見識を深めていきたい。

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